『三輪山の神話と古代史』.

(%緑点%) 前期講座(歴史コース)の第3回の講義報告です。
・日時:H23年3月22日(火)am10時〜12時
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「三輪山の神話と古代史」 (1) 〜麻糸で結ばれた神と女の物語〜
・講師:平林 章仁(ひらばやし あきひと)先生(龍谷大学文学部史学科教授)
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*右の写真…笠をふせたような、なだらかな山が「三輪山」です。(撮影日:H22年10月14日・ウォーキング「山の辺の道」)
・三輪山は、奈良県桜井市にある山で、標高467.1m、周囲16km。御諸山(みもろやま)、三諸山ともいわれ、どこからみても神奈備(かんなび)山の極地のような山です。
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[参考資料](ウィキペディアなどより)
○「古事記」(こじき)
・和銅五年(712年)太安万侶(おおのやすまろ)によって献上された日本最古の歴史書。
・成立の経緯を記している序によれば、稗田阿礼(ひえだのあれ)が暗証していた「帝紀」(天皇の系譜)、「旧辞」(古い伝承)を太安万侶が書き記し編纂したものとされている。
○「新撰姓氏録」(しんせんしょうじろく)
・平安時代初期の弘仁六年(815年)に嵯峨天皇の命により編纂された古代氏族名鑑。京および畿内に住む1182氏を、その出自により「皇別」・「神別」・「諸蕃」に分類して、その祖先を明らかにし、氏名(うじな)の由来、分岐の様子などを記述している。
○「風土記」(ふどき)
・奈良時代初期の官撰の地誌。元明天皇の詔により各令制国の国庁が編纂し、主に漢文体で書かれている。「出雲国風土記」がほぼ完本に残り、「播磨国風土記」・「肥前国風土記」・「豊後国風土記」・「常陸国風土記」が一部欠損して残る。
10代・崇神天皇…4世紀、実在の可能性が見込める初めての天皇といわれている。
初代・神武天皇:神武東征の話はあまりにも伝説的]。[欠史八代:二代から九代までは欠史八代と呼ばれ、系譜などの記述にとどまり、説話などは記載されていない。]
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.神話とは何か
・神話とは神様の物語で、そのままでは歴史を語っているのではありません。
・神話から、その時代の人がどのような考えをしているのかを知ることが重要です。
2.大神大物主神社(おおみわおおものぬしじんじゃ)
・大物主神(おおものぬしのかみ)を祭る大神(おおみわ)神社が、三輪山を御神体として鎮座。
・大神神社は拝殿はあるが、本殿は無く、三輪山を御神体としている古い信仰の形である。また、三輪山の山麓は、初期大和政権の政治・経済・文化の核心地で、最初期の巨大前方後円墳もここに集中する。

【麻糸で結ばれた神と女の話】
①.『古事記』崇神天皇段の苧環型三輪山神婚譚
☆「此の天皇の御世に、疫病多に起りて、・・・大物主大神、御夢に顕れて・・・「意富多多泥古(おほたたねこ)を以ちて、河内の美努村に其の人を見得て貢進りき。・・・國安らかに平らぎなむ。」・・・
崇神天皇の御代、疫病が蔓延し多くの死者が出た時、大物主神の子孫オオタタネコを探し出し、神主として祭らしめたところ疫病は止み、国内は平静に帰したといふ。
☆「天神(あまつかみ)地祇(くにつかみ)の社(やしろ)を定め奉(まつ)りたまひき。」
→崇神天皇は、三輪山の神をまつるなどして朝廷の祭祀を整えている。
☆「・・・針つけし麻を、戸の鉤穴より・・・糸のままに尋ね行けば、美和山(みわやま)に至りて神の社にとどまりき。・・・」
→神(男)と結ばれた女は、麻糸を男の衣の裾に。麻糸を尋ねていくと、鉤穴(かぎあな)よりでて、三輪山に至っていた。

②『新撰姓氏録』大和国神別大神朝臣条
・古事記と同じような話−神様と女がむすばれる話−が記されている。
・若干、古事記とは変化してきている・・・「大物主神→大国主神」、「河内の美努村の女(古事記)→三島(摂津)溝杭耳の女(新撰姓氏録)」
・同じように、女が麻糸を男(神様)の衣にかける話があり、男の行き先を尋ねると、陶邑(すえむら)を経て、大和国の御諸山にいたれり。
③『肥前国風土記』松浦郡褶振峯条
・此の風土記にも”神様と女がむすばれる話”が記されている。
・同じように、女が麻糸を男の衣にかけて、男の行き先を尋ねていく話があり、男の行き先を尋ねると・・・此の峯のほとりの沼の邊(へ)に到りて、寝たる蛇(沼の神)あり。
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*「三輪山の神話と古代史」については、4回シリーズの講義です。次回(第二回)は9月の予定です。どのような展開をしていくか、ご期待下さい。
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(%ノート%) *1100年前の「貞観地震」(日本三代実録)*
・平林講師より講義の冒頭に、「貞観地震」についての話がありました。貞観期の西暦869年に陸奥国で大地震が起き、押し寄せた大津波で見渡す限り水没、溺死した者は千人ほど(当時の人口を600万人としてみれば約2万人に相当)・・・として「三代実録」に記録されている。
・陸奥国の国府・多賀城(宮城県仙台周辺)の官人が書き残した大地震の様は、ただならぬ規模の災害であったことを示唆しています。←今回の東北地方太平洋沖地震を”想定外で片付けてよいものだろうか。”