農林水産物・食品の輸出、5000億円突破へ
2014/2/8 1:30
2013年の農林水産物・食品の輸出額が3年ぶりに増加に転じ、5000億円台に乗せることが確実になった。
東日本大震災に伴う原発事故の風評被害で輸出は一時落ち込んだが、世界的な和食ブームや円安を追い風に前年比2割増のペースで回復。
過去最高だった1984年の5328億円を超える可能性もでてきた。
農林水産省は来週に13年の輸出実績を発表する。1〜11月までの輸出額は前年同期比22.5%増の4937億円。
5000億円台を回復するのは5年ぶりになる。
輸出全体の6割弱を占める農産物は11月までで16.9%増えた。コメは16億円と規模は小さいが、主食用は4割増のペース。
卸大手の木徳神糧は今春をメドにベトナムのホーチミン駐在所を支店に格上げする。アジアの富裕層を中心に「日本のコメの潜在需要は大きい」(同社)と見ているためだ。
数量ベースで増加が目立ったのは果物。リンゴは11月までで前年に比べ2.4倍。柿は7割、ナシは2割弱それぞれ増えた。
商機を逃さないよう青森県など産地の知事もアジア各国のスーパーマーケットに直接乗り込んでPRに動いている。
環太平洋経済連携協定(TPP)交渉がまとまれば、海外農産品の輸入が増える。生き残りには、生産性を高め輸出を拡大する取り組みが不可欠。
人口減で先細る国内需要と比べ、外需はアジアを中心に開拓の余地が大きい。
課題も多い。政府は成長戦略の一環として、20年までに農林水産物・食品の輸出額を1兆円に倍増する目標を掲げる。
農産物の品質管理を手がける日本GAP協会(東京・千代田)の武田泰明専務理事は「相手国の基準に合わせて畑を変えるなどの配慮が日本の農家にはまだ足りない」と指摘する。
政府の支援策も重要になってくる。輸出金額の増加は原発事故の影響が薄れつつあることを示すが、円安で海外での販売額が円換算でかさ上げされた面もある。
現に、昨年12月時点では41の国・地域で輸入規制の強化が続いている。
病害虫の侵入を防ぐ防疫基準の緩和も隠れた焦点だ。防疫を理由に、米国、オーストラリア、ニュージーランドは日本のサクランボ、ブドウ、キュウリなどの輸出が困難な状況だ。
政府が輸入規制や基準の緩和を働きかけ、輸出環境を整える必要がありそうだ。