ラジカセテープ

◇◆あんなときでも生きていた それは確かだった◇◆

ラジカセテープをはじめて買ったのは
覚えている範囲では、僕が小1のとき
兄の9才の誕生日会に流すつもりで、母が買った
田原俊彦のテープが欲しかったのだけど
売り切れていて、無くて
仕方なく、あしたのジョーのテープを買った

16才のとき、久しぶりに聴いた
ひきこもっていて、母親を蹴ってばかりいて
もうどうしようもなかった
僕のこころにテープの音は響いた
涙が出てきた
でも、その後も、数年間は母を蹴り続けた

30才のとき
通信制高校に進学するさい、久しぶりに聴いてみた
泣けてきた
テープをラジカセに入れて
セットして、ボタンを押して、聴く
その行為にも、泣けてきた
僕は、また、生き延びたのだと、感じた

36才の秋の終わりに
ホント、久しぶりに、同じテープを聴いてみた
音が少し乱れていた
でも、泣けてきた
またしても、泣けてきた

そこに居るのは、ジョーでも力石でも
白木葉子でも、無かった

僕だった
僕にも青春があった
確かにあった
涙がとまらなかった