真空調理法とはどんな調理法?
味の向上や調理作業の合理化が図れる調理法
真空調理とは、食材を生のまま、場合によっては調味料と一緒に真空包装し、湯せんなどによって低温(58〜95℃)で一定時間加熱後提供するか、または、加熱後急速に冷却してチルド保管する調理法のこと。
レトルトパウチ食品と勘違いする向きも少なくないが、それとは全く別物だ。
煮る、蒸す、炒めるなどといった従来の調理法と並ぶ、“新しい調理法”であり、味の向上を図れるという大きなメリットがある。
調理法としての特長を、真空包装によるメリットと、低温加熱によるメリットという二つの側面から見ると、次の通りだ。
まず真空包装によるメリットだが、真空とは、地上の気圧より低い圧力の気体で満たされている特定の空間のこと。
袋内の空気を抜き、この真空状態にもっていくと、
(1)素材の酸化防止、
(2)素材内の空気が抜ける代わりに、調味料が染み込む、
(3)通常の加熱では、素材内の空気が膨張し、素材の細胞破壊を招くが、空気を抜くことでこれを防ぐことができる──といったメリットが得られる。
一方、低温で調理するメリットは、素材の変質を食い止めることだ。
例えば肉や魚の主成分であるタンパク質は62℃を超えると凝固が始まり、68℃を超えると、分水作用といって、細胞内から水分が出てしまう。
その結果、肉、魚は硬くなり、水分が抜けてパサついたり、目減りもする。
しかし、低温で調理すれば軟らかく、ジューシーに仕上げられるというわけだ。
さらに、加熱しない料理にも、真空パックは威力を発揮。
例えば、サーモンのマリネなら、生のサケを香草や調味料とともに真空パックにするだけで、通常のマリネより味や香りがムラなく染み込む。
保存法としてのメリットも大きい。
素材が酸化しないため、1週間程度と従来より長期の保存が可能な点がその一つだ。
しかも、提供前には原則的に温め直しだけですむ。
つまり、アイドルタイムなどを利用した集中的かつ大量の仕込みが可能な上、オーダーが入ってから提供するまでの時間も短縮できるというわけだ。
さらに、冷蔵庫、加熱機器さえあれば、厨房機器が揃っていなくても本格派の料理を出せる。
湯せんやスチームコンベクションオーブン(SCO)による加熱は、温度設定をマニュアル化しておけば、提供の場にプロの調理人は必要無い──といったメリットもある。
また、クレンリネスの面でも利点がある。
パックごと加熱するため、厨房内が油で汚れることが少ない。
冷蔵庫内に肉や魚を隣り合わせて入れてもにおいが移らない上、真空パック状態の食材はある程度重ねて収納できるため、冷蔵庫内の整理もしやすいのも大きな長所だ。
また、次のような理由で、原価率低減にもつながる。
(1)水分の蒸発やドリップが減るため、加熱による目減りが少ない、
(2)食材が安く手に入る時に大量に仕入れて仕込みができる、
(3)味が染み込みやすいため、調味料が少なくてすむ、
(4)低温加熱を行う限り、提供直前の2次加熱を数度繰り返しても味が劣化しにくいため、見込み違いで加熱した料理を再度使うことができる──などだ。ただし、食中毒の原因となる細菌が真空パック内で繁殖しないよう、衛生面では注意が必要。
新調理システム推進協会が1993年にまとめたガイドラインには、
(1)使用する器具類は食品別、工程別に専用化すること、
(2)加工のすべての段階で、微生物が増殖する危険な温度帯(10〜60℃)を避けること、
(3)汚染されたものと清潔なものとの交互汚染を起こさないよう、人や物の動きに注意することなど、9項目の指針が示されている。
(日経レストラン編集部)
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写真は
以前の大阪、豊中の厨房です。希望に萌えていた時ですね。
厨房は完全な真空調理方式でした。
メタボ対応の予防食の開発を試みておりました。