高級料亭4代目はなぜ「工場野菜」を選んだか
伝統文化はアップデートされる
吉田 忠則
甘さが抜けない
植物工場は年中生産できるのが強みです。
野村:年中作れるのかもしれませんが、我々は料理の素材で季節感を出すのが仕事で、真逆の時期にヨモギを出すわけにはいきません。露地もののヨモギが出ている時期に、あえて水耕栽培のヨモギをチョイスしたりしています。
品質でほかに特徴はありますか。
野村:今回、サラダをプロデュースして思ったのは、工場で生産しているので、水洗いしたり、ホコリを払ったりする作業が最低限ですむんです。すごく大きなメリットです。包丁を入れて水に漬けてしまうと、味も栄養も抜けてしまいます。野菜本来の甘さが抜けないというのは強みです。だから、ドレッシングがサラダにすごく乗るんです。
専用のドレッシングを開発しましたが、コンビニのサラダにかけてもおいしくありません。カットしたキャベツがいい例で、日持ちさせるために水に漬けておくと、断面から水が浸透する。このドレッシングをかけても、野菜自体の味が乗ってこないで、ドレッシングが薄まったような味しかしません。
ドレッシング作りでどんな工夫をしましたか。
野村:工場で農薬を使わずに育てた野菜です。当然、添加物を加えたりしたくない。料理人なので、ふだんおいしいものを作ることに注力していますが、今回は体にいいということにかなり気を遣いました。油はふつうのサラダ油ではなく、さらさらの太白ごま油です。ゴマの香りは一切しません。
厨房でサラダセットを作り始める野村祐介さん(東京都港区の「醍醐」)
レタスは軽くちぎる(東京都港区の「醍醐」)
黒キャベツをあっという間に刻んだ(東京都港区の「醍醐」)
トマトは軽く布巾で拭くだけ(東京都港区の「醍醐」)
水菜も軽く水に通すだけで、すぐ拭く(東京都港区の「醍醐」)
サラダセットが完成(東京都港区の「醍醐」)