麹を使いこなした先人の知恵

麹を使いこなした先人の知恵

塩麹
米麹に塩と水で仕込んだ「塩麹」も人気です。

麹は、中国で「カビ」を表す字。日本では、「加牟多知(かむたち)」から「かびたち」、そして「こうぢ」と呼ぶようになりました。

「糀」は国字で、中国が麦にカビを生やしたたのに対し、日本では主に米にカビを生やしたので「糀」としたという説があります。

発酵食品の起源は、そもそもは原料を加熱などして放置して自然界に存在する菌が発酵させたものです。

しかし日本の清酒醸造業では、蒸した米に麹菌をふりかけてコウジカビのみを純粋に培養して種麹を作り、早期から確実に好みに応じたコウジカビを繁殖させられるようになったとか。

酒造業界では、種麹を「もやし」と呼びますが、すでに奈良時代にはその製法が確立されていたと考えられています。

発酵食品のミクロの世界ではまだまだ人には計り知れない働きがあるようですが、昔の人は経験をもとに「麹」を駆使して、おいしい食べ物を作り、保存や健康にも役立ててきたのですね

家庭では雑菌に注意

近年では、この麹菌の機能性に着目し、紅麹菌を活用した食品や、紫黒米や黒豆などといった地域特産品の穀類や豆類などを原料に麹菌を増殖させて栄養価やポリフェノールの含有量が高い食品を開発するなどの動きが見られます

私も、毎年麹で味噌は仕込んでいますし、「塩麹」を作って漬け物を作ったり、調味料のように使っています。

麹菌が作り出す「風味」や「甘み」は独特です。一口に「甘味」と言っても、その甘味は砂糖とは異なります。お肉や魚を塩麹に漬けて焼いても、ただ塩味がつくだけでなく、まろやかな旨味があり、素材の持ち味も引き立つように思います。

味噌作りなどを通じて、麹は強いという印象はありますが、やはり各家庭の環境条件や、衛生状態は異なります。塩麹だけに限りませんが、発酵食品などの家庭で保存食品を仕込んだり、利用する際には、雑菌がつかないように、容器や器具、手などを消毒するなど、心がけましょう。

参考/
・日本食品標準成分表2010 食品成分データベースより(独立行政法人 科学技術振興機構)
・アフラトキシン非生産性の解明(キッコーマン)
・アフラトキシン(静岡市)
・麹菌ゲノム解析と食品利用への期待(独立行政法人 農研機構 食品総合研究所)
・「麹のレシピ」(池田書店)
・江戸時代「食生活事典」(雄山閣)
・食の文化を知る事典(東京堂出版)
・食と日本人の知恵(岩波現代文庫)
・独立行政法人 酒類総合研究所
・菊正宗酒造株式会社
その他