『天平文化の光と影』 〜行基と大仏づくり〜

(%紫点%) 「平城遷都1300年記念特別講座」(4月〜9月:全7回講義)の第六回講義の報告です。
・日時:7月23日(金)pm1時30分〜3時45分
・場所:すばるホール(会場:小ホール)(富田林市)
・演題: 「天平文化の光と影」〜行基と大仏づくり〜
・講師:黒田 伊彦先生(大阪樟蔭女子大学講師)
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《天平文化について(概略)》
(%緑点%) ”光”
・聖武天皇のときの元号「天平」(729年〜749年)を中心に栄えた、貴族・仏教文化。
・唐(遣唐使)やインド・ペルシャ・アラビアなどの影響をうける。
・「あおによし 奈良の都は 咲く花の にほふが如く 今盛りなり」(万葉集・小野老)
・代表的なもの
(建築)東大寺法華堂、興福寺五重塔、唐招提寺金堂・講堂、法隆寺夢殿、国分寺、国分尼寺など
(美術品.)東大寺廬舎那仏(奈良の大仏)、興福寺阿修羅像、薬師寺十二神将、正倉院宝物など
(文学)「古事記」、「日本書紀」、「万葉集」、「懐風藻」、「風土記」など
(%青点%) ”影”
・飢饉、疫病、水害、地震
・内乱・政争・・・「長屋王の変」、「天然痘の流行で藤原4兄弟の死去」、「藤原広嗣の乱」、「橘奈良麻呂の変」、「恵美押勝の乱」、「道鏡の変」など
・めまぐるしく遷都(平城京(710年)→恭仁京(くにきょう)(740年)→難波宮(744年)→紫香楽宮(しがらきのみや)(744年)→平城京(745年))
《行基について(略伝)》
・生没年:668年(天智7年)〜749年(天平21年)
・河内国大鳥郡(現在の大阪府堺市)の母の家で誕生。父は百済系渡来氏族。
・関西地方を中心に、集団を形成して、貧民救済・治水・架橋などの社会事業に活動。
・”禁圧をうける”・・・717年、民衆を扇動し、寺外の活動が僧尼令に違反するとして布教活動を禁圧される。
・”大僧正に任ぜられる”・・・大仏造営に際して、幅広い民衆の支持が必要であったため、行基を大仏造営費の勧進(資金集め)に起用。その功労により、745年(78歳)大僧正に任ぜられた。
・752年(天平勝宝4年):大仏開眼会。その席に行基はいなかった(この3年前に82歳で逝去)
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.「天平」年号と南河内・古市
2.聖武天皇の5年間の遷都騒動
3.東大寺廬舎那仏造立の発願
4.大仏開眼会の盛況
5.光明皇后の国際戦略
6.平城京・大仏づくりと木津川
7.行基の民衆布教・土木工事と山上憶良の批判
8.行基の大仏づくりの光と闇
9.貧窮問答歌ー山上憶良ー
10.わが町にも歴史ありー矢田の行基伝説ー
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(%ノート%) 貧窮問答歌(山上憶良)
・山上憶良は、”農民の悲惨な現実を詠んでいる”。
・重い税に苦しみ、口分田を捨てて逃亡する者もいた(浮浪民の続出)
・(参考)土地制度の移り変わり・・・公地公民制(646年)→班田収授法(701年)→三世一身法(723年)→墾田永年私財法(743年)
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(%紫点%) 次回(第7回講義)の案内
・日時:9月10日(金)午後1時半〜3時半
・場所:すばるホール(会場:展示室)
・演題:「奈良時代の錬金術師と預言者」
・講師:平林 章仁先生(龍谷大学文学部教授)