『万葉空間』・・・”万葉人の季節感(七夕)”、”大化の改新”

(%紫点%) 前期講座(文学・文芸コース:全14回講義)の第11回講義の報告です。
・日時:6月30日(木)pm1時半〜3時半
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「万葉空間」(4)〜万葉集の世界に遊んでみませんか〜
・講師: 辻 孝子先生(カルチャー講師)
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.万葉人の季節感・・・(節気・節分・五節供)
①「夏至」(6/22)、「小暑」(7/7)、「大暑」(7/23)
②節分(立春・立夏・立秋・立冬の…前日)
③五節供(節句)⇒1/7[人日(じんじつ)七草粥]、3/3[上巳(じょうし)−陰暦三月初めの巳の日]、5/5[端午(たんご)]、7/7[七夕(たなばた)]、9/9[重陽(ちょうよう)。陽数=奇数]
「七夕」の行事…昼は”相撲” 、夜は ”星祭り”

2.〈万葉集〉七夕を詠んだ歌
・万葉集には130首を越える七夕の歌があり、そのほとんどは男女の恋の物語として詠われています。
・牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)の2つの星が年に一度しか逢うことを許されないという話は、中国から伝わって来たものです。
☆(1068) 「天の海に 雲の波立ち 月の舟 星の林に 漕ぎ隠れ見ゆ」(柿本人麻呂)
・(天空を海に雲の波が立ち、月の舟が星の林に漕ぎ隠れて行くのが見える)
☆(1518) 「天の川 相向き立ちて 我が恋ひし 君来ますなり 紐解き設(ま)けな」 (山上憶良)
・(天の川で向かい合って、私が恋い焦がれているあの方が今夜おいでになる。さあ、衣の紐を解いてお待ちしよう)
☆(2043) 「秋風の 清き夕べに 天の川 舟漕ぎ渡る 月人壮士(つきひとをとこ)」 (作者不詳)
・(秋風の清い夕べに、天の川を舟で漕ぎ渡っている月の若者よ)
☆(2063)「天の川 霧立ち上る 織女(たなばた)の 雲の衣の かへる袖かも」(作者不詳)

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3.今日の「万葉集」・・・”大化の改新”
(1) 乙巳(いっし)の変
・蘇我氏の独裁 ⇔ 中大兄皇子・中臣鎌足らのクーデターによる政変劇
−642(皇極元)年:蘇我入鹿、権勢を握る
−643(皇極2)年:入鹿、山背大兄王(聖徳太子の子)を襲い王家を滅ぼす
*[注]蘇我氏の血を引く古人大兄皇子(ふるひとのおおえのみこ)を皇太子にするために、有力な対立候補である聖徳太子の子・山背大兄王(やましろおおえのみこ)を殺害
−644(皇極3)年:中臣鎌足(なかとみのかまたり)は、中大兄皇子(なかのおおえのみこ)に近づき策謀を練る
−645(皇極4):クーデターの実行。中大兄皇子・中臣鎌足らが蘇我入鹿を討つ。翌日、蘇我蝦夷(入鹿の父)は自害。→蘇我氏本宗家は滅ぶ。
(2) ”改新の詔”
・天皇の宮(首都)を飛鳥から難波宮に移し、蘇我氏など飛鳥の豪族を中心にした政治から天皇中心の政治へ。
・中大兄皇子は皇太子として新政府を組織し、中臣鎌足を内臣(うちつおみ)にして、国政の改革に乗り出す。これが「大化の改新」の始まり。646(大化2)年、”改新の詔(みことのり)”が出される。

(3)中大兄皇子(のちの天智天皇)の歌
○ (91)天智天皇、鏡王女(かがみのおおきみ)に賜ふお歌一首・・・ 「妹(いも)が家も 継(つ)ぎて見ましを 大和なる 大島の嶺(ね)に 家もあらましを」 (天智天皇)
・(せめてあなたの家だけでもいつも見ることができたらなあ。大和の大島の山に我が家があったらなあ。)
○(92)天智天皇のお歌に、鏡王女が唱和したるお歌一首・・・ 「秋山の 木(こ)の下隠(したがく)り 行く水の 我れこそ益(ま)さめ 御思(みおもひ)よりは」) (作者:鏡王女)
・(秋山の木々の下を隠れ流れる川の水かさが増してゆくように、私の思いの方がまさっているでしょう。あなたが私を思ってくださるよりは。)