(%緑点%)後期講座(歴史コース)の第4回講義の報告です。
・日時:10月7日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:誉田八幡宮と誉田御廟山古墳(現応神陵)
・講師:白石太一郎先生(近つ飛鳥博物館館長)
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1.誉田御廟山古墳の被葬者と誉田八幡宮
(1)喜田貞吉氏の御廟山古墳応神天皇説…大正初期に古墳の年代研究を試みた喜田氏は、応神天皇陵は被葬者を想定できる古墳の一つに数え、古墳の年代基準とされた。
(2)昭和50年代の誉田御廟山古墳の被葬者論…当時の須恵器の年代観にもとづいて五世紀中葉ないしそれ以降のものとされ、被葬者についても疑問が提起する研究者が多くなった。
(3)その後、須恵器の生産開始時期が四世紀末葉まで遡ることが明らかになり、あらためて応神天皇古墳や仁徳天皇陵古墳の造営年代やその被葬者の再検討が求められている。
2.誉田御廟山古墳と誉田八幡宮
*右の図は、宮内庁で作成された応神天皇陵古墳の測量図です。この図で、応神天皇陵の前方部から見て反対側の後円部の後ろの南側にあるのが誉田八幡宮。
○誉田八幡宮の創祀…11世紀中葉以前には成立していた。
・長久五年(1044):誉田御廟山陵の「大菩薩御舎利之処」として「法楽荘厳」のために三昧堂を建立したとある。さらに、室町期の『誉田宗廟縁起』には、御冷泉天皇(在位1044〜68)の時に宗廟を南一町余に造営したとある。
・永承元年(1046):河内守源頼信が源氏に対する加護を祈る告文を御廟山陵に奉ず(石清水文書)
○誉田八幡宮
・祭神は応神天皇、神功皇后、仲哀天皇
・八幡神は、応神天皇と母の神功皇后と応神妃仲津姫命を含めた三神をさすことが多く、神仏習合のとくに著しい神である。
◆11世紀中ごろには、応神天皇を祭神とする八幡宮がそのそばに勧進されていることからも、応神天皇陵古墳が応神天皇の御陵であると考えられていた。古墳の被葬者をまつる神社が陵畔にあるのはめずらしい。
・御陵の後円部を奥院とし、墳上に六角の殿舎を建立、六角形の土塀をめぐらし、神社の境内より参道を作り、濠に橋をかけ、その前に中門を設けたが文久3年(1863)にこれらを取払った。
*右の「河内名所図会」(江戸時代)…古墳の後円部の方から頂上の応神天皇御廟へ人々がお参りしている。幕末に至るまで、このような習俗があった。(現在では、応神陵には入れないが、毎年9月15日の秋祭りに、神輿が太鼓橋を渡って応神陵に渡御する儀式がおこなわれている。)
3.円筒埴輪・須恵器からみた応神陵古墳の年代観
・応神陵古墳の円筒埴輪の編年…ほぼ五世紀前半で収まる時期の所産であると考えられている。(*右の資料:「埴輪」欄ー第Ⅳ段階)
・須恵器…応神陵古墳では、墳丘内部の須恵器についての情報がないが、外堤外側の溝からTK73型式からON46型式ぐらいまでの古い須恵器が見つかっている。(畿内で古い段階の須恵器はTG232型式→TK73型式→TK216型式と変化。)
・最近の年輪年代法の成果によれば、TG232式の須恵器が389年に切られたヒノキの木製品と、TK73型式の須恵器が412年に切られたヒノキの木製品と共存していた。
**応神天皇の在位年代(*右の資料:「三国史記」と「日本書紀」の紀年の比較を参照)
・『日本書紀』の記載から応神天皇とほぼ同世代であったことの知られる百済の阿華王(あかおう)と腆支王(ときおう)の在位が『三国史記』によるとそれぞれ壬辰(392年)〜乙巳(405年)、乙巳〜庚申(430年)であるから、おそらく応神天皇の在位は四世紀末から五世紀の早い段階であったと思われる。→古墳の造営が、被葬者の後継者である次代の王が造営したものと考え、さらにその造営する期間などを考慮すると、考古学的に推定される応神天皇陵古墳の造営年代が五世紀の第Ⅰ四半期であるとほぼ一致する。
○**まとめ**
・最近では、古墳に立ち並べられている円筒埴輪の編年研究がすすみ、これら内部の調査できない陵墓指定の古墳についても、その造営年代の想定が可能となっている。
・四世紀末から五世紀前半の大阪平野の王墓級の巨大前方後円墳は、仲津山古墳→上石津ミサンザイ古墳→誉田御廟山古墳→大仙陵古墳と編年することが可能であり、古市→百舌鳥→古市→百舌鳥というように、両古墳群の間で交互に王墓が営まれた可能性が大きい。
・誉田御廟山古墳(応神天皇陵古墳)について、陵畔に誉田八幡宮が存在するという特別な条件から、被葬者が応神天皇と想定される。誉田御廟山古墳が応神天皇陵でよいとすると、これについで営まれた大仙陵古墳が、応神天皇についで即位したその子供の仁徳天皇の墓であるという蓋然性もまた少なくないということになる。
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(%エンピツ%) 【連絡事項】
*10月21日(火)の講義:午後1時〜3時。(会場:高野山櫻池院)(講師:近藤堯寛先生)
《毎月21日は、弘法大師ご入定の日で、奥の院が賑わいます》(近藤先生より)