『俳諧師 西鶴』

(%紫点%) 前期講座(文学・文芸コース)(3月〜7月:全14回講義)の第12回講義の報告です。

・日時:7月7日(木)pm1時半〜3時半
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「俳諧師 西鶴」
・講師: 根来 尚子(ねごろ なおこ)先生((財)柿衞文庫 学芸員)

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(%エンピツ%) 講義の内容
1.西鶴略年譜(抜粋)
・寛永十九(1642)年:(1歳)西鶴、大阪に生れる
・寛文六(1666)年:(25歳)『遠近集(おちこちしゅう)』に「鶴永(かくえい)」の号で初めて三句入集する。
・寛文十三(1673)年:(32歳)大阪生玉神社で12日間にわたる万句俳諧を興行。 「鶴永」を「西鶴」と改号する
・延宝五(1677)年:(36歳)大阪生玉の本覚寺で一昼夜千六百句の独吟興行。(『俳諧大句数』)
・延宝八(1680)年:(39歳)大阪生玉神社で一昼夜四千句独吟を達成。(『西鶴大矢数』)
−(1682年)(41歳)「好色一代男」刊。(浮世草子の第一作)
・天和四(1684)年:(43歳)大阪住吉神社にて一昼夜二万三千五百句の独吟を興行。以後「二万翁」を名乗る。
−(1686年)(45歳)「好色五人女」、「好色一代女」など刊。
−(1687年)(46歳)「武道伝来紀」など刊。
−(1688年)(47歳)「日本永代蔵」など刊。
−(1692年)(51歳)「世間胸算用」刊。
・元禄六(1693)年:(52歳)8月10日、大阪にて没。法名は仙晧西鶴。誓願寺(大阪市中央区上本町)に葬られる

*上記は、西鶴の略年譜を抜粋したものですが、超人的なエネルギーを発揮しています。
*「西鶴」の師匠は「西山宗因」。認められて、師匠の一字「西」をもらって、「西鶴」に改号。
(注)俳諧の流れ… 「貞門派」 (松永貞徳の和歌・連歌の伝統を継ぐ/京都)⇒ 「談林派」(西山宗因を中心。「滑稽さ」を取り入れる/大阪) ⇒ 「蕉風」 (芭蕉を中心。/江戸)
*西鶴は、「俳諧集」の刊行を自ら担当。自ら絵(挿絵や自画像)も描いています。
*1682年・41歳の時「好色一代男」を書き上げ、その後20数編の浮世草子を世に出しましたが、その前に、長い年月を俳諧に費やしています。

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2.西鶴二万句への道
★「西鶴大矢数」
・当時、一昼夜にかけて連続してたくさんの句を作る「矢数俳諧」というものがあり、多くの人が挑戦し、次々と記録が更新され、西鶴は、ライバルが出てくるごとに、挑戦。延宝八(1680)年、大阪生玉神社の南坊で一昼夜 四千句独吟を興行。
・(右の資料をご覧下さい)
−この興行には、「指合見五人(審判員)」、「脇座十二人(招待)」、「執筆八人(記録係)」など55人も関係し、イベントとしても賑わいのあったことが窺えます。
−「矢数俳諧」は、ただ句を作るのではなく、複雑な決まりごとがあります。例えば、百韻(百句)のページごとに7句目or13句目に「月」を詠み、13句目or7句目に「花」を詠む。又、「式目表」といって、同じ句が続かないように決め事があります。
*そして、天和四(1684)年・住吉大社で、一昼夜 二万三千五百句 の独吟を興行し、最高記録を打ち立てたました。(しかし、句の記録などは残っていません。)

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3.西鶴を楽しむ
「脈のあがる手を合わしてよ無常鳥(ほととぎす)」 …『俳諧独吟一日千句』
「天下矢数二度の大願四千句也」 …『西鶴大矢数』
「長持に春ぞくれ行く更衣」 …『歌仙大坂俳諧師』
「皺箱や春しり皃(かお)にあけまい物」 …「西鶴 短冊」(右は、西鶴自筆の短冊です)
☆「辞世の句」
辞世 人間五十年の究りそれさへ 我にはあまりたるに ましてや
「浮世の月 見過しにけり 末二年」

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(%ノート%) 『柿衞文庫』の紹介
・名称:財団法人 柿衞(かきもり)文庫
・住所:〒664-0895 伊丹市宮ノ前2-5-20 電話:072-782-0244
・昭和59年(1984年)11月開館
・岡田利兵衞氏(柿衞翁)による俳文学資料のコレクション
(岡田利兵衞氏は明治25年(1892年)伊丹生まれ。家業の酒造業を継ぐとともに、伊丹市長などの要職を歴任されました。)
・芭蕉直筆の「古池や」の句短冊、柿衞本「おくのほそ道」などを含めておよそ1万点にのぼる貴重な資料を有する日本三大俳諧コレクションの一つです。⇒「柿衞文庫」、「酒竹・竹冷文庫」(東京大学)、「綿屋文庫」(天理大学)

*「秋季特別展」”西鶴−上方が生んだことばの魔術師−” (9月10日〜10月23日)
→「文化塾ウォーキング」(第4回) 「9月23日(金)」 『伊丹の俳諧文化を訪ね緑陰の小道を辿る』で、柿衞文庫を訪ね「西鶴展」を見学します。
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*根来尚子講師の講義は、多くの素材から、西鶴を浮き上がらせて、今まで知らなかった「西鶴」のすごさ、面白さを知りました。休憩無しの講義でしたが、あっという間の2時間でした。次回の「上田秋成」についての講義を期待しています。