秋植えの野菜の種を探しておりましたら、下記の記事が目に留まりました。
この盆休みにじっくりと考えたく思っています。
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固定種とは
固定種というのは、「固定された形質が親から子へ受け継がれる種」のことで、種苗業界の用語です。
種苗業界では、複数の親から異なる形質を受け継いで、第一代目の子だけがその中で優性の均一形質を現す「交配種=F1」に対して使われ、親が単一であるために、単に「単種」と言われることもあります。
F1誕生以前の植物種子は、すべて固定種として育成されてきました。
そのため、すべての在来種の種子は固定種であると言ってもいいわけですが、たとえ伝統野菜とか地方野菜と言われる分野の野菜でも、形質が一定していない(固定されていない)野菜は、単なる「雑種」で、固定種と呼ばれることはなく、プロの種屋の販売対象ではありませんでした。
種屋にとって、F1が生まれる以前は、本物の固定種だけが販売価値がある種子だったのです。
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現在、種苗店や園芸店、ホームセンターなどで販売されている野菜のタネは、そのほとんどがF1=first filial generation=です。F1とは、一代雑種(種苗業界用語では一代交配種)の略で、文字通り一代限りの雑種(英語ではハイブリッド=hybrid)です。
遺伝的に遠縁の系統をかけあわせて作られた雑種は、もとの両親より生育が早くなったり、大柄になったり、収量が多くなったりすることがあり、この現象を「雑種強勢(ヘテロシス=heterosis)」と言います。
「雑種強勢」が働くよう、雑種にされて販売されているタネがF1で、F1種の登場により、日本の野菜生産量は増加しました。
雑種化する前の昔のタネ(これが固定種です。F1の両親が、遠縁の二系統なのに対し、両親とも同じ単一の系統なので、タネ屋の業界では「単種」と言うこともあります)からF1への変化は、生産性の向上という点で画期的な出来事でした。
固定種時代の「日本法蓮草」は、九月彼岸頃にトゲのある三角形のタネを水に浸けてまいてからおよそ三ヶ月かかって育ち、お正月頃に食べる冬野菜でした。
根が赤くて甘く、生食できるほどアクがなくておいしいのですが、葉は薄く切れ葉でボリュームがなく、寒くなると地面に張り付くように広がって、収穫に手間のかかる野菜でした。
それに比べると東洋種と西洋種の雑種であるF1ホウレンソウは、春や夏も周年まけて、わずか一ヶ月で出荷できる大きさに育ち、丸い葉は厚くて大きく、立性で収穫しやすい上、丸粒に改良されたタネは機械でまくことができるなど、農業の効率化に貢献しました。
このようなF1ホウレンソウの登場により、私たちは一年中ホウレンソウを食べられるようになったのです。
ただ、成育期間が短くなった結果、細胞の密度が粗くなり、大味になって、「紙を食ってるようだ」と言われるほどまずくなったのも事実です。
おまけに、葉緑体による光合成の期間も短いので、葉に含まれるビタミンCなどの栄養価も、固定種の五分の一から十分の一に減ってしまいました。 周年栽培や収量の増加、そして省力化は、営利栽培にとって、何より大切な要素です。しかし、味の低下や栄養素の減少は、家庭菜園にとっては大きなマイナスです。
自分や家族の健康のための家庭菜園なら、ホウレンソウは栽培容易な秋から冬に育て、旬の冬においしく食べる固定種の「日本」や「豊葉」や「次郎丸」のほうが向いています。
ベト病が多発して、ホウレンソウを無農薬では作りにくい夏の家庭菜園向きの葉物なら、病気も虫もつかず、栄養豊富な「空心菜」や「ツルムラサキ」、「モロヘイヤ」、「ヒユナ」などがあるのですから。