(%紫点%) 2012年「前期講座(文学・文芸コース)」(3月〜7月:全11講座)の第1回の講義報告です。
・日時:平成24年3月1日(木)午後1時半〜3時45分
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 『徒然草』〜心と言葉〜
・講師:小野 恭靖(おの みつやす)先生(大阪教育大学教授)
***************************************************
*今日は、前期講座(文学・文芸コース)の開校日です。
【2012年 前期講座(文学・文芸コース)ご案内】
・期 間:3月〜7月
・開催日:木曜日、午後1時半〜3時半
・講義数:全11回講義
・講義内容:「徒然草」、「西鶴」、「西行法師」、「万葉集」(2講義)、
「谷崎潤一郎」、「村上春樹」、「短歌」、「俳諧」、「上方落語」、
「香道」の楽しいテーマの講義
・講師:11名
***************************************************
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
(%エンピツ%) 講義の内容
1.『徒然草」』概説
(1)著者の名前は?
・「吉田兼好」は今では使われない…我々、シニアは”吉田兼好”と学ぶ。
・現在では、「卜部兼好(うらべかねよし)」または「兼好法師(けんこうほうし)」が使われている
(2)生没年は確定していない
・1283年頃に生まれ、1353年頃没
・書かれたのは1331年から約20年間
・鎌倉時代後期
(3)題名「徒然草」は、兼好法師がつけたのではない
・江戸時代初期に「徒然草」の題名がつけられた
(4)兼好法師
・和歌の達人(為世門の和歌四天王)
・仏教・儒教・老荘思想などに高い教養
(5)徒然草の内容
・序段〜243段
・出家遁世した世捨て人の立場から、人間社会を洞察し、独特の自然観・恋愛観・人生哲学・処世訓を述べる
(6)日本三大随筆
・『徒然草』、『方丈記』(鴨長明)、『枕草子』(清少納言)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.兼好の自画像
○序段
【つれづれなるままに、日くらし硯(すずり)にむかひて、心にうつりゆくよしなし事を、そこはかとなく書きつくれば、あやしうこそものぐるほしけれ】
・『徒然草』という表題のいわれとなった有名な冒頭の短文
・(訳)(所作のないまま一日中、硯に向かって心に浮かんでは消えるとりとめの無い事を書き記している兼好の心は、することが無くて退屈している心ではなく、扱いにくい動き方をする心であり、妙に不思議にも気分が高揚してくることよ。)
○第十三段(読書のすすめ)
○第二四三段(仏について父と問答を交わす)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.冷静かつ皮肉な目
○第十一段(神無月のころ)
【神無月の比(ころ)、・・・ある山里に尋ね入る事侍りしに、遥かなる苔の細道をふみわけて、心細く住みなしたる庵(いおり)あり。・・・さすがに住む人のあればなるべし。・・・かなたの庭に、大きなる柑子(かうじ=みかん)の木の、枝もたわわになりたるがまわりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて、この木なからましかばと覚えしか。】
・(訳)(神無月のころ、はるかに続く苔むした細道を踏み分けていくと、ひっそりとした庵があり、閼伽棚(仏花を置く棚)に菊・紅葉が折って置いてあるのは、やはり人が住んでいるからであろう。こんなさびしいところでも住めるものだとしみじみ見ていると、庭の向こうに大きな蜜柑の木があり、その周りが厳重に囲ってある。少し興ざめして、この木がない方がどんなによかったかと思った。)
○第五十五段(仁和寺にある法師)
○第八十八段(ある者、小野道風の書ける)
【或者、小野道風の書ける和漢朗詠集とてもちたりけるを、ある人、「御相伝、浮ける事には侍らじなれども、四條大納言撰ばれたる物を、道風書かん事、時代やたがひ侍らん。覚束なくこそ」と言ひければ、「さ候へばこそ、世にありがたき物には侍りけり」とて、いよいよ秘蔵しけり。】
・和漢朗詠集【藤原公任(きんとう)=四條大納言(966年〜1041年)編集】、小野道風(894年〜966年)
・(訳)(四條大納言が編集したものを小野道風が書いたというのは、時代が間違っていませんか」と言ったところ、「それだからこそ、世にもめずらしい物です」と言って、ますます大切に所蔵したという)
○第八十九段(奥山に、猫またといふもの)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
4.人間味を求めて
○第三十九段(ある人、法然上人に)
【或人、法然上人に、「念仏の時、睡(ねぶり)におかされて行(ぎょう)を怠り侍る事、いかがして、この障(さは)りをやめ侍らん」と申しければ、「目のさめたらんほど、念仏し給へ」と答へられたりけり、いと尊(たふと)かりけり。又、「往生は、一定と思えば一定、不定と思へば不定なり」と言はれけり。これも尊し。又、「疑いながらも念仏すれば、往生す」とも言はれけり。これも尊し。】
・(訳)(ある人が、法然上人に対して、「念仏をとなえるとき、眠気におそわれて、行がおろそかになります。どうすれば、これを克服できるでしょうか」と伺うと、上人は「目の覚めているときに念仏をなさい」とお答えになった。また、「往生は、出来ると思えばできる。できないと思えばできない」。また、「疑ってもともかく念仏すれば往生する」ともいわれた。尊いことだ。
○第六十二段(延政門院いときなく)
○第八十四段(法顕三蔵の、天竺にわたりて)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
*高校生のころ、三大随筆の冒頭部分を覚えたものです。今日の小野先生の講義は、横道にそれた話(日本語における漢音と呉音、折句、文字あそび等)も楽しく、あっという間の2時間で、徒然草の面白さを知りました。
*前期講座(文学・文芸コース)の第1回講義は、遠方(堺市、和泉市、松原市、柏原市、八尾市、岸和田市、奈良県)からの参加者も多く、盛況でした。本当にありがとうございます。
****************************************
****************************************
(%ノート%)文学・文芸コースの次回講義(案内)
・日時:3月15日(火)午後1時半〜3時半
・演題: 「西鶴を読む〜京都(みやこ)に美女は多けれど〜」
・講師: 高橋 圭一 先生(大阪大谷大学教授)