・日時:7月13日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師・四重田陽美先生(大阪大谷大学教授)
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**『平家物語』の概要**
・成立:平家滅亡(1185年)から40〜50年後(1230年頃)成立。作者未詳。
・構成:全12巻。平家の栄華と没落を描いた戦記物語。
・冒頭句:「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす。」
・四重田先生の講義『平家物語を読む』は、2011年に始まって、今回で14回目。前回は、「木曽義仲の横暴と最期」。
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(%エンピツ%)講義の内容
〇『平家物語』巻九-七
■三草勢揃(みくさせいぞろへ)(*右の資料を参照)
「寿永三年(1184)正月29日、範頼・義経は後白河法皇の御所に参上して、平家追討のため西国に出発。…2月4日、大手・搦手の二軍に分かれて都を出発。大手の大将軍は源範頼(のりより)、付き従う人たち(以下中略)総勢五万余希騎。搦手の大将軍は源義経(よしつね)、付き従う人たち(以下中略)、武蔵坊弁慶をはじめとして、総勢一万余騎。…大手の範頼軍は、昆陽野(こやの・伊丹市)に.進攻。搦手の義経軍は三草山(みくさやま・播磨と丹波の境)の東麓に到着した。…2月5日、義経は、夜討ちをかけ、三草合戦に勝利を収める。」
・「源義経」…源義朝(よしとも)の子。母は常盤(ときわ)。幼名は牛若。富士川の合戦後に兄頼朝の陣に加わる。その後、木曽義仲との合戦や平氏追討の一の谷、屋島、壇の浦の合戦に勝利。頼朝との不和から、吉野から奥州に逃れたが、藤原泰衡に攻められて自害した。
・大手(おうて):敵の正面に向かって攻撃する軍団。
・搦手(からめて):敵の背後から回って、攻めこむ軍団。
・「揃へ(そろえ)」(右上の資料を参照)。この章段は、大半を源氏の人名を並び立てるていることから、勢揃へと名付けられた。
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〇『平家物語』巻九−九
■老馬(ろうば)(*右の資料を参照)
「平家が立て籠もった一谷は、山がすぐ海に迫って、深い谷が幾筋もきれこんでいる。平家の総大将・宗盛は、教経(のりつね)に一万余騎を付け、兄の通盛も同行して山の方を固める。(山の方とは鵯越(ひよどりごえ)の麓である。)…2月6日の明け方に、義経は一万余騎を二手の分け、土肥実平の部隊を一の谷の西口に回し、自身は一隊を率いて、一の谷の後方、鵯越を馬で降りようと、丹波路から横手にまわった。…武蔵坊弁慶は、土地の猟師を連れて来て、義経が〈ここから一谷の城郭へ馬で下ろうと思うが、どうか〉と尋ねると、〈馬に乗って下るのは無理だという〉。〈それでは、鹿は通るか。と聞くと、鹿は通るという〉。…《鹿が通るなら、馬が通れないことはない。すぐに、お前が道案内しろ。》と、老人に道案内を命じた。自分は年をとってるので、代わりに18歳になる息子・鷲尾義久を道案内につけた(この鷲尾義久は、のちに、奥州で義経を守り、同じ所で討ち死にする)。
・平家は、難攻不落の一の谷に居を構えるまで勢力を回復していた。
・平教経…平家きっての勇将。
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〇『平家物語』巻九−十二
■坂落(さかおとし)(*右の資料を参照)
「源平の全軍が乱戦となり、矢の雨の降る中で、どちらの軍にも相手の乗じる隙があるとも見えなかった。…2月7日の明け方、義経隊は敵の背面に回って、一の谷後方の鵯越に登り、平家の城郭を遠くから見まわして、〈馬を何頭か降りさせてみよう〉といって、鞍を置いた馬を追って降りさせた。《馬どもはそれぞれ乗り手が注意して降りさせたら、その時はけがをしないはずだ。では降りろ。義経を手本とせよ》といって、その先頭を切って下りた。残りの軍勢は、みな続いて下る。…この奇襲作戦で平家軍は逃げ惑うばかりだった【有名な鵯越の坂落とし】。平家軍は海上から船で脱出しようとしたが、混みあって沈没したり、乗せまいとして同士討ちしたりして、一の谷の水際は真っ赤に染まった。勇将平教経は何度の合戦で一度も敗れたことのない人だが、馬に乗り屋島へ逃走するしまつだった。」
・平家一門の中で、指導的な立場にある重要な人物が、一の谷の戦いで、多くの命を落とした。
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平成29年前期講座(文学・文芸コース)(3月〜7月:全14回講義)は、7月13日で終了しました。
講義の先生並びに受講生の皆様に、厚く御礼申し上げます。
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