危ない食品 見分け方と「発想の転換」
微小粒子状物質のPM2.5が中国から飛んできて、富士山上空では高濃度の水銀が検出されるこの時代。さまざまな有害物質が、鵜の目鷹の目で、私たちの「健康」を狙う。そうなると当然、食の安全も気になる。
だが、「危険なものを買わない」という自衛手段だけでは、どうしても無理が出てくる。
『健康長寿をめざして 今こそ日本型食事の復権(仮)』をこの6月に出版する御年87歳の増尾清氏(元東京都消費者センター試験研究室長)は、こう語る。「いまは、もう、“いかに安全なものを選ぶか”という視点だけでは無理なんです。
“さまざまな方法と頭を駆使して、いかに安全を確保するか”というグローバルな視点が大事です」
もちろん、安全な食品を提供しようと日々努力している企業、生産者も少なくない。しかし、「無添加」や「無農薬」という言葉を疑ってかかる心構えさえ、必要になってくる。
残念ながらこのご時世、食品については、性善説だけでは語れないのだ。
例えば、あなたがスーパーに行く。野菜コーナーには色とりどりの野菜、果物が並ぶ。食肉コーナーには牛肉、豚肉、鶏肉のいろいろな部位が陳列され、鮮魚コーナーには旬の魚介類が。あなたは、パッケージや袋を裏返し、原産地、生産地、調理方法を調べていくが、食は毎日のこと。
ストレスもたまるし、安全を謳(うた)う食品は値が張ることが多く、財布にも響く。
年金暮らしの高齢者や、育ち盛りの子どもを抱えている家庭にとっては、なおさらだ。
そこで、増尾氏は、発想の大転換を提言する。「当然ながら大量生産の食品には、それなりの食品添加物が含まれている。『買わない』ことで有害物質を完全に防ごうと思わないことです。買っちゃった場合は、有害物質を除去、いわゆる『毒抜き』をすればいい。食べちゃう場合もあるから、『毒消し』で体内に入った有害物質を追い出したり、無害化したりする。
有害物質を食品選びで10%、毒抜きで30%、毒消しで40%減らす。これが賢い方法です」。
まず日常のあふれた食品から、「どう選ぶのか」について説明を始めよう。
ここでふるい落とせるのは、食品添加物だ。食品の加工、保存のために、製造の過程で添加されたもので、色や食感をよくするという目的もある。現在、食品に使用できる添加物は、保存料や着色料、酸化防止剤など約1530種類ある。
このすべてが有害物質ではないが、本来は不要なもので、食べずにすむならば食べないほうが賢明な物質だ。
注意する点は、記載がない食品だからといって、避けたい食品添加物が入っていないとは限らないことだ。増尾氏は言う。
「例えば、一括名表示できる添加物(同じ目的の食品添加物が複数用いられている場合で、軟化剤や乳化剤など14種類ある)や増粘多糖類は、一つひとつの食品添加物を書かなくてもいいんです。
また、ハムやかまぼこなどの加工品では、原材料の段階で用いられている食品添加物(持ち込み添加物)も明記されない。
かまぼこに用いる白身魚にはリン酸塩を混ぜることが多いのですが、製品となった商品のラベルには、リン酸塩とは書かれていないのです」
繰り返すが、パッケージに表示されるのは、食品添加物だけ。
当然ながら、農作物に付いた残留農薬や魚に含まれる環境ホルモン(環境汚染物質)、水銀や鉛といった貴金属も明記されていない。
※週刊朝日 2013年5月17日号