「はじめての能」−基礎から学ぶ

(%紫点%)後期講座(文学・文芸コース)(9月〜1月:全13回)の第5回講義の報告です。
・日時:10月15日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:はじめての能−基礎から学ぶ
・講師:北見 真智子先生(大阪音楽大学講師)
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(%エンピツ%)講義の内容
能とは・・・
古典的題材を取り上げ、幽玄美を第一とする歌舞劇
・謡(うたい)(声楽)と囃子(器楽)にのって、舞踊的な所作でスト−リーを進める。…言葉+舞踊+物語=ミュージカルに近い。
・屋根のある能楽堂、面(おもて)、脚本、音楽、演技に独自の様式を備える。
・南北朝時代から室町時代初期にかけて発達、江戸時代中期にほぼ様式の完成をみる。…南北朝時代、大和猿楽四座(金春、金剛、宝生、観世の基)。→観阿弥と世阿弥。1374年(応安7)足利義満が能を見学。→能好きな秀吉→能に親しんだ家康。幕府の保護を受け式楽(今日の能の様式がほぼ完成)。700年近く引き継がれている演劇は世界でも例がない。


能楽堂…能が演じられる空間
能はもともと屋外で演じられる芸能で、社寺の拝殿や舞楽の舞台を流用し、むしろや板を敷いて見学していた。能楽堂と呼ばれる建物の中にさらに屋根をついた舞台がある様式は明治以降のもの。
・能舞台は檜造りで、三間(約6m)四方の本舞台、舞台正面奥の鏡板には見事な老松が描かれている。…後座、地謡座、橋掛り、鏡の間 などから構成。

能を上演する人々
登場人物を演じる役「シテ方、ワキ方、狂言方」、合唱を担当する役「シテ方」、楽器を演奏する「囃子方」が登場する。
①シテ方…能の「シテ」(主人公)を担当するのがシテ方。斉唱団として能のバックコーラスを担当する「地謡」もシテ方の担当。また、舞台左奥の後見座から能の進行を見守っている「後見」も、シテ方の任務(後見は、シテが舞台で倒れるなどの事故のある時は、その能を舞い継ぐ責任を持つ)。
②ワキ方…シテと応対し、仕手の演技を引き出す相手役。(能はワキの登場から始まる。[旅の僧(ワキ)がある場所に通りかかり、そこで里の男(女)と言葉を交わし、その土地のゆかりの物語を聞いているうち、男(女)は自分こそその物語の主人公であると正体を明かして消えてしまう]。
③狂言方…狂言方は独立した狂言(本狂言)を演じるだけではなく、「アイ」(前場と後場をつなぐ役目の間(あい)狂言を担当するのも狂言方」。
④囃子方…能の楽器演奏を担当するのが囃子方。笛、小鼓、大鼓、太鼓の四つからなる。

能の流派
現在、能・狂言では、7つの役籍でシテ方−5流派、ワキ方−3流派など全部で24の流儀がある。それぞれに宗家(家元)がいる。…これらの流儀は、詞章(テキスト)や謡い方・所作・装束・演出が、そして囃子方は演奏法の違いがみられる。他の役に代わることや兼業することはなく、分業である。…さまざまな組み合わせが考えられ、単純計算すると右のように3600通りの組み合わせが可能。

能の音楽…謡(うたい)と囃子
能は謡や舞によって物語が進行する歌舞劇です。謡とは能の声楽のことで登場人物役、斉唱役が担当。能の詞章(テキスト)にはコトバ(セリフ)の部分と謡う部分がある。
コトバの部分は音楽的に作曲されていないが、特定の抑揚をつけて謡われる。一方、謡の部分にはフシがつけられていて、勇壮に謡う強吟と柔らかく優美に謡う弱吟に分けられる。
強吟と弱吟…謡は息扱いによって、強吟(つよぎん)と弱吟(よわぎん)の二種類の謡い方に分かれる(場面や用途に応じて使い分ける)。「強吟」は強い息遣いによってナビキを効かせる(ビブラートをかけて謡う)。≪厳粛さ、豪壮さ、颯爽とした雰囲気を表すための謡い方。神体や鬼神の登場する作品、修羅場の合戦場面などに用いられる≫。「弱吟」は比較的柔らかな息扱いで、繊細な情感を表現するのに向いていることから、優美な女性の作品などで多く用いられる。
謡のリズム−三通りのリズム型がある。「平(ひら)ノリ」、「中(ちゅう)ノリ」、「大(おお)ノリ」…謡のリズムは八拍子の繰り返しを基本とし、この八拍を1(ひと)クサリと呼ぶ。・・・以下(省略)。
(注)謡による表現は実に多様。荘重な謡い方で神々しい雰囲気をかもしたり、しみじみとした曲調でシテの感慨を表現したり、テンポの速い謡い方で戦闘場面を表したりする。
能の囃子…能では笛(能管(のうかん))・小鼓・大鼓(おおつづみ)・太鼓の4つの楽器を用いて舞台音楽が演奏される。シンプルな楽団ですが、音楽的にさまざまな豊かな表現をします。シテは謡だけでなく、囃子の演奏だけに合わせても舞を舞う。囃子は効果音の役割もする(重々しい囃子で重要な場であることを伝えたり、急調な囃子で事態の急変を知らせる)。


夢幻能(むげんのう)の作られ方
二場にわかれる。前場(まえば)は亡霊が人間の姿で現れ、後(あとば)場ではその亡霊の本体を現して、昔語りや舞を見せる。

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**あとがき**
・この文学コースの参加者で「能楽を観たことのある人」は、80%を超えています。しかし、能は約束事が多くて観るのが難しいという声が多い。ということで、予備知識をつけるため、「はじめての能ー基礎から学ぶ」講座をスタートしました。今後、数回シリーズで行う予定です。