2016年の米大統領選挙〜ホワイトハウスへの道と今後のアメリカの方向〜

・日時:11月15日(火)am10時〜12時
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:蓑原俊洋先生(神戸大学教授)
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2016年米大統領選挙
アメリカでは、大統領職であるトップのリーダーシップが変わると、国家のあり方と方向性がガラリと変化する。それは、大統領の権限が強力であるのと、大統領の就任と共に2000人前後の上級官僚や高官が一斉に変わることである。
米大統領選挙
・四年に一度の政治決戦。国の将来を賭して激しい選挙戦を1年以上にわたって繰り広げる。
・「間接投票」…複雑な選挙制度で、直接投票でなく選挙人を仲介する間接投票によって選出されている。
・全米で538人の「選挙人」…州の人口などに応じて割り当てられる。大統領選を制するのは、270人(過半数)を獲得しなければならない。
(注)カリフォルニア州(選挙人55票)(人口3700万人)、ワイオミング州(3票)(人口56万人)。→州の最多と最小の人口格差はなんと3700万人の開きがあるが、選挙人の票差は52票なのである。…大統領選の主戦場はカリフォルニアなどの巨大な州ではなくて、勝利する政党が選挙ごとに入れ替わる比較的小さな州となっている。
選挙結果(2016年11月)
・共和党のドナルド・トランプ氏が、民主党のヒラリー・クリントン氏を破り、当選した。
・選挙人獲得数:「トランプ」290⇔「ヒラリー」232。(ミシガン州の16のみが未確票)
・一般投票数では、ヒラリーが勝っている。→「トランプ」(47.3%)対「ヒラリー」(47.8%)
(今まで、一般投票では負けたものの、選挙人票で勝った大統領は、44人中4人いる。今回2016年が一般投票の差が最大。)


勝者の顔 Donald John Trump (1946年生まれ:70歳)
・父の不動産業を継いだ(最初は失敗の連続)。カジノの経営。公職経験なし。政治・軍事共に全くの素人。
・2000年に改革党の大統領候補として出馬するも、すぐに撤退する。(大政党でないとだめだと思い、共和党に入党)。
・選挙スローガン「Make America Great Again」(米国を再び偉大にしよう)
・トランプ氏の基本的な考え方…「ものを考えるならでかく考えよう!」「俺はすべてのことに勝利する」−①でかく考える ②レバレッジ(少ない投資で多額の利益)を駆使する ③反撃する。
・トランプ氏の本音の言葉は、差別や偏見に満ちた暴言と紙一重。しかし、既成政治家が決して語らないトランプの言葉が、「民主・共和両党が無視してきた人たち」を堀り起こした。
・◆敗者の顔 Hillary Clinton(1947年生まれ:69歳)
・経歴…弁護士、大統領夫人(ファーストレディー)、上院議員、国務長官
・選挙スローガン「Stronger Together」(共に立ち、より強く)
・ガラスの天井…政界では性差が人種以上に進出を阻んできた。


選挙を決定づけた争点
・オバマの8年間のレガシー(遺産)の完全な否定
オバマ政権の消極的な対外政策に不満。自国の誇りを持たせる強いリーダーを求める。
・インフラの大幅投資
・保護主義への回帰(高関税政策、反自由貿易)など。
**トランプは 破壊者。→つぶしてから、作り直せばよい。
勝利の分析
・早く変わりすぎたアメリカの危機感=保守回帰
・現在、アメリカは経済は良いが、バラツキがあった。。
・「見えない山が動いた」…各州の世論調査、出口調査では、ヒラリーが勝っていた。
・差別意識(人種・ジェンダーなど)…「ガラスの天井」
**【得票率】DT(トランプ)、HC(ヒラリー)
男性…DT53%、HC41%
白人女性…DT53%、HC43%
高卒以下の白人…DT67%、HC28%
変化を求める層…DT83%、HC14%(ヒラリーは、オバマの延長とみられた)
共和党支持者…DT90%を支持(実態なき反トランプ運動)

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今後の世界と日米関係
・米国リスク…America First(国内に関心。対外問題への関心は下降)
・世界貿易…ブロック経済の再来?(TPP、NAFTA、,BREXIT)
・中国リスク…人民元ブロックの形成。あと、10年・20年したら中国の時代か。
・ドイツとフランスの次の政治リーダーシップが鍵。
◆では日本は?
・日本人は日本のことばかり。豊かになったが、世界の評価は?。
・日米同盟−「アメリカだけが日本のために血を流す」
・日本は自前では守れない。(今の戦力では、せいぜい1週間がよいところ)
・これからは、きわめて外交・安全が大事。
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**あとがき**
・既存の政治やメディアは、かつての信頼感はない。政府は貧富の差の拡大を放置してきた。主流メディアが民主党に寄りすぎていた。(CNNによる選挙前予想は、ヒラリーの勝率90%)。それでも、トランプの支持率はクリントンとほぼ互角であった。日本のメディアは、アメリカのメディアの論調を伝えるだけであった。
・トランプ氏は大統領になれば現実主義になるのか。不透明な時代が来る。
・蓑原先生は、11月初めにアメリカに行って確認。「ヒラリーが勝つ。トランプが勝つのは1/10の確率」。…「見事に外れてしまった。本当に悲しかった。世界がどこに向かうのか。」
**蓑原俊洋先生は、1971年生まれ。米カリフォルニア大学卒業。神戸大学大学院博士課程修了。博士号(政治学)。現在、神戸大学教授。