専門家が捨てられる時代がやってきた

専門家が捨てられる時代がやってきた
茂木 健一郎:世界一の発想法
PRESIDENT 2014年2月17日号

著者
茂木 健一郎 

「おまえがいないと宴会が盛り上がらない」と言われるようになればしめたもの。

そもそも、一つの仕事を成し遂げるために必要な能力は、多様化している。会社の業務がうまくいくためには、それらの要素の組み合わせを、迅速かつ柔軟に設計、実装していく人材が不可欠である。

これからの会社にどうしても必要な人材とは、「点」にこだわる人ではなく、「点」と「点」をつないでいくような人であろう。逆に言えば、そのようなイメージで自分の能力を高め、人脈を築いていけば、いつまでも会社にとって必要な人材でいられる。

私の周辺でも、「あいつは欠かせないな」という人物が何人かいる。そのような人物は、ある特定の問題の専門家であるというよりは、「場」をつくることができる人物だというケースが多い。

単純なようだが、宴会のときに注文などを仕切ることができる。話題を絶やさずに、その場にいる人を楽しませることができる。その人がいると、何とはなしに安心で、楽しい。姿が見えないと、あいつはいないのかと探してしまう。そういう人は、必要な人だ。

人と人との関係を、潤滑油として触媒することができる。そのような人は、結局、会社に求められる。

「あいつは、会社にとって何だか必要だよな」「リストラされるとしても、あいつは最後だな」。そういう人は、実は専門家ではないことが多い。逆に言えば、今の時代、専門家は代替可能である。

専門知識を身につけたり、資格をとるのもいいが、肝心な、会社内外の人と人との結びつきの中で、自分が活きているか。会社にとってかけがえのない人は、家族の一員に似ている。