『源氏物語』 にみる愛の理想と現実

(%紫点%) 後期講座(第3回)の講義報告です。
・日時:9月28日(火)am10時〜12時10分
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「源氏物語」①愛の理想と現実
・講師: 奥村 和子先生 (詩人・カルチャー講師)
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*源氏物語の時代背景*
①「平安時代」
・794年:平安京に遷都
・935〜941年:承平・天慶の乱(平将門、藤原純友の乱)…武士の反乱
1016年:藤原道長、摂政となる(摂関政治の全盛)
・1151年〜前九年の役、1183年〜後三年の役
・1156年:保元の乱 1159年:平治の乱(平清盛が権力を掌握)
・1185年:壇の浦の戦いで、平氏滅亡
②国風文化(10世紀〜11世紀)
・894年:遣唐使停止…その後、中国の影響を受けない日本独自の文化が誕生。漢字をくずした仮名文字が使われ、宮廷文学としての「源氏物語」や「枕草子」が著された。
女房文学の発達…藤原氏の摂関政治は、外戚政策(天皇家に子女を入内させ、その子を天皇として外祖父となり、権力をにぎること)に立脚するものである。藤原氏は子女を入内させると、天皇の関心を得るため有能な女性を女房として近侍させた。(紫式部や清少納言も女房として仕えていました。)
物語…「竹取物語」、「伊勢物語」、「宇津保物語」、「落窪物語」、「源氏物語」
随筆・日記…「土佐日記」、「蜻蛉日記」、「和泉式部日記」、「紫式部日記」、「枕草子」、「更級日記」
詩歌…古今和歌集(905年・勅撰和歌集)
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(%エンピツ%) 講義の内容(要約)
1.源氏物語の概要
[成立]
・1008年頃 平安時代 藤原摂関時代の後宮が舞台
(*2008年(平成20年)は「源氏物語千年紀」で、いろいろなイベントなどが催行された。)
・一条天皇の中宮彰子(道長の娘)に女房として仕えていた紫式部による物語
[内容]
・光源氏を主人公とする恋物語。
・源氏物語 五十四帖
<一部 桐壺〜藤裏葉>…光源氏の栄華・あまたの女君との恋・至上の幸福

「いづれの御時にか、女御更衣あまたさぶらひたまひける中に、いとやむごとなき際にはあらぬがすぐれて時めきたまふありけり」 (桐壷)

<二部 若菜上〜幻>…四十賀を祝う源氏に女三宮の降嫁・紫上の絶望、不義の子を抱く源氏の憂愁
<三部 匂宮〜夢浮橋 うち橋姫〜夢浮橋を宇治十帖>…源氏亡き後、源氏の子孫薫・匂宮と宇治の姉妹大君・中君・浮舟との結ばれない恋、出家する女たち

2.光源氏をとりまく女たち
[藤壺(ふじつぼ)] [紫上(むらさきのうえ] [葵上(あおいのうえ)] [空蝉(うつせみ)] [夕顔(ゆうがお)] [六条御息所(ろくじょうみやすどころ)] [末摘花(すえつむはな)] [源 典侍(げんのないしのすけ)] [朧月夜内侍(おぼろづきよのないし] [明石君(あかしのきみ)] [朝顔(あさがお)] [花散里(はなちるさと)] 他

3.男のゆめ 女のゆめ 【愛の理想】
(光源氏) (紫上)

4.崩壊する六条院の調和的世界 【愛の現実】
(二部 若菜上・若菜下・柏木・御法・幻)

5.源氏物語をどう読むか
①道徳書として読む
・「因果応報」
②人の性(さが)として読む
・「人間の条」(本居宣長「もののあわれ」)
・「人間実相」、「恋の真実」、「これが人間ではないか」
③誨淫(かいいん)
④「日本文学史上最高の長編小説」 「王朝(宮廷)物語」 「歴史小説・政治小説」
 (書き写されて伝えられる)
⑤現代語訳:与謝野晶子、谷崎潤一郎、円地文子、田辺聖子、瀬戸内寂聴など
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・後期講座の受講生(55名)の男女比は、女性13名(24%)・男性42名(76%)です。
・男性は、なぜか、千年という時の試練をこえた「源氏物語」を、苦手としています。 → 奥村先生より、”男性で、全く源氏物語を読んだことがない人は?”という質問に、”7〜8割”の男性が手を挙げました。
・奥村先生にとって、”源氏物語の教室”といえば、いつも女性が95%以上で、今回、男性が多く、しかも、その大半が源氏物語を読んだことがないという教室は、初めての体験とのこと。…「源氏物語絵巻」などをプロジェクターで映して、物語の場面や寝殿造りの構造(部屋の仕切り…御簾・几帳)などの解説もあり、シニア男性にとっては、最適な入門講座でした。