パソナ、なぜ農業・酪農に参入 本社に牧場を作った理由
聞き手・牛尾梓2017年9月24日13時35分
パソナグループの南部靖之代表
有効求人倍率が、バブル期を上回る高い水準が続き、様々な業界で人手不足感が強まっています。そんな中、人材派遣大手のパソナグループは、農業や酪農などの第1次産業に着目しています。その理由は。南部靖之代表(65)に聞きました。
アルパカや牛、東京駅前ビルに放牧 パソナ「牧場」開設
——人手不足が深刻化していると言われています。
「『人手不足』ではなく、『人材不足』だと思う。雇用のミスマッチが起きているだけで、誰かが中に入って交通整理すれば、解消できる問題だと思っている。それを担うのが我々だと思っている」
——2003年に農業分野に参入したのも、その一環だと聞きました。
「当時、親の介護のために地元に戻らざるを得ない『介護離職者』が増えていると聞いて、何とか地方に雇用をつくれないかと考えた。一方で、地方では、若者が東京に出たまま戻ってこず、Uターン者に補助金を出すなどしていた。これは完全なミスマッチ。職のないところには帰りようがない」
——人材ビジネスの企業として、どのように貢献できると考えましたか。
「農業も、加工や販売を一体化した『6次産業化』すれば、雇用が生まれるはずだと考えた。そこで農業の『ビジネス経営塾』やインターン制度をつくった。日本は家族経営が多いが、経営やマーケティングを勉強すれば、戦略的な経営ができるようになる。IT企業や銀行出身者を派遣してコンサルティングもした。雇用の流動化が起きた」
——東京駅前の本社ビル内に牧場をつくり、次は酪農に乗り出しましたね。
「欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が大筋合意となり、関税が引き下げられてチーズやバターが世界と競争しなくてはならない環境になる。外国に対して負けない『強い酪農家』をつくらないといけない。その上で、酪農に関心がある人と後継者不足の酪農家を結びつけるプラットホームをつくりたい」
ログイン前の続き——地方に雇用をつくるには企業誘致という手もあります。
「今の社会はあまりにも企業依存型。会社に勤めていないと、家が借りられなかったりすることもある。農業や酪農支援もその一つだが、個人を強くする教育を行っていけば、若者の選択は変わってくると思う。Uターンだけでなく、IターンやJターン者でも活躍できる拠点も作っていきたい。東京から100万人を地方へ分散させるのが目標だ」(聞き手・牛尾梓)
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なんぶ・やすゆき 関西大卒。1976年、「家庭の主婦の再就職を応援したい」と、大学を卒業する1カ月前に人材派遣事業「テンポラリーセンター」(大阪市)を設立。翌年、東京に進出し、93年に商号を「パソナ」に変更した。「雇用創造」をテーマに、雇用インフラの構築を続ける。
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