江(ごう)の時代の流行歌謡・・・『閑吟集』、「隆達節』

(%紫点%) 後期講座(文学・文芸コース)の第2回講義の報告です。
・日時:9月22日(木) 午後1時35分〜3時45分
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「江の時代の流行歌謡」
・講師: 小野 恭靖 (おの みつやす)先生(大阪教育大学 教授)
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.江(ごう)と芸能の年表
・永正十五年(1518)…(『閑吟集』成立)
・大永七年(1527)…(高三隆達誕生)
・天正元年(1573)…【江】1歳(近江国小谷城でえ誕生)
・天正十年(1582)…10歳(母お市の方、柴田勝家に再嫁し、越前北ノ庄城に移る
・文禄元年(1592)…20歳、夫、豊臣秀勝が文禄の役(朝鮮出兵)で戦死。この頃から隆達節の流行が始まるか。
・文禄四年(1595)…23歳、家康の後継者、徳川秀忠に嫁ぐ
・慶長八年(1603)…31歳、(徳川家康、江戸に幕府を開府し、征夷大将軍となる
・慶長九年(1604)…32歳、竹千代(徳川家光)を生む
・慶長十年(1605)…33歳、夫、徳川秀忠が二代将軍となる
・慶長十六年(1611)…(高三隆達没。享年85歳)
・元和九年(1623)…51歳、徳川家光が三代将軍となる
・寛永三年(1626)…54歳、病気のため没す
□江の時代の流行歌謡は「室町小歌」 …一節切(ひとよぎり:短い尺八)による伴奏で歌った。しかし、現在まで引き継がれて歌われていないので節(ふし)などは不明。

2.『閑吟集』略説
・永正十五年(1518)成立の室町小歌(こうた)集。(編者不詳)
・狭義小歌の他、大和節、近江節、早歌(そうか)、吟詩句、放下(ほうか)の歌謡など諸歌謡311首を収録。
・鎌倉時代から室町時代にかけて、武家を中心に、貴族・僧侶などの間に流行した宴席の歌いもので、内容的には恋愛を中心として、当時の民衆の生活や感情を表現したものが多く、江戸歌謡の基礎ともなった。
■「閑吟集」の代表歌
「花の都の経緯(たてぬき)に、知らぬ道をも問へば迷わず、恋路など通ひ馴れても迷ふらん」(十八)
(対訳)「花の都の碁盤の目のような道は、人に聞いて行けば迷わないが、恋の道は何度通っても迷う」
「夢幻や、南無三宝(なむさんぽう)」(五三)
(対訳)「人生は夢幻なり、ゆえに、深く帰依(信仰)します」
・南無=帰依する ・三宝=仏・法・僧
「何せうぞ、くすんで、一期(いちご)は夢よ、ただ狂え」 (五五)
(対訳)「なんになるんだ。まじめくさったところで、どうせ、人の一生は夢のようだ。ただ、狂えばいい。(自分の好きな道を行けばよい)」
・戦国時代の人生観が歌われており、歌の歌詞は、その時代のキーワード。
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[日本における流行歌謡の2つの山]
今様雑芸(いまようぞうげい)⇒「梁塵秘抄」(平安時代末期に編まれた歌謡集。今様歌謡の集成で、編者は後白河法皇)
室町小歌(むろまちこうた)⇒「閑吟集」(室町時代〜江戸時代初期)
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3.『隆達節』略説
・和泉国堺の人、高三隆達(たかさぶ りゅうたつ)が歌い出した流行歌謡。室町小歌の系譜に属し、安土桃山時代から江戸時代初期まで巷間を彩った。全部で500首余が知られるが、恋歌が圧倒的に多い。[今年(2011年)は高三隆達の400年忌に当たります。]
・歌詞は短章ながら酒脱で機知に富み、人生の機微を感じさせる優れたものが多い。
隆達節の代表歌
○雨の降る夜の独り寝は、いづれ雨とも涙とも(二三・小歌)
○面白の春雨や、花の散らぬほど降れ(八一・草歌(春))
○添うたより添はぬ契りはなほ深い、添はで添はでと思ふほどに(二二六・小歌)
○人と契らば薄く契りて末遂げよ、紅葉葉を見よ、濃きは散るもの(三六三・小歌)
○人と契らば濃く契れ、薄き紅葉も散れば散るもの(三六四・小歌)
・伴奏は、人節切や扇拍子・小鼓などが用いられた。
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(%青点%) ”室町小歌”あれこれ
「歌は世につれ、世は歌につれ」・・・流行歌のはやりすたり、めまぐるしい移り変わりが、平安時代・室町時代・戦国時代・江戸時代、そして、現代にもあり、その歌詞には、その時代が反映されています。
小歌と小唄
・小歌⇒一節切の伴奏。室町時代に行われた庶民的な短詩型の歌謡。民間から出て上流にも流行し、「閑吟集」、「隆達小歌集」などに集録(広辞林より)。
・小唄⇒三味線の伴奏。①室町時代の小歌の流れを引く、近世の俗謡小曲の総称②江戸末期に、江戸端唄(はうた)から出た三味線唄。江戸小唄(広辞林より)。
★小野先生、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」の劇中歌謡を選定されています。
[第10回話…北庄城落城を前にして、柴田勝家軍はこの世との別れの宴を開きます。その悲しい宴席で当時の流行歌謡が歌われました。]
「花よ月よと 暮らせただ ほどはないもの うき世は」(隆達節)
(対訳:満開の桜が美しい、満月がきれいだと言って暮らすがよい。どうせ人生は短いものだから。…美しいものや楽しいものを求める人生の素晴らしさを歌い、その背景に人の命の儚(はかな)さを暗示しています)
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(%ノート%) 文学・文芸コースの次回講義(案内)
・日時:9月29日(木)午後1時半〜3時半
・演題: 「歌でたどる石上露子の恋」
・講師: 宮本正章先生(石上露子を語る集い代表)