(%緑点%) 前期講座(歴史コース)(3月〜7月:全15回講義)の第2回の講義報告です。
・日時:H23年3月15日(火)am10時〜12時15分
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「文科系のための暦(こよみ)読本」−旧暦と太陽暦−
・講師:上田 雄(うえだ たけし)先生(日本暦学会 理事)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*右の本は、今日の講師:上田先生の著書です。
・表題:「文科系のための暦読本」〜古今東西の暦の「謎」を読む
・発行所:彩流社企画
・発行日:2009年2月
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(%エンピツ%) 講義の内容
1.今日は何日でしょう?・・・3月15日とはかぎらない
・地球上どこでも同じではない
・グレゴリオ暦文化圏、ユリウス暦文化圏、イスラム暦文化圏など
2.暦の必要性・・・暦はなぜ必要か?
・農業生産活動に必要、徴税のために必要(為政者・権力者にとって必要)、生活のリズム(人生の句読点、記録、歴史を刻むために)必要
3.暦とはなんでしょう?・・・時間、空間(年月日)を測る物差し
・「日」(太陽の一周=一昼夜)、 「月」(月の満ち欠けを基にして29日or30日の一と月を設定)、 「年」(地球が太陽を一周する日数を1年)、 「週」(天体を基準としない人為的な単位。7は洋の東西を問わず聖数となっている)
4.暦とは端数処理の術
・暦の定数: 1太陽年(公転周期)365.2422、1朔望月(さくぼうげつ)29.530589、12朔望月354.367068
*朔望(さくぼう)(広辞苑より)…「朔すなわち陰暦の一日と、望すなわち十五日との併称」
*朔望月(さくぼうげつ)(広辞苑より)…「月が朔(新月)から次の朔に、または望(満月)から次の望に要する時間」
5.暦の種類・・・世界には数百種類の暦があるが原理的には三種類
◎(%月%)太陰暦:月の朔望を基本にし、1年を12ヶ月とする。(欠点…1太陽年よりも10.8日少ない=季節に合わなくなる。17年で夏・冬が逆転。33年で358日余(約1年)早くなる。
◎(%晴れ%) 太陽暦:太陽の見かけ上の1周365日を1年とする。太陽の位置=季節の動き=暦が一致する。
◎太陰太陽暦:太陰暦の欠点を補うために太陽暦の指標を入れて季節を正確に把握できるようにした。→日本・韓国・中国で使われている旧暦・農暦が太陰太陽暦。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
6.現行暦(西暦)の成り立ち・・・起源はローマ暦
・「ロムルス暦」(古代ローマ暦)→「ヌマ暦」→「ヌマ暦の改革」
・「ユリウス暦」(シーザーの改暦)BC45年・《太陰暦から太陽暦へ》
・「アウグストウスの改暦」(初代ローマ皇帝)AD76年・《大の月31日にする。小の月を[2・4・6・9・11(西向くさむらい)]。2月を28日にする。》
・「復活祭の日の決定」(325年のニケアの宗教会議)・《春分は3月21日とする。復活祭は春分の後の満月の後の日曜日とする。》
・「グレゴリオ暦」(ローマ教皇 グレゴリオ13世)1582年・《閏(うるう)年の規定を改革。西暦年数が4で割り切れる年を閏年とする。但し、100の倍数の年のうち100で割り切れても400で割り切れない年は閏年とはしない。例…1700年、1800年、1900年。400年間に97回閏年を置く(或いは、400年間に3回閏年を省く》
7.旧暦(太陰太陽暦)と季節
・太陰暦(月の暦)は季節と同調しない
・太陰暦を季節と同調させる方法→2〜3年毎に閏月(うるう月)を入れて調節する。
8.二十四節季の名前が誤解を生む
・啓蟄 清明 穀雨 芒種 処暑 白露 寒露 霜降 小寒 大寒
・旧暦が季節をよく表しているという誤解!!・・・二十四節季は旧暦(太陰暦)にとりいれられた太陽暦による季節の指標です。
・旧暦の方がスローライフに適しているという迷説???・・・旧暦は1年354日。旧暦の閏年は383日。
・旧暦の命運…今の旧暦ソフトは2033年に破綻する。
9.暦は政治なり
・日本の太陰暦から太陽暦への改暦…【明治5年(1872年)12月2日の翌日を明治6年(1873年)1月1日とする(グレゴリオ暦の採用)】
・日本は元号が生きている唯一の国(中国文化圏の中で)
・公文書は西暦では通用しない(免許証・卒業証書・保険証書)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*上田先生のご専門は、「遣唐使・渤海使の航海の研究」です。その研究の中で、どうしても当時の記録の旧暦の年月日を現行暦に換算しなければならなかったそうです。(旧暦の月日では季節が把握できないことから、「暦」について勉強されたそうです。)
今回の講義は、多くの人から「よかった」との賛辞をいただくとともに、次回にも「暦」について講義をお願いしたい…などの要望がありました。上田先生はご高齢(80歳)ですが、全く感じられない講義で、豊富な事例から、空気ような存在であった「暦」にスポットライトがあてられ、あっという間の2時間でした。
*******************************************
「東北地方太平洋沖地震」・・・
このたびの巨大地震で被災された方々に、心からお見舞い申し上げます。
・講義の冒頭に1分間の黙祷−(講師・受講生全員が、地震でお亡くなりになられた方々の冥福をお祈りしました。)
・本当に、テレビで映し出される惨状は言葉に表せません。
・また、福島第1原発の事故が続いています。
・義援金について(受講生・聴講生の皆様へ)・・・シニア文化塾として、被災された方々への支援のため、義援金を募集します。約1ヶ月間、講義の日に「募金箱」を受付に置きますので、よろしくご協力の程お願いします。集まりました義援金は、日本赤十字を通して被災地に送ります。
*******************************************