「弘法大師の教え」

(%緑点%)後期講座(歴史コース)の第8回講義の報告です。
・日時:11月17日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:弘法大師の教え
・講師:近藤堯寛先生(高野山・櫻池院住職)
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■「弘法大師」空海の足跡と思想を学ぶ(4回講義)-2015年は、高野山開創1200年。
*右上の絵は「御影(弘法)大師」静慈圓・画。[『弘法大師を歩く』(近藤堯寛著)より]
●第1回(2014年4月):「弘法大師の文芸」①〜文芸・作詩〜
・空海は密教書だけでなく、文才に優れ、多くの詩文を作る。
・著作−『性霊集』(弟子の真済が編纂)、『文鏡秘府論』、『文筆眼心抄』など。
○第2回(2014年10月):「弘法大師の文芸」②〜書について〜(会場:高野山櫻池院)
・空海は、嵯峨天皇、橘逸勢とともに日本三筆の一人。「五筆和尚」(中国・順宗皇帝より称号)。
・「風信帖」(王羲之の書風)、「聾瞽指帰」、「益田池碑銘」など
○第3回(2015年7月):「弘法大師入唐の風景」(会場:高野山報恩院)
・空海31歳の時、遣唐使として唐に留学。恵果阿闍梨(中国の密教僧)より真言密教の伝授。
・『御請来目録』


(%エンピツ%)講義の内容
○第4回:「弘法大師の教え」
◆「即身成仏」(抜粋)
・真言密教では、人はだれでも現世において今の肉体をもったまま仏になれると説く。
(注)一般仏教(顕教)では、人が悟りを開いて仏になるには、何度も生まれ変わりながら修業しなければならないと説く。
・「即身成仏の四字を歎ず 即ち是の四字に無辺の議を含ぜり 一切の仏法はこの一句を出でず」(即身成仏義)
・「加持とは、如来の大悲と衆生の信心とをあらわす 仏日の影 衆生の心水を現ずるを加といい 行者の心水よく仏日を感ずるを持と名づく」(即身成仏義)
(意訳)(加持とは、仏(如来)から照らされる大悲の光が、人々の心の水に映るのを加と言い、仏の教えを信じて、人々がその光を感じとるのを持という。)
(注)加持とは、仏さまと人が応じあう。お互いに近寄ってくる。相歩み寄ることである。


◆「草木成仏」(抜粋)
・「草木また成ず 何(いか)に況や有情をや」(吽字義)
(意訳)(草も木も成仏するのである。どうして人間が成仏しないことがあるのだろうか)
(注)空海にとって自然は真理の源泉。人間よりも自然のほうが成仏の条件を満たしている。草木成仏説。

◆「空と海と山」(抜粋)
・「閑山独り座す草堂の暁 三宝の声一鳥に聞く 一鳥声あり人心あり 声心雲水ともに了了たり」(性霊集10・後夜に仏法僧を聞く)
(意訳)(閑寂な小堂にひとり座っていると、明け方に仏法僧の名を鳴く一羽の鳥の声を聞く。一羽の鳥には仏の心がある。鳥の声も、人の心も、空の雲も、山の水も、渾然一体として溶け合っている。)
(注)空海は、自然に対する熱烈な憧憬と、自然との一体化への希求に満ちたすばらしさを伝えている。


◆仏の種を発芽させよう
蓮を観じて自浄を知り 菓を見て心徳を覚る」(般若心経秘鍵)
(意訳)(蓮を観察して、蓮の清らかさを知ることによって、自分の心が清らかであることを知ってほしい。また、蓮の熟した実を見て、自分の心の中にも徳の種が宿されていることに気付いてほしい)
・「即身成仏」の教え。生きている間に、私は仏に成るという自覚をもって日々の生活を営みます。自覚があればこそ修行に励みがつく。成仏という目標がなければ修業は無意味になってしまう。
・『般若心経秘鍵』(空海)…空海の般若心経に対する解釈を集約。空海は般若心経を「すべての苦しみからのがれるための最高の真言(呪文)」ととらえる。
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**あとがき**
・2013年9月、書店で手にした新刊『弘法大使を歩く』(近藤堯寛著 宝島社)をもとに、手紙で講師を依頼したところ、快諾。2015年の高野山開創1200年を記念して4回シリーズの講義を企画し、会場も2回、高野山(櫻池院、報恩院)で開催。
・近藤堯寛先生は、高野山櫻池院(ようちいん)の住職。櫻池院は1000年近い歴史がある。武田信玄公の位牌があり、皇室と戦国武将をまつる菩提寺は珍しい。…また、櫻池院は、昨年9月26日に「明神様」(高野山では弘法大師とともに、土地の神様である明神様をお祀りされている)をお迎えして、一年間お祀りのお勤め。一年間はお燈明とお香を絶やしてはならず、一日一座のお勤め。近藤住職は高野山から一年間、下山できない。…行(ぎょう)を終えて、今日(11月17日)は富田林市(高野山から車で約1時間半)で開催。