この芥川賞作家と作品はどうだ!−村田紗耶香『コンビニ人間』−

・日時:平成30年1月18日(木)午後1時半〜3時半
・会場:すばるホール(富田林市)
・講師:吉村 稠先生(園田学園女子大学名誉教授)
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**村田紗耶香「略歴」**
1979年(昭和54)千葉県生まれ。玉川大学文学部卒。2003年、デビュ−作『授乳』(群像新人文学賞)。2009年、『ギンイロノウタ』(野間文芸新人賞)。2013年、『しろいろ街の、その骨の体温の』(三島由紀夫賞)。2016年、『コンビニ人間』で、第155回芥川賞を受賞。他の著作:『タダイマトビラ』『殺人出産』『消滅世界』など。
◆コンビニでアルバイトしている女性を描いた『コンビニ人間』で芥川賞を受賞。作家として執筆活動しながら、自身も週3回、コンビニでアルバイトをしている異色の経歴。

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○村田紗耶香『コンビニ人間』(*右の資料は、冒頭文です。)
1.主人公像
・古倉恵子(ふるくらけいこ)、36歳、独身、恋愛経験なし。
・子供の頃からl行動、判断ぶりが世間とずれていて、奇妙な子とみられる。⇒園児時代、小鳥の死体で。小学校時代、男児同士の喧嘩仲裁にスコップで。…家族からは病んでいるとみられ、両親、妹からは『治る』ことを待たれている。→大学時から18年間、コンビニでのアルバイト。恋愛や結婚などの話題や会話への関心は一切無し。
2.主人公の「コンビニ」認識と自己認識
・「私にとって、コンビニは世界への扉でした。」⇒コンビニが私の居場所(心の落ち着く場所)。コンビニ店員になった瞬間、マニュアル習得の訓練と充実感、満足感。初めて、世界の部品になることができた。。
3.主人公像の明確な輪郭を形作る作者の手法
・「コンビニ」という場所が一つの輝かしい水槽のような世界。
・問題児「白羽」という男の設定配置…ある日、婚活目的の新入り男を、家に連れ帰り同棲生活。(偽装して、”チョットつきあっている人がいる”という設定)。

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○作家と時代とのかかわりが生み出す文芸作品
作家の世界観と時代考察から創出される文芸的なテーマには、「普遍的テーマ」、「時局的なテーマ」、「未知への予兆的テーマ」がある。
◆「コンビニ人間」は、未知への予兆的なテーマに分類される。…最近、若い世代に「恋愛・結婚・子育て・家庭・性」への関心を持たない人が増えているという。
◆「コンビニ人間」の主人公・古倉恵子は、36歳。母と妹は、大学時代、最初はコンビニに勤めることは「いい」と言っていたが、大学を卒業しても同じ店でアルバイトをしている。…両親に申し訳なく思い、就職活動をしてみたが、コンビニのバイトしかしていない私は、書類選考を通ることさえめったになく、面接にこぎつけても何故何年もアルバイトをしていたのかうまく説明できなかった。
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**あとがき**
・講義の中で、吉村先生が”30代〜40代の若い世代で、自分の子供や近所に、恋愛や結婚などに関心のない人がいて、困惑していませんか?”を問いかけたとところ、50人中、10数名が手を挙げました。⇒我々シニア層は、若い世代の実存を受けとめることができるか。
・『コンビニ人間』は、コンビニで働いている時だけ自分の存在意義を感じられる36歳の恋愛経験のない、変わった女性が主人公。「結婚は?」「まだ、バイトなの?」と社会の普通を求める家族や友人に異物扱いをされながら、たくましく生きる人間を、ユーモアたっぷりに描いている。
・『コンビニ人間』の人気は高く、図書館で借りて読めるのは、数か月かかる状況。