『漢字文化圏の形成』

(%緑点%) 前期講座(歴史コース)(3月〜8月:全15回講義)の第11回講義の報告です。
・日時:7月5日(火)am10時〜12時
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「漢字文化圏の形成」 〜文字の系統図〜
・講師: 笠井 敏光先生(文化プロデューサー)

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(%エンピツ%) 講義の内容
1.文字の系統図 (右の図を参照してください)
(1)文字の分類
・「エジプト文字」、「漢字」、「シュメル楔形文字」、「インダス文字」、「クレタ島文字」
に分類され、 「エジプト(セム系)文字」「漢字」 が現在まで残り、使用されています。
(2)音声言語と文字言語
「音声言語」−アルファベット → 聞く文化 → 文字は記号
・・・(声中心のアルファベット文化圏)
「文字言語」−漢字 →見る文化 → 書くことを重視
・・・(文字中心[目でみてわかる文字]の漢字文化圏)

2.文字のはじめ
・初期の文字体系は、突然発明されたわけではなく、むしろ、古代の記号体系に基づいていると考えられます。
・「絵画」 ⇒ 「記号」 ⇒ 「文字」
・文字のはじめは、ある種の情報を伝えることのできる「簡略記号」であったかもしれないが、おそらく言語的情報は欠けていたと思われます。
・右の図を参照して下さい。
−(船) 絵画の省略 ⇒ 記号
−(龍) 絵画の省略 ⇒ 記号
言語的情報には、2文字以上が書かれている文字体系が必要。
3.今、話題の「最古の文字論争」 
*今まで発見された文字?・・・
①三重県片部遺跡の「田」 (4C前半) ②熊本県柳町遺跡の「田」(4C初) ③長野県根塚遺跡の「大」(3C後半) ④福岡県三雲遺跡の「竟(=鏡)」(3C後半) ⑤三重県貝蔵遺跡「田」(2C後半) ⑥三重県大城遺跡 「奉?」(2C中頃)
・最近、「最古の文字論争」として話題になっているのが上記の土器・武具などから発見された「田」「大」「竟」などの文字?である。しかし、文字列(2文字以上)ではないので、わが国で2C,3Cに文字が普及していたとは言えないと思います。 (笠井講師)
4.ではいつ頃、文字の体系が整ったのか
5C〜6C頃(倭国、朝鮮半島と連動した動き)
⇒「漢字文化圏」における、国家形成の過程で文字が重要な要素(律令・仏教・儒教など)
(日本)5C頃
・稲荷山古墳(埼玉県)…鉄剣銘「ワカタケル」
・稲荷台1号墳(千葉県)…「王賜銘」鉄剣
・江田船山古墳(熊本県)…鉄刀銘文(75文字)
(高句麗)5C
・広開土王碑
(百済)5C
・武寧王陵

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5.文字の形式・型式・様式
*「年」字の様式*
・『年』の字の成り立ち⇔「禾」(実った穀物)と「干」(音)をあわせた形声文字
・右の資料は、「年」の様式を整理したもので、現在までの系譜を追うことができます。
・中国の碑文では、このいろいろな「年」字が、碑文製作時の様式と併せて使用されることが多い。→ 今後、中国の碑文を読む時、「年」に注意して、どれだけの種類の「年」が使われているかを読むのも面白い。

○漢字文化圏
・「漢字文化圏」とは、漢字に代表される漢文化(中国文化)を使用しているか、過去にしようしていた地域であり、漢字の他に漢文や儒教などに由来する文化を共有している地域をいいます。「漢字文化圏」という場合は、漢字を使用していないベトナムや北朝鮮を含む、中国、日本、台湾、朝鮮半島、ベトナムを包括する文化圏をいいます。
・現在、漢字を使用しているのは、中国、日本、台湾です。
○日本語の特色
・表記体系の複雑さ・・・漢字(音読み・訓読み)、平仮名、カタカナ、ローマ字など常に3種類以上文字の組み合わせで表現
・縦書き、横書きの双方が使用
・表意文字を主体とする漢字では、表音表現(表音文字)が難しく、不便性にたいする不満などから、かつては、「漢字廃止論」の動きもありました。
(例) 「はし」⇒端、橋、箸・・・ 「本」⇒(ほん、ぽん、もと)など