『平家物語を読む』〜都を去る平家〜

・日時:7月14日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:四重田 陽美先生(大阪大谷大学教授)
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**「平家物語を読む」**
四重田先生の「平家物語を読む」は、2011年1月に始まり、今回で12回目となります。
【平家物語の概要】
・成立…平家滅亡から40〜50年後(1230年頃)成立。作者未詳。
・構成…全12巻。平家の栄華と没落を描いた戦記物語。
【略年表】
・1118年(元永元):平清盛、忠盛の嫡男として生まれる。
・1132年(長承元):忠盛昇殿。「殿上の闇討ち」
・1153年(仁平三):清盛(36歳)、平家の棟梁(家督を継ぐ)
・1156年(保元元):保元の乱。 1156年(平治元):平治の乱(平氏政権誕生)
・1167年(仁安ニ):清盛(50歳)太政大臣。1168年:清盛出家。
・1177年(治承元):鹿谷事件発覚。(藤原成親の謀反)。
・1180年(治承四):(4月)以仁王、平家追討の令旨。(8月)頼朝、伊豆に挙兵。(9月)木曽義仲挙兵。
・1181年(治承五):清盛逝去(60歳)。
・1183年(寿永二):(5月)倶利伽羅合戦。(7月)平家一門、都を出る(西国落ち)。

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(%エンピツ%)講義の内容−巻第七「都を去る平家」
「主上都落」(しゆしやうのみやこおち)
(要約)(倶利伽羅峠の合戦で平家軍を破った木曽義仲は、比叡山の協力も取りつけ、一気に都に迫る)。寿永二年(1183)、7月24日、宗盛(清盛の次男。平家の棟梁)は、建礼門院(宗盛の妹で安徳天皇の母)のいる六波羅に参って、「後白河法皇も安徳帝もお連れして、西国へ落ちのびましょう」と伝える。…平家の都落ちを知った後白河法皇は、ひそかに御所を出て、都の北にある鞍馬に逃れた。宗盛は急いで、法皇の御所へ駆けつけてみると、本当に法皇はお見えにならない。法皇の突然の失踪で、京全体の騒ぎはひととおりではない。…安徳天皇(6歳)と母の建礼門院は御輿に乗られ、三種の神器(天皇家に伝わる鏡・勾玉・剣)を取りそろえて、あわただしく出発する。…摂政の藤原基通は、ともに出発したが、行列から外れ、都へ引返して、知足院に逃げ込んだ。」

「維盛都落」 (これもりのみやこおち)
(要約)「維盛(重盛の長男)は、以前から覚悟していたが、いざとなると悲しかった。奥方は、《鹿谷事件の藤原成親(なりちか)の娘》で、美しい人(…桃の花が露にぬれて咲き出したようなお顔、風に吹かれる柳のような髪、ほかにこれほどの人がいらっしゃるだろうとも思われない程の美しさ)で、2人の間には、10歳の男子と6歳の女子がいる。維盛は、妻子を連れていくことはあきらめ、都に残すことにした。維盛は、〈自分はお連れしたいが途中で敵が待っている。たとえ自分が討死したと聞いても、出家などなさらにように。再婚して、長生きして、幼い子供を育ててほしい〉。奥方は返事もなさらず、衣を引きかぶって泣き伏していらっしゃる。…維盛は、切なく、なかなか出発できない。思いのほか後れてしまった。…維盛は、斎藤五・齋藤六という兄弟に妻子の面倒と警護を託し、出発した。泣き叫ぶ、妻子の声は、いつまでも耳の底に留まる。」…「都を落ち行く平家は、六波羅、小松殿などをはじめ、一門の公卿・殿上人の家々二十数ヵ所、京白河の四、五万軒の民家に火をかけて、皆焼き払う。」

「忠度都落」(ただのりのみやこおち)
(概略)平家の人々は、あわただしく別れを告げ、都を落ちていく。その中で、平忠度(ただのり)(清盛の弟で和歌はうまい)は引き返し、和歌の師の藤原俊成(しゅんぜい)と対面し、自作の和歌を俊成に託して未練を断ち切る。のちに俊成が編集した『千載和歌集』に「詠み人知らず」として収められた。
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**あとがき**
・寿永二年(1183年)7月25日、平家一門(宗盛、維盛、忠度、経正ら)、安徳天皇、建礼門院とともに西国落ち。
・同行するはずの後白河法皇は、御所を抜け出し鞍馬に逃げる。→この時の平家の気持ちを、「かく打ち捨てさせ給ひぬれば、たのむ木の本(このもと)に雨のたまらぬ心地ぞせられける」(意訳:雨宿りができると頼りにした木の下で、雨が止められないような気持になった)と記している。
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平成28年前期講座(文学・文芸コース)(3月〜7月:全13回講義)は、7月14日で終了しました。
講義の先生並びに受講生・聴講生の皆様に、厚く御礼申し上げます。
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