【先生に聞く 腸イイ話 乳酸菌と免疫力】
(1)鍵を握るNK細胞の働き
2012.1.10 07:25
NK(ナチュラルキラー)細胞が、体でどんな働きをしているかご存じですか? 白血球のリンパ球の一種で、全身をくまなくパトロールし、ウイルスが感染した細胞や出来たてのがん細胞の芽を次々にやっつけてくれています。
NK細胞は体の免疫力を知るバロメーターでもあります。免疫力は20歳をピークにだんだん低下してしまいます。年をとることでNK細胞の働き(NK活性)が弱くなってくるためで、年をとるごとにがんの人が増えるのも、NK活性の低下が関係しています。
私たちの体の中では、毎日約1兆個の細胞が誕生しますが、その中には数千個のがん細胞の芽も含まれます。若くてNK活性が高ければ、たとえ毎日数千個のがん細胞の芽ができてもすぐ退治できますが、年をとってNK活性が低くなると、がん細胞の芽を退治できなくなります。がん細胞が増えてきてがん腫瘍となり、体に悪さをするようになるのです。
ただ、年をとった人全員ががんになるわけではありません。NK活性は、ストレスを減らし、規則正しい生活をすることで、高く保てることが分かっています。
食べ物の中にもNK活性を高めてくれるものがあります。私たちが行った実験で、ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株400億個を含む乳酸菌飲料を1日1回、3週間飲んでもらったところ、飲む前に比べNK活性が有意に上昇しました。
腸には免疫細胞の7割が集まっており、乳酸菌飲料の摂取は腸内細菌のバランスを整え、NK活性を高めたのです。
乳酸菌飲料を毎日飲むと体の調子が良いのは、NK細胞が活躍しやすくなるからなんですね。(順天堂大学医学部免疫学 特任教授 奥村康)
=隔週で掲載します