100円朝食学生に活力 立命館大食堂で人気
親要望「生活乱れ 社会で失敗」
100円朝食でにぎわう立命館大の学生食堂(草津市のびわこ・くさつキャンパスで)
大学生が生活リズムを整えるきっかけに、との狙いで、格安の朝ごはんを学食で提供する大学が増えている。
経済的な支援や食育といった目的に加え、「生活リズムが乱れていては卒業後、まともな社会人生活を送れない。大学で朝食を提供してもらえないか」という保護者からの要望が元になっているケースもある。
立命館大は昨年12月、おかず3品とごはん、みそ汁がついた「100円朝食」を滋賀と京都のキャンパスで始めた。
以前は260円で提供していたが、「ワンコイン」と分かりやすくすることで、利用増を狙う試み。同10〜11月のうちの2週間、前倒しの試験導入したところ、それまでの平均2・3倍となる300人(1日あたり)が利用し、全面導入を決めた。
取り組み開始の大きな要因は保護者から示された危機感だった。同大学が2012年度に学生に行ったアンケートで、約4割の学生が朝食抜きが当たり前、という結果が出た。
この結果に保護者は驚き、保護者らでつくる父母教育後援会が、差額(1食あたり160円)を補助する形での朝食提供を大学に求めた。
今や大卒者の約3割が安定した職業に就けず、就職しても3人に1人が3年以内にやめてしまう時代だ。
同大学の約半数の学生は親元を離れての一人暮らしで、保護者の間では「大学時代に乱れた生活スタイルが身に着き、その気分のまま社会に出て失敗している若者が多いようだ。自分の子は大丈夫か」と心配する声が根強いという。
大学によると、昨年12月以降のワンコイン朝食の利用は1日あたり300〜400人で推移している。草津市のびわこ・くさつキャンパスで朝食をとっていた4年の奥野彰文さんは「面倒で朝食を食べていなかった。
でも100円なら安いと思って朝食を食べ始めたら、体調も良くなり、昼間の集中力も増すようになった」と話す。
格安の朝食提供は他大学でも先行例がある。京都橘大(京都市)は2008年春から、ごはん、みそ汁、魚中心の主菜、野菜中心の副菜とサラダがセットになった「100円朝食」を開始。
京都産業大(同)でも、12年秋から、ごはん、みそ汁、おかず2品の「100円朝食」を導入している。ほかに、慶応大・日吉キャンパス(横浜市)では、07年以降、前後半2回の学期の初め頃だけ朝食を100円で提供するサービスを行っている。
滋賀医科大の宮崎総一郎特任教授(睡眠学)は「朝起きてごはんを食べると、体内時計がリセットされ、その日の夜の睡眠の質が良くなるとされている。そうなれば翌日の昼間の活動にもよい効果が出るだろう。
大学側がどこまで関与するかはともかく、学生も、そして社会人もきちんと朝食をとるべきだ」と話している。(高山智仁)
(2014年2月26日 読売新聞)