お肉、マリネで軟らかく
高橋美帆撮影
かたまり肉の料理をする際、漬け汁に浸す「マリネ」の一手間を加えると、軟らかく仕上がる。料理家のワタナベマキさんに、マリネした鶏肉の煮込み料理を教わった。
ワタナベさんの提案は、漬け汁に、すり下ろしたリンゴを用いる方法だ。
「リンゴに含まれる酵素によって肉が軟らかくなります。リンゴと肉のうまみが混ざり合い、まろやかな味わいが増しますよ」。
イチジクや柿なども肉を軟らかくするが、リンゴは果物の味が強く出ず、素材を引き立たせるという。
鶏もも肉のアップルビネガー煮を紹介してもらった。
<リンゴは皮をむいてすり下ろし、鶏もも肉にもみ込む。塩小さじ1杯をふり、ラップをかけて冷蔵庫に一晩置く>
リンゴは鶏肉の上ですり下ろす。おろした時に出る果汁も余さず使うためだ。一晩置くと、リンゴはやや褐色になる。
<鍋に、薄切りにしたニンニクと、オリーブオイル大さじ1杯を入れ、弱めの中火にかける。香りが立ったら、漬け汁を軽く落とした鶏肉を入れ、表面に焼き目を付ける>
煮る前に焼くことで香ばしくなり、うまみを閉じこめる。漬け汁は取っておく。
<2ミリ厚さに切ったタマネギ、米酢、白ワイン、残しておいた漬け汁を加え、アクを除きながら、ひと煮立ちさせる。
蓋をして弱火にして12分煮る。塩少々で味を調え、粗びき黒コショウ少々とパセリをふる>
鶏肉はしっとりとしていて、箸で崩れるほど軟らかい。やさしい酸味が利いていて、煮汁もうまみをたっぷり含んでいる。
肉を豚や牛にする場合は煮込む時間を長くする。「鶏肉を骨付きに変えれば、クリスマスのメニューにもいい。
プチトマトやキノコ、大ぶりに切ったニンジンを加えると、彩り豊かになります」
温め直しても、冷めたままでもおいしいので、作り置きに向く。
副菜として、キノコのペペロンマリネも教わった。
<シメジ、エノキダケは石突きを除く。シメジは手でばらし、エノキダケは3等分の長さに切る。
フライパンにオリーブ油大さじ2杯と、つぶしたニンニク、赤唐辛子を加え弱火にかける。
香りが立ったら、シメジとエノキダケをさっといためる。しんなりしたら、レモンのスライス、白ワインと塩小さじ1/4杯を加え、ひと煮立ちさせ、全体をなじませる>
煮汁に浸して味をなじませると、ニンニクや赤唐辛子の味わいが穏やかになる。
レモンが利いた爽やかな風味。冷蔵保存で4、5日は持つ。
この2品にパンを添えれば、1回の食事に十分だ。「マリネは作り置きができる上、味が染みておいしくなるのがよいところ。年末年始の忙しい時にもお薦めです」
【材料=2人分】
■鶏もも肉のアップルビネガー煮=写真手前=
鶏もも肉(大)1枚(300g)/リンゴ1/2個/タマネギ1個/ニンニク1かけ/パセリのみじん切り大さじ1杯/米酢大さじ3杯/白ワイン50cc
■キノコのペペロンマリネ=同奥=
シメジ、エノキダケ各50g/ニンニク1かけ/赤唐辛子の小口切り(種を除く)1/2本分/白ワイン大さじ2杯/レモンのスライス3、4枚
(2015年12月2日 読売新聞)