前回の続きです。
人類と「発酵食品」のつきあいはたいへん古く、今から5000年以上前のメソポタミアやエジプトで、
すでにワインやビールがつくられていたことが、当時の遺跡や石板などの記録からわかっています。
日本では、コウジカビを用いた酒、酢の原型、醤油や味噌の原型がつくられていた記録が8世紀の文献に残っています。
一方、科学の世界では、人類は17世紀に入ってから微生物の存在に気づき、発酵が
微生物によって行なわれていることは、19世紀になってから確認されました。
先人達は、発酵が微生物のはたらきによるとは知らないまま、長年の経験や発想から豊かな食生活を築き、伝承させてきたのですね。
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微生物は「微小で、肉眼では見えない生物」をいいます。
発酵食品に関わる微生物は、「酵母」、 乳酸菌などの「細菌」 、味噌や醤油をつくるコウジカビなどの「カビ」の3つです。
「酵母」は、その多くが生命活動によって、糖分をアルコールと二酸化炭素に分解します。
乳酸菌は、乳酸をつくって、食品に独特の酸味を与えたり、食品全体を酸性に傾けて、
食品の保存性を高めるなどの働きをしてくれます。
また、キムチや醤油、味噌などをつくる場合、酵母と一緒に働くことで複雑な風味をつくり出す乳酸菌もあります。
コウジカビはデンプン質をブドウ糖に変えるアミラーゼという酵素や、たんぱく質を分解してアミノ酸にするプロテアーゼという酵素をつくりだします。
米とコウジカビでつくられる甘酒には、必須アミノ酸やビタミン類、ブドウ糖が含まれ、
かつては夏の暑気払いに飲まれていました。