(%紫点%) 「平城遷都1300年記念特別講座」(4月〜9月:全7回講義)の第七回講義の報告です。
・日時:9月10日(金)pm1時30分〜3時40分
・場所:すばるホール(会場:展示室 3階) (富田林市)
・演題:「奈良時代の錬金術師と預言者」
・講師:平林 章仁先生(龍谷大学文学部史学科教授)
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《参考文献−(続日本紀・日本書紀・日本霊異記)について》
・ 「日本書紀」 …日本という国家が形成されていく過程を描く。神武から持統天皇(?〜697年)までを扱う。30巻。720年(養老4年)に完成。撰者−舎人(とねり)親王。
・ 「続日本紀」 …平安時代初期に編纂された勅撰史書で、文武天皇から桓武天皇までの(697年〜791年)を扱う。奈良時代の基本資料である。40巻。797年(延暦16年)に完成。撰者−菅原真道、藤原継縄など。
・ 「日本霊異記」 …平安時代初期に作られた、日本で最初の仏教説話集。仏教に関する異聞・奇伝を描いた短編物語が、全部で112編集められている。822年頃成立。著者は、僧景戒。正しくは「日本国現報善悪霊異記」という。
・「六国史(りっこくし)」:日本国においる国家事業としての史書の編纂は、飛鳥時代から平安時代前期にかけて行われ、6つの史書が残されたため、これを六国史という。
六国史・・・〈日本書紀〉、〈続日本紀〉、〈日本後紀〉、〈続日本後紀〉、〈日本文徳天皇実録〉、〈日本三代実録(901年)〉
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.日本における初めての金の産出
2.大いなる詐欺師・錬金術師
3.錬金術師を信じた背景
[続日本紀 天平二十一年](749年)
・”廿一年二月、陸奥(みちのく)国、始めて黄金(くがね)を貢(たてまつ)る。・・・”
(解説)
①日本で初めて金が産出。(宮城県遠田郡に黄金山神社)
②奈良の大仏造立にあたって、最大の問題は、鍍金用の金。当時、金はすべて輸入しており、大仏に鍍金する膨大な量を手に入れる見込みはなかった。
③陸奥国の金の産出に歓喜した聖武天皇は、造営中の大仏の前で、感謝の詔を発布した。
④大伴家持の歌 「天皇(すめらき)の御代栄えむと東なる陸奥(みちのく)山に黄金(くがね)花咲く」
[続日本紀 大宝元年三月](701年)
・”・・・対馬嶋(つしまのしま)、金(くがね)を貢く。元を建てて大宝元年としたまふ。始めて新令(あたらしきりやう)に依りて官名・位号を改制す。・・・”
[続日本紀 大宝元年八月]
・”・・・大倭(やまと)国の五瀬(いつせ)を対馬嶋に遣わして、黄金(くがね)を冶(う)ちなさしめき。ここに至りて詔(みことのり)して、五瀬に正六位を授け、封五十戸、田十町、・・・”
(解説)
①大宝律令の制定(701年)により、中央集権国家体制が確立。律は刑法、令は行政法、民法、商法。
②701年、対馬で産出したと称する金を献上したという。これに慶んだ朝廷によって「大宝」に元号が建てられた。しかし、これは現在では”偽鋳”であるといわれている。また、後に、五瀬(いつせ)の”詐欺が発露(あらわ)れる”。
[日本書紀 天武天皇三年三月](674年)
・”・・・對馬國(つしまのくに)・・・銀(しろかね)始めて當國(このくに)に出(い)でたり。即ち貢上(たてまつ)る。・・・”
(解説)
①日本で初めての銀の産出。674年(天武3年)、對馬国司が対馬で産出した銀を朝廷に献上した。
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4.古代の童謡とは何か
5.予期せぬ出来事に対する理解
6.預言と解釈
[続日本紀 光仁天皇即位前紀〜宝亀元年十月(770年)]
”・・・童謡(わざうた)に曰く、「・・・桜井の白壁(しらかべ)沈くや よき壁沈くや・・・然(しか)しては国ぞ昌(さか)ゆるや 吾家らぞ昌ゆるや おしとど おしとぞ・・・”
(解説)
①光仁(光仁)天皇は、施基(しき)皇子(天智天皇の子)の第6子で、白壁王(しらかべのおおきみ)と称した。この時代は、数十年間、政治が混乱(称徳天皇・道鏡など)。称徳天皇の死によって、壬申の乱以後に続いた天武天皇の皇統が絶え、天智系の光仁天皇が62歳で皇位を継承した。
②光仁天皇が即位する前に、「白壁王(のちの光仁天皇)」が天皇に登る」という童謡(わざうた)あり。→ 誰が預言した? 童謡(わざうた)のワザとは、隠された意味であり、未来を暗示(予兆)している。
[日本霊異記 下巻 第三十八]
”・・・天下を挙(こぞ)りて歌咏(うた)ひて言わく「・・・桜井に、白玉(しらたま)しづくや、吉き玉しづくや、押してや。押してや、然(しか)しては、國ぞ栄えむ。我が家そ栄える無や。・・・」・・・白壁天皇位に即(つ)きたまふ。・・・改めて宝亀(ほうき)元年として天下(あめした)を治めたまふ。・・・」
(解説)
①「続日本紀」の童謡と同じ内容である
②因果応報の事例として編集されている。
・”災(わざわい)と善(よきこと)の表相(しるし)としてまづ現(あらは)れて後(のち)に其の災と善との答(こたえ)を被(かがふ)る縁(ことのもと) 第三十八”
《まとめ》
○錬金術師・・・①701年、対馬で産出した称する金を献上。「大宝」という元号が建てられた。そして、大倭(やまと)国の五瀬(いつせ)を対馬に遣わして、黄金を治(う)たせ、その功績により、五瀬は昇進し、数々の褒賞をもらっている。 → これは、偽鋳であった。後になって、偽りが露見する。②わが国で最初の金の産出は、749年陸奥国である。③いつの時代でも、錬金術師が出現する。
○預言者・・・①童謡(わざうた)が未来を予兆(暗示)している。誰が言ったのか?。②天皇めぐる歴史上の出来事・政争には前兆がある。③孝謙天皇(称徳天皇重祚)が、後継者を指名せず崩御(770年)。壬申の乱(672年)以来、続いた天武天皇の皇統が絶え、天智系の光仁天皇が即位。平安京に遷都(794年)した桓武天皇は、光仁についで天智系の2人目。続日本紀が完成したのが797年なので、その時の権力の背景を見ることも必要。
●日本書紀、続日本紀、日本霊異記から、「奈良時代の錬金術師と預言者」を読み取るには、1回の講義では難しく感じた。しかし、史書から読み取っていく作業は、なかなか面白い。これからも、平林先生の講義に期待しています。
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*4月9日、近つ飛鳥博物館での「公開講座」(参加者105名)でスタートしました「平城遷都1300年記念特別講座」の全7回講義は、今回で終了します。受講者は、大阪府だけでなく、兵庫県、奈良県、三重県、和歌山県からも参加があり(毎回60名を越える出席者)、ありがとうございました。(アンケートでは、”「また新しい企画」で特別講座の開催を望みます”などをいただきました。)
尚、講義スケジュールで、先生方の諸事情により、やむをえず、講師及び演題を変更し、ご迷惑をおかけしました。受講生の皆様のご協力により、全7回講義を終了することが出来ましたこと、深く御礼申し上げます。
・現地ウォーキングは予定通り行います。【山の辺の道ーpart1(10月14日)、part2(11月11日)】・・・秋の”山の辺の道”を楽しんでください。