「栄西のもたらしたもの」

(%緑点%)後期講座(歴史コース)(9月〜1月:全15回)の第12回講義の報告です。
・日時:12月23日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:栄西のもたらしたもの
・講師:加藤善朗先生(京都西山短期大学教授)
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**栄西の略歴**
・1141年〜1215年。鎌倉時代の僧。日本臨済宗の開祖とされる。「えいさい」あるいは「ようさい」ともいう。禅宗の字(あざな)は明庵(みょうあん)。
・備中(岡山県)吉備津神社の神官賀陽(かや)氏の出身。比叡山での修行ののち、入宋を二度重ねて、中国の禅宗を日本に伝え、禅宗の寺院建立《「聖福寺」(博多)・「建仁寺」(京都)・「寿福寺」(鎌倉)」》につとめる。
・主な著書:『興禅護国論』、『喫茶養生記』など
*右上は「明庵栄西像」です。(建仁寺両足院蔵)(ウィキペディアより)

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日本の3つの禅宗(*右の資料を参照)
現在、日本において禅宗は、臨済宗・曹洞宗・黄檗宗の三派がある。
・「臨済宗」は公案と呼ばれる課題を座禅や作務をしながら常に熟考し、師と問答してさとりに目覚める。そのため「看話禅」・「公案禅」と呼ばれる。日本の臨済宗は14派に分かれている。栄西を日本臨済宗の開祖とし、中国の虚庵懐敞(きあんえじょう)を師とする。また、白隠禅師を臨済宗中興の祖と呼ぶ。
・「曹洞宗」は、作務を尊び、ただひたすら座禅する姿が仏そのものであるとして、ただひたすら黙々と座禅する、そのために「黙照禅」と呼ばれる。道元を教義の祖、瑩山(けいざん)を宗門興隆の祖として両祖と呼ぶ。
・「黄檗宗」は、隠元隆琦(いんげんりゅうき)を祖(渡来僧)とし、中国・明朝様式の伽藍建築や中国風の精進料理や、お経を中国語の発音で唱えるのが特徴である。

栄西のもたらしたもの
◆栄西には、中国の宋との交流に基づく国際的教養人としての顔と、京都の朝廷や鎌倉幕府政権と提携する政治家としての顔が際立っており、その点で空海に生き方に近く、道元とは隔たっている。栄西の著作としては、『興禅護国論』と『喫茶養生記』が知られているが、前者は比叡山からの訴えにより禅宗の布教を停止された栄西が、その批判に反論し、禅によって国を興すという鎮護国家論であり、つまりは最澄や空海の伝統を復興するという主張。後者は、茶を喫することで心身医療の効果があがることを紹介したものである。この喫茶の慣習が広範な影響を及ぼすこととなった。
◆京都五山、鎌倉五山…我が国の禅宗のうち、臨済宗の寺院を格付けする制度
◆曹洞禅は道元の教えに従って、ただひたすらに座り無の姿のなりきる瞑想をめざしたが、臨済禅は宗祖臨済禅師の教えにもとづいて、言葉を介したイメージを喚起し、ものごとの真を問い詰める瞑想を目指す。.

達磨さんが中国禅宗の始祖
一般に、禅はインドから中国に渡った達磨大師を始祖とする。達磨は、北魏の嵩山(すうざん)の少林寺に入って、そこの石窟で壁に向かって終日座禅を行うこと9年に及んだ。(達磨の面壁九年)。この少林寺でのちに第二祖となる慧可(えか)に会ったといわれ、慧可が達磨大師に入門を求めて顧みられず、道を求める心が真実であることを示すために、自らの左腕を切り落とし、達磨に差し出した。誠の決意をみた達磨は入門を許した故事(雪中断臂)がある。(禅宗の修行道場では、この故事にならい、新参の修行僧は道場の玄関で入門を許されるまで数日間足止めされる.習慣が現在でも続いている。)
*右上のスクリーンの絵は、「慧可断臂図」(雪舟筆)。…虚空をみつめ何事かを考えるような不動の達磨と、それを見つめる慧可。慧可の右手には、切り落とした朱色の左腕がある。
*(注)「玄関」は禅語…禅宗で「玄関」は「玄妙なる関所 真理への関門」という意味で、ここより奥は、仏陀・祖師・和尚の教えによって深遠なる真理へと通じるのである。

臨済宗の座禅の作法
・「調身」(ちょうしん):まず、姿勢を整える。…「半跏趺坐」(はんかふざ)あるいは「結跏趺坐」(けっかふざ)で、手は、左手で右手を覆って軽く握り、股の上部に軽く載せます。背筋を伸ばし顎を引き、頭が前後左右に傾かないようにします。眼は半眼にして1m程先を見る。肩の力を抜いて重心を安定させ、身体をリラックスさせることが大事です。
・「調息」(ちょうそく):次に息を調えます。…呼吸はゆっくりと静かに腹式呼吸を繰り返します。吐く息を静かにゆっくりと、長々と出すことが大切です。
・「調心」(ちょうしん):最後に心を調えます。…最初は出入りの息を数える「数息観(すうそくかん)」を行います。一呼吸を一つとし、息を出すときに「ひとつ、ふたつ、みっつ・・・」と心の中で数えます。十まで数えたら、また、一呼吸し、繰り返します。数息観を繰り返すことで、精神を集中統一させます。
(*右上の写真は、椅子に浅く腰掛けて、座禅の作法をしているところです。いつもの受講の姿勢と違って、みなさん、背筋がシャッキとしています。)