体験就業 主婦は「新戦力」

体験就業 主婦は「新戦力」

2014年05月27日 08時05分

ブランク解消 再就職に道

 企業で一定期間、実習生として働く「インターンシップ」(体験就業)が再就職を希望する主婦らに人気だ。

 「ブランクが長くて心配」「子育てと両立できるか」など、不安を抱える女性は多いが、体験就業を通じて徐々に自信を取り戻し、再就職への意欲も高まるという。

自信取り戻す

サッカーをする子どもを持つママ向け雑誌「サカママ」の編集を担当する山本さん。「子育てしながら働くことにも理解がある職場です。体験就業できてよかった」と話す(東京都渋谷区の「ソル・メディア」で)

 「自分も役に立てるんだ」

 金沢市の主婦(38)は、同市内のシステム開発会社でインターンシップ実習生として昨夏から半年間働いた。3人の子どもは幼稚園や学童保育に預け、1日7時間、伝票整理などをした。

 働くのは結婚退職して以来約10年ぶり。自分は職場で通用するのかと不安でいっぱいだったが、同僚から「ありがとう」と声をかけられる度、自信を取り戻せたという。

 体験就業後、「正式に働いてみないか」と打診され、女性は快諾した。

 「来客スペースの整理など、業務外の仕事も自分からやってくれた。若手社員にはないまわりへの気遣いがある」と同社担当者。

 東京都大田区の山本初美さん(37)も出版社「ソル・メディア」(東京)での体験就業を経て、今年3月から同社の雑誌「サカママ」の編集者として働く。勤務時間は実習中と同じ週3日、1日7時間。フリーランスで請け負っている仕事や育児との兼ね合いから、パート社員を希望した。

 「会社勤めは5年ぶりで緊張したが、実習中に職場の雰囲気や仕事内容をしっかり確認できたのがよかった」と山本さんは話す。

 2人が利用したのは、中小企業庁が昨春から実施するインターンシップ事業「中小企業新戦力発掘プロジェクト」。結婚や出産で離職した主婦を「新戦力」と位置づけ、人材不足に悩む中小企業と結びつけようという試み

雇用が前提ではないが、雇用に至る例は多い。実習期間(今年度)は2週間〜3か月で、その間は国から実習生に「技能習得支援助成金」が日額最大7000円出る。昨年度は全国で約3000人が利用した。今年度も参加者を募集中だ。

 事業を受託している総合人材サービス会社「パソナ」(東京)中小企業庁プロジェクト事業部の東良子さんは、「主婦の再就職は厳しく、履歴書を送っても面接までいけないことも多い。

しかし、インターンシップなら人柄や働きぶりを直接、アピールできる。雇用に至らなくても自信がついて再就職への意欲が高まるほか、仕事と両立する生活のリズムもつかめる」と話す。

まず派遣社員として

 広島県では、2012年から毎年、主婦向けのインターンシップ事業を実施している。プログラムは計5日間。3日間で働く心構えなどを学び、2日間は地元企業で体験就業する。

 主婦が再就職を目指す場合、長いブランクが壁となる。人材サービス会社「ビースタイル」(東京)では、働くことに強い不安を持つ主婦らにはまず、派遣社員として働いてみることを薦めている。

「短期間の派遣を体験就業の場として利用してもらうアイデアです。いくつか経験することで、漠然とした不安は消えていく」と同社しゅふJOB総研所長の川上敬太郎さん。

 「主婦には、地域で磨いてきたコミュニケーション能力や複数の家事を要領よくこなす“段取り力”など、実は多くの武器がある。自信を持って再就職の道を探ってほしい」と話す。(板東玲子)

「中小企業新戦力発掘プロジェクト」参加の主な条件

・結婚、出産などで退職した人
・同一企業で1年以上働いた経験がある

問い合わせは、同プロジェクト事務局「日本財団」(03・6435・5217)へ。
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