具材のうまみを活かして、アレンジ自在の出汁は“和食の要”!
第1回は、和食の基本「出汁」です。
和食の出汁は、実は意外と簡単!
料理にひと手間かけるとおいしくなるのは何となくわかっていても、どう工夫していいのかわからない、という人も多いのでは。例えば、出汁は和食の要と言われますが、どんな利点があるのでしょうか。
「和食の出汁は、かつお節や昆布、煮干しなどからとるのが一般的で、これらにはうまみ成分があり、色は薄くても味に深みがあります。煮ものを水で煮るより出汁で煮たほうが数倍おいしく感じられるのは、出汁のおかげ。
素材のおいしさをグッと引き立ててくれる“縁の下の力持ち”のような役割をしてくれます。だから出汁はとっても大切。また、素材のうまみが際立つので、調味料が少なくて済むのも特長です」。
なるほど。いいことづくめですね。でも、出汁をちゃんと作るのは面倒なイメージで……。
「いえいえ、みなさん、きっと誤解しています。
和風出汁は、実はいちばん簡単!中華の鶏がらスープや洋食のブイヨンは煮込み時間がかかりますが、和風出汁の食材は短時間でうまみを引き出せるのです。コツをつかめば、あとは慣れ。まずは基本の合わせ出汁から作ってみましょう!」。
“合わせ出汁”をおいしく作るコツ
和食で最も基本的な出汁は、昆布とかつお節で作る“合わせ出汁”ですね。では、作り方のポイントを教えてください。
「まず分量ですが、水1リットルに対し、昆布15g、出汁用かつお節20gが基本です 。
作り方は、
【1】 鍋に水を入れ、昆布を30分以上浸しておく。
【2】弱火にかける→気泡が出始めたら火を弱め(約60℃)、その状態を15分キープする。
【3】 味見して昆布の味が出たことを確認し、昆布を取り出す。
【4】少し火を強め、フツフツ手前(約80℃)で火を止めて、かつお節を加える。
【5】かき混ぜず2分ほどおき、その間アクが出たらすくい取る。
【6】かつおの味が出たことを確認し、ざるの上にさらしを広げ、ゆっくりとこす(しぼらない)。
以上でできあがりです。これが一番だしと言われるもので、お吸い物などに使います。
昆布とかつお節を入れるときの湯温が異なるのは、それぞれ味を出す適温が異なるから。
かつお節のほうがやや高めですが、いずれにしても沸騰させてはいけません。また、作り方【3】で昆布の味が薄く感じられたときは、もう少し煮るとよいでしょう」。
出汁をおいしくとるには火加減が大事なのですね。
「沸騰させたり煮過ぎたりすると、えぐ味や濁りが出るので注意して。日持ちしないので、できればその都度出汁をとることをおすすめしますが、多く作って余ってしまった場合などは、冷ましたあと製氷機に入れて凍らせておくと便利です。離乳食などのちょこっと使いに重宝しますよ」。
かつお節と昆布の割合で家庭の味を作る
だし自体の味の工夫はできますか?
「昆布とかつお節の割合を変えるだけで味に変化が出ます。先にお教えした基本の分量は和食全般に使える一般的な割合ですので、作り方に慣れたら割合を変えて楽しんでみてはいかがでしょうか。
昆布を多めにすると関西風に、かつお節を多めにすると関東風になります。いろいろ作ってみると、味の違いがわかって楽しみ方も膨らみます。季節や素材に合わせて出汁をアレンジできたら、もう料理人の域ですね(笑)」。
残った昆布やかつお節がもったいないのですが……。
「さらしに残っている分は、別の容器にギュッとしぼり、汁は煮ものなどに使いましょう。昆布はきざんで料理に加えたり、かつお節は二番だしや佃煮、ゴーヤチャンプルーに加えたりすると無駄なく使えます」。
きれいな出汁がとれたら、まずお吸い物を
一番だしのおすすめ料理を教えてください。
「ぜひお吸い物を作ってみてください。具はつみれやはまぐりでもいいですし、きのこ類やお麩など手軽な具材でも十分、出汁のおいしさがわかります。
うまみがしっかり出ているから、味つけはシンプルに。酒、薄口しょうゆ、塩少々で味が決まります」。
出汁があれば、料理にいろいろ応用できますね。
「和風出汁は、野菜、肉、魚全般に合いますし、その味を引き立ててくれます。煮ものや和えもの、めんつゆなど、わが家流にできたら素敵ですよね。
冬場なら、お鍋のベースに出汁を使うだけで、具材のうまみとの相乗効果でおいしさアップ! ぜひいろいろな料理に活用してください」。