開湯千年の湯の町が始めたコメ再生運動
ニッポンの「食」
2010年6月28日
日本の農山村を数年にわたって取材してきた経済学者の金子勝さんが、その報告書ともいうべき『食から立て直す旅』(岩波書店)でこう言い切っている。
「あと10年もすれば、日本の農山村は地滑りを起こすように崩壊していくことだろう」と。
その理由は大きく二つ。ひとつは農業の担い手の半分以上がすでに 65歳以上になって久しいこと。
もうひとつは、財政赤字を背景にした地方切り捨ての政策の加速化。
まさか、と思う人も多いかもしれないが、実際に現場を歩けば、果たして10年さえも持ちこたえられるかと思われるほどの農山村の衰退ぶり。
それほどに日本の食を支える現場は深刻なのである。
そして、都市の華やかな食品売場や外食産業の林立に慣れた人々には信じがたいことかもしれないが、日本の食料生産力は急速に崩壊していくと思われる。
高齢者に支えられている中山間地の米作り
それは日本人の主食である米にも及ぶ。私が歩く東北の農家からは「もうこれ以上、米を作り続けることは出来なくなった!」の、あきらめと悲鳴の声がひんぱんにきこえてくる。
すでにこの10数年で40%も下落し、1俵(60kg)1万2000円にまで落ち込んだ生産者米価。
加えて大規模農家だけに政策支援の対象をしぼり、70%の中小農家を切り捨てた日本農政。
この10年間で60万戸に及ぶ農家が耕作をあきらめ離農し、耕作放棄地は10年で2.4倍の38 万haにまで拡大した。ちなみに38万haとは190万tの米が収穫できる広さである。
190万tとは日本人、3160万人が1年間に消費する米の量である。
こうした離農する人々と耕作放棄地はこれからますます加速化して拡大していくこと必至であるが、この流れをくい止める道はあるのだろうか。