(%紫点%) 後期講座(文学・文芸コース)の第4回の講義報告です。
・日時:10月13日(木)午後1時半〜3時半
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「万葉空間」(2) 〜万葉集の世界に遊びませんか〜
・講師: 辻 孝子 先生(カルチャー講師)
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.万葉集の季節感
(1)二十四節気
・「寒露」(かんろ)…10月9日。冷たい露が降りる頃。秋もいよいよ本番。
・「霜降」(そうこう)…10月24日。霜が降りはじめる頃。
(2)秋を詠んだ歌
★佐佐木信綱(1872−1963)歌人・国文学者
「行く秋の 大和の国の 薬師寺の 塔の上なる 一ひらの雲」 (薬師寺・東塔の歌)
・一首に「の」を6回も多用。「やまと」と「やくしじ」のヤ音を反復。→美しい声調をかもしだしている。
★会津八一(1881−1956)歌人・美術史家・書家 号:秋艸道人
「水煙の 天つ乙女が 衣手の ひまにも澄める 秋の空かな」(薬師寺・西塔の歌)

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2.柿本人麻呂
[前回に続いて、教材は.「近鉄ニュース10月号−歴史街道(人間往来)柿本人麻呂」(文・中西 進先生)を使用しています。]
【柿本人麻呂、山の辺の道を歌う】
☆(巻2-212) 「衾道(ふすまじ)の 引手の山に 妹(いも)を置きて 山路をいけば いけりともなし」
・歌意(引手の山に妻の屍を葬っておいて、山路を帰ってくる時の悲しみを詠む)
☆(巻4-501) 「未通女(おとめ)等が 袖(そで)布留山の 瑞垣(みずがき)の 久しき時ゆ 思ひきわれは」
・歌意(石上布留の社の瑞垣が長い間あるように、私はあなたを久しい間思っていました)
・布留山=天理市「石上神宮の山」 ・瑞垣=神域を限る常緑樹の垣

《石上(いそのかみ)・布留(ふる)を詠んだ歌》
・石上は、「石上布留」とも詠まれることが多い。「布留」や「降る」を導く枕詞の役割
☆(巻10-1927) 「石上布留の 神杉(かむすぎ)神(かむ)だにし 我やさらさら 恋にあひにける」(作者不詳)
(歌意)(石上の布留の神杉のように、年老いた私が、いまさら恋にとりつかれたよ)
☆(巻7-1353) 「石上布留の 早稲田(わさだ)を秀(ひ)でずとも 縄だに延(は)へよ 守りつつ居らむ」(作者不詳)
(歌意)(石上の布留にある早稲田の田が、まだ稲穂が出揃っていなくても、せめて、しめ縄だけでも張り巡らしてください。そうしたら、私が見守っていましょう)

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3.今日の万葉集・・・”大化の改新”
[万葉空間のレジュメ(古典コミック)…”蘇我氏の横暴と大化改新の始まり”の段の最終回]
●藤原鎌足と鏡王女
☆(巻2-92) 「秋山の 樹の下(このした)隠(がく)り 逝く水の われこそ益(ま)さめ 御思よりは」(鏡王女)−(歌意:秋山の木々の下を隠れ流れる川の水かさがましてゆくように、私の思いの方がまさっているでしょう。あなたが私を思ってくださるよりは)
☆(巻2-93) 「玉くしげ 覆(おほ)ふを安み 開けていなば 君が名があれど わが名し惜しも」 (鏡王女)−(歌意:お泊りになって、夜が明けてからお帰りになると、あなたの名はともかく、私の浮名の立つのは困ります)
☆(巻2-94) 「玉くしげ みむまど山の さなかずら さ寝(ね)ずはついひ ありかつましじ」 (藤原鎌足)

●大海人皇子と額田王
☆(巻1-7) 「秋の野の み草刈り葺き 宿れりし 宇治の京(みやこ)の 仮廬(かりいほ)し思ほゆ」 (額田女)(未詳?)−(歌意:秋の野の草を取って屋根を葺き、旅宿りしたあの宇治の都での仮の廬(いおり)が思われる)
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(%ノート%)文学・文芸コースの次回講義(案内)
・日時:10月20日(木)午後1時半〜3時半
・演題: 「いきいき朗読」 (絵本を読む)
・講師: 野村 康子先生(朗読講師)

*連絡事項…10月20日の「いきいき朗読」に出席の方は、以下の資料をご持参下さい。
 ①「発声練習」 ②詩集「求めない」 ③60歳のラブレター