実情に合った「日本版DMO」の定義とは?

実情に合った「日本版DMO」の定義とは?

しかし、日本版DMOに登録された候補法人の形成・確立計画を読み進めると、「これが日本版DMOだ」という概念がはっきりと確立しているとは言い難いと思われます。一方で、観光庁は「世界水準」とはどういうことか示していません。私は、これまでの国のDMOへの政策言及(表1. 参照)から見ても、「欧米の先進事例も踏まえ」た「世界水準のDMO」を日本版DMOとして認定していくと読むのが自然なのだと思います。ここに、欧米のDMO事例を学び、その機能や組織マネジメントを分析して、地域がそれぞれの実情に合わせて取り入れるべきことは何かを真剣に考える価値があると思います。

表1. 国のDMOへの政策言及(抜粋)

2020年に東京五輪を控え、訪日外国人客4000万人を目標とする今こそ、地域の観光事業は、パラダイムチェンジの時だという認識が必要です。インバウンド、ICT、シェリングエコノミーと押し寄せる波は、従来当たり前と思っていた常識や価値観に非連続的・劇的な変化を求めています。DMOも地域観光の変化の一つです。変化を活かしチャンスを自らの手に引き寄せることで、成長戦略は生きたものになると考えるべきでしょう。

この連載は、従来の価値体系を変えていくことを恐れず、様々な壁や抵抗を乗り越えて、前例のない新しい価値を創ろうとするイノベーターたちに向けて書き進めていきたいと思います。

時を同じくして、拙著『DMO−観光地経営のイノベーション』を5月末に学芸出版社より上梓します。この連載は、本の内容と関連付けながら、この本で書ききれなかったことを盛り込んでいきたいと思います。併せてお読みいただければと思います。

高橋一夫(たかはしかずお) 近畿大学経営学部教授

1983年にJTB入社後、西日本営業本部営業開発部長、コミュニケーション事業部長などを歴任。2007年から流通科学大学教授、2012年より現職。スポーツコミッション関西の幹事として「関西ワールドマスターズゲームズ2021」を招致。主な編著書に『CSV観光ビジネス』(学芸出版社、2014年)、『旅行業の扉』(碩学舎、2013年)などがある。大阪府立大学大学院経済学研究科博士前期課程修了。

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