映画を観る−高倉健『遥かなる山の呼び声』(山田洋次監督)

・日時:10月13日(木)午後1時半〜3時40分
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:上倉庸敬先生(大阪大学名誉教授)
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**映画『遥かなる山の呼び声』**
山田洋次監督 1980年(昭和55年) 松竹映画・上映時間124分(シネマスコープ)。
出演=高倉健(田島耕作)、倍賞千恵子(風見民子)、吉岡秀隆(風見武志)、ハナ肇(虻田太郎)、鈴木瑞穂(田島駿一郎)他。
・タイトル『遥かなる山の呼び声』は、西部劇『シェーン』の主題曲名と同じ。(外国のものを日本風土の中におきかえるのも、山田作品の一つの特徴)
・北海道・中標津(なかしべつ)の原野に展開する四季を織り込んで、「シェーン」を基にした『幸福の黄色いハンカチ』に続く、高倉健・倍賞千恵子と組んだ愛の物語。


○『遥かなる山の呼び声』あらすじ
◆北海道−さい果ての春
「北海道東部の中標津。風見民子(倍賞千恵子)は、息子の武志を育てながら牛飼いをしていた(民子は未亡人)。ある嵐の日、民子のもとを一人の男(高倉健)が突然訪れ、雨風しのぎにどこでもいいので泊めてほしい懇願。民子は男を物置小屋に泊まらせる。…男はしばらくして立ち去る。」

◆美しくも短い−北国の夏
「春に一度来て、手伝った男(高倉健=田島耕作)が、夏のある日、再び民子のもとを訪れ、働く(農作業)ようになる。当初は民子は田島に警戒感を隠さなかった。…ある日、民子に惚れている虻田(ハナ肇)と決闘して撃退し、逆に虻田から兄貴と慕われるようになる。…民子が農場で作業中に腰を痛めて入院している間に、武志は田島にすっかりなついてしまう。民子はだんだん好意を寄せるようになる。」

◆秋−収穫と祭りの季節
「秋、田島はこの地で暮らすことを決意する。しかし、草競馬で田島が一着をとった日に、刑事がやってきた。田島は刑事の質問にシラを切るが、その夜、民子に過去を告白。《2年前、高利の金を借りて女房が首をくくって自殺した葬式の場で、妻を悪し様に言った高利貸を誤って殴り殺してしまい、警察に追われている》。…その夜、牛が急病になり、徹夜で看病した翌朝、農場のそばにパトカーがやってきて、田島はみずから警察に出頭していく。武志は「おじちゃん、どこへ行くの?」と泣きながら追いかける。」

◆冬−ラストシーン(網走への列車の中で)
「田島に傷害致死として2年以上4年以下の刑が確定。網走刑務所に護送される車中のラストシーン。…美幌駅で、虻田と民子は田島の座る席まで来て、《民子が牧場を手放し、田島の出所を待つために、町に出た》という会話を、田島に聞かせる。…そして、車中で、民子は黄色いハンカチを田島に渡し、田島は涙をぬぐう。」

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**あとがき**(上倉先生の講義から抜粋)
・この作品は、美しい自然の中で、芝居をさせている(『シェーン』との背景と同じ)。
・映画『遥かなる山の呼び声』の見どころ
①思いもかけない演出(もとの作品を生かしている)…『シェーン』の「戻ってきて、シェーン」。『無法松の一生』の泣いた思い出、運動会の応援。
②高倉健「スターの演技」… 「受け」ひとつで120分の映画を支えきる(だまってすわって、アップ一つで終わることのできる演技)。男が泣いて終わるシーン「上手に泣く」(日本における男性主人公の伝統を身をもって生きる)。