(%紫点%)H27年後期講座(文学・文芸コース)(9月〜1月:全13回)の第2回講義の報告です。
・日時:9月10日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:絵画を観る〜セザンヌ〜
・講師・川田 都樹子先生(甲南大学教授)
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1.ポール・セザンヌ(1839〜1906年) 後期印象派?
・1863年:マネ《草上の昼食》…当時は、神話にもとづいて女性ヌードを描いていた。マネは同時代に生きる女性のヌードを描く。→しかし、当時の人々に大きな衝撃を与えた。セザンヌに影響を与えたマネ。
・1874年:第1回印象派展(パリ)。サロンが保守的であることに反発して開かれたグループ展(モネ、セザンヌ、ルノアール、ピサロ、ドガなど参加)。モネの作品《印象 日の出》によって、「印象派展」と呼ばれた。
・1880年:セザンヌは印象派から離脱して独自の道を(南フランスの故郷で孤独な制作に没入)
・1910年:「マネとPost-Impressionists」展(マネ、セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャンなど)…セザンヌは後期印象派ではない。→ポスト(後の)印象派を「後期印象派」という誤記が定着。
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○セザンヌの絵画を観る
(1)《女とコーヒーポット》(婦人とコーヒー沸かし)(1890−1895年頃)
セザンヌは、多視点から対象を見て描いている。
・画面が斜めに描かれているが、バランスが取れている。
・どんと見えるテーブル。どしっと座った婦人。大きな手。…安定感がある
・右側のテーブルは真上から見下ろしているように描いてある。
・コーヒーカップは上からの視点で描き、スプーンとコーヒー沸かしは正面から見て描いてある。
・婦人についてもそれぞの部分の視点が微妙に異なる。(椅子に掛けているのだが、襞の折れ曲がった線がなければ、殆んど立っているよう見える。)
■セザンヌの絵画手法
・1枚の絵に複数の視点を取り入れる。(古典的な西洋絵画の根幹をなす、単一視点による遠近法の否定)
・自然を円筒形・球形・円錐形などの幾何学的な立体に分解した上で、再構成する。
・水平線に平行する線はひろがり、垂直の線は深さを与える。
・われわれ人間にとって、自然は平面においてよりも深さにおいて存在する。そのため、赤と黄で示される光の振動の中に、空気を感じさせるために必要なだけの青系統の色を導入する必要が生じます。
・斜めに描くといわれた。
(2) 《果物籠のある静物》(1888-1890年)
・壺の口や、テーブルは上から見ているのに対し、籠や果物は側面から見ている。
・構図の全体が、左側に傾いて見え、大きな籠は空間に浮かんでいるように見えるが、右側の空間に僅かに見えるテーブルの足のようなものがこれを支えて全体に安定感をもたらしている。
*いろいろな物をただ寄せ集めただけに見えるが、実は入念に考え抜かれた、バランスの取れた構図で、どの物体も作品内部の均衡にとって必要な大きさを備えている。(セザンヌが意図的に籠や壺や果物を配置したものであろう)
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あとがき
・当時の絵画は、写実的に描くことを基本としていた。セザンヌは、見えている素材を、自分の思うように各々の部分をデフォルメしている。伝統的な一点透視図法ではなく、動き回って、多視点から見たものを1枚のキャンパスに描いている。
・セザンヌの手法は、次世代のピカソなどの抽象絵画に影響を与えている。
・絵画の講義は、今回が初めて。…今後が楽しみです。