(%紫点%)後期講座(文学・文芸コース)の第10回講義の報告です。
・日時:12月24日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(3階会議室)(富田林市)
・演題:国宝『源氏物語絵巻』を読み解く〜横笛巻を中心として〜
・講師:浅尾広良先生(大阪大谷大学教授)
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◆国宝『源氏物語絵巻』を読み解く(H25年3月にスタートして、今回で第6回です。)
第1回(H25年3月)−蓬生巻
第2回(H25年9月)−関谷巻
第3回(H26年3月)−柏木(一)
第4回(H26年9月)−柏木(二)
第5回(H27年4月)−柏木(三)
◆前回までの復習(若菜上から柏木巻までのあらすじ)
【若菜上】…朱雀院は母のない女三宮の行く末を気づかって、弟である光源氏に嫁がせる。光源氏は女三宮があまりにも幼く、興味を失せる。一方、柏木は女三宮のことが諦めきれない。六条院で行われた蹴鞠の日に、柏木は女三宮を垣間見てしまう。
【若菜下】…柏木は、女三宮への思いを募らせ、とうとう密通に至ってしまう。ところが、柏木の手紙が光源氏に発見され、二人の密通は光源氏の知るところとなる。光源氏に皮肉を言われた柏木は病床の人になる。
【柏木】…女三宮は柏木の子(薫・男子)を出産(出産後、女三宮は出家)。そのことを知った柏木は衰弱し、友人であり光源氏の息子である夕霧に後事を託して死去。光源氏は残された若宮(薫)の五十日の祝の日、複雑な思いで我が子を抱く。
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(%エンピツ%)講義の内容
○ 「横笛巻」
*右は、現存する『源氏物語絵巻』横笛巻で、かなり色は褪せています。
●夕霧、一条宮を訪れ、柏木遺愛の笛を託される。
(要約)「ある秋の夕暮れ、夕霧は一条宮(故柏木の邸)を訪れ、御息所と故柏木の追憶をしみじみ語った。この日、夕霧は落葉の宮と「想夫恋(そうふれん)」を合奏して、帰りがけに、御息所から柏木遺愛の笛を託される。」
・夕霧…柏木の友人であり光源氏の息子
・落葉の宮(柏木の未亡人)…柏木から落葉の宮の世話を託されていた夕霧は、落葉の宮をしばしば訪れ、次第に惹かれていく夕霧。
・御息所(みやすどころ)…落葉の宮の母
●夕霧帰邸。夕霧の夢に柏木が現れ、願いを語る。
(要約)「笛を託された夕霧は、自宅に持ち帰ったところ、夢に柏木が現れ、願いを語る。【この笛はあなたに伝えたいとは思っていない。別に伝えたい人がいると告げた(自分の子供・薫に伝授したい)。】−翌日、夕霧は笛を持参し、光源氏を訪ねて昨夜の夢を語ると、その笛は自分で預かるべきものだと光源氏は答えた。隠された真相(柏木と女三宮の一件)について探りを入れたが、光源氏は話をそらした。」
○国宝『源氏物語絵巻』〜横笛巻〜
右の絵巻は、「横笛巻」を復元模写したものです。
・右の場面「夕霧の夢枕に柏木現る。妻の雲居雁(くもいのかり)の怨み言」…夕霧が笛を託されて帰邸して寝入ると、夢に柏木の現れ、〝その笛は子孫に伝えたいと告げる”。夕霧は尋ねようとすると、子どもが目覚めて泣きだしてしまい、雲居雁は乳は出ないのに、気休めに子どもをあやすのであった。そして、雲居雁は夜間外出の過ぎる夕霧に皮肉を言う(落葉の宮をしきりに見舞う夫の態度に、人の告げ口もあって、妻は不審を抱いているのだ)。
・中央の帷子(かたびら)の陰に夕霧がおり、その奥で雲居雁が胸を広げて子どもをあやしている。
・もとの絵では剥落していた女房の顔が復元されている。
・装束や帷子(かたびら)の文様までしっかりと表現されている。
・左端の襖が少し空いているのは、柏木の亡霊の出入りを意味しているのか。