ドローンと近未来技術で実現する仙北市「地方創生」の姿

ドローンと近未来技術で実現する仙北市「地方創生」の姿
Intel Japan Writer

東京一極集中を是正するとともに、地方の人口減少に歯止めをかけようと政府が推進する「地方創生」。

そして地方創生を加速する「近未来技術」のひとつとして最近大きな注目を集めるのが「ドローン」。

秋田県仙北市はそのドローンを活用して地方創生に取り組む「ドローン特区」として、このところクローズアップされています。

仙北市ではいったいどのような取り組みが行われているのか、仙北市役所 総務部 地方創生・総合戦略統括監 小田野直光氏にお話を伺いました。

風光明媚(めいび)な仙北市が進んだ「国家戦略特区」への道

仙北市は秋田県の東部に位置する市。2005 年に角館町、田沢湖町、西木村の近接二町一村合併によって誕生しました。市の面積は約 1100 平方キロメートルで、1 万 691 世帯・2 万 7710 人(2016 年 8 月 31 日現在)の市民が暮らしています。

同市のほぼ中心には日本一深い田沢湖があり、周辺には乳頭温泉郷、玉川温泉といったさまざまな泉質の源泉が点在しています。また「小京都」とも称される角館町には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている武家屋敷通りと美しい桜並木があり、多くの観光客が訪れます。

そんな豊かな自然環境や史跡などの観光資源にも恵まれた仙北市ですが、日本の多くの地方都市同様に少子高齢化とともに人口流出による過疎化という問題を抱えています。市内にはすでに「限界集落」となっている地域もあり、その対策は待ったなしの状況を迎えています。

そこで門脇光浩現市長が旗振り役となって同市が取り組んだのが「国家戦略特別区域」(国家戦略特区)の認定です。国家戦略特区に認定されることでさまざまな規制緩和が許され、それによって地域産業の振興や新事業の誘致を目指し、人口減に歯止めをかけることを狙ったのです。

仙北市が国家戦略特区に認定されたのは 2015 年 8 月 28 日のこと。国家戦略特区の第 2 次指定である「地方創生特区」、「近未来技術実証特区」としてです。国家戦略特区の中でも「地方創生」をテーマに取り組む“意志の強い”地域というのが認定に至った理由でした。

「ドローン特区」として地方創生に取り組む仙北市

地方創生・近未来技術実証特区とドローンはどのように結びつくのでしょうか? そこにはある理由がありました。

「仙北市は市域の 6 割弱が国有林であるという、特殊な事情があります。国有林はその名のとおり国の管理区域であり、本来は地方自治体が容易に利用できる領域ではありません。その国有林を、特区による規制緩和で活用するというのが仙北市の ひとつの狙いでした。」(小田野氏)

同市が特区事業の当初イメージとして政府に提案したのは「国有林の活用促進」です。具体的には、国有林において家畜の放牧をおこない、それに伴う食肉の加工施設やレストランを整備すること、そして国有林の範囲内でドローンの自律飛行の技術実証をおこなうことでした。

政府は近年の世界的なドローンブームを受け、国家としてドローンへの注力を説いていました。特に小泉進次郎内閣府政務官は、以前から国家戦略特区の中でドローンの実証実験が可能な地域の必要性を主張。こういった政府の思惑と、仙北市の事業提案にドローンの技術実証が含まれていることがマッチしたのでしょう。結果、仙北市は無事に国家戦略特区として認定されることとなりました。

また、同市は国有林の活用事業以外にも、農業法人の経営多角化や高齢者・退職者の就業支援事業といった事業提案をしていて、それらも無事に認定されすでに推進されています。基本的には特区事業によって「地域課題を解決する産業づくり」を実現するのが同市の目的です。しかし、なにかとドローンについて注目されている昨今のこと。同市のドローンに関する技術実証実験が特に話題になっているため、全国区で「ドローン特区」として著名になったというわけです。

それでは、同市が提案したドローンに関する技術実証事業をいくつか挙げてみましょう。

ドローンを使った輸送系の事業としては、病院から遠隔地の患者宅への薬剤輸送、災害時の支援物資輸送、学校図書の配送の構想があります。図書貸し出しシステムと連動した学校図書の輸送貸し出し事業については、すでに 2016 年 4 月にドローン実機を使った運搬実証実験がおこなわれ、同市内小学校から中学校まで約 1.2 km の距離の図書輸送に成功しています。今後ドローンによる荷物配送に関し、サービス実現の仕組みを整えるとしています。

ほかに計測系の事業として、仙北市が有する活火山の活動監視や山岳遭難救助にドローンを活用する案が挙げられています。さらには、各種インフラの点検や土地の測量・計測にもドローンを用いる、いわゆる「i-Construction」についても実サービスを展開していく予定としています。

https://www.facebook.com/www.biokitchen.kyoto