(%紫点%) 前期講座(文学・文芸コース)の第2回講義の報告です。
・日時:3月15日(木)午後1時半〜3時半
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 「西鶴を読む」…『万の文反古』〜京都に美女は多けれど〜
・講師:高橋 圭一先生(大阪大谷大学文学部教授)
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*井原西鶴について
・寛永十九年(1642)〜元禄六年(1693)
・俳諧師・浮世草子作者
・大坂生まれ、大坂に住み(現中央区鎗屋町)、大坂の本屋から自作を刊行し、大阪に墓も現存する(誓願寺/現中央区上本町)、近世大坂を代表する町人作家。
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*右は、西鶴肖像画(芳賀一晶筆)です。
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.『万の文反古』 (よろずの ふみほうぐ)
・西鶴の没後に出た遺稿集の一つ。元禄九年(1696)刊。
・編者は弟子の北条団水(だんすい)。
・すべてが一通の手紙と短い評からなる異色の短編集(書簡体小説)で、全17章。
・書名の「万の」は「さまざまな」、「文」は手紙、「反古」は「ほうぐ」「ほぐ」「ほご」とも言い、書き損じた紙などの紙屑の意。
2. 「京にも思ふようなる事なし」(巻二の三)
○妻を仙台に置き去りにして京へ出た男が、故郷の知人に宛てた手紙
(1)男が上京した理由
・「あき申し候は、つねづねりんきいひつのり候に、・・・入縁のままならぬは捨置き、爰元(ここもと)にのぼり」→(要約)「男は妻が嫉妬深かったから、入り婿ゆえ自分から離婚を申しでられる立場にないので、黙って飛び出し京に上った。」
(2)京での女房(浪費癖)−「女房を持つのも家計のためになると思い・・・」
・「寺町の白粉(おしろい)屋の娘、かたちも十人なみなれば、是をよびむかひしに・・・其元の女房どもとは格別違い・・・かつて悋気いたさぬを・・・椀・皿箱をうち割、作病しての昼寝、・・・・」→(要約)「容貌も人並みの白粉屋の娘を迎えた。嫉妬深かった仙台の女房とは逆に、全く男に関心を持たない。・・・夫嫌いをして、あてこすりの浪費をする妻なので、離縁した。」
(3)京での女房(大年増)−「年をとった女房が世帯のためになると存じ・・・」
・「とかく年の行きたるが世帯薬」とぞんじ、・・・あのほうから二十七と申せば、三つ四つ年かくしてから、三十の内外の女と見定め、いかにしても風俗のよきにほだされ、祝言いたし候へば、おもいの外ふるひ所あらわれ・・・人にたづね申候に、「今三十六になるむすめあり。是は十七の時の子なれば、今年五十二か三か」・・・・・・さつてのけ申候。」→(要約)「年のいっている方が世帯のためによい」と思い、三十前後の女と見定めて、見立ての良い(容貌・身ぶり・態度−田舎出の男は、どうしても京女の「風俗」にに魅せられるもの)のに惹かれて、結婚したが、五十二・三の大年増ゆえ離縁。
(4)京での女房(家事にまったく無知)−「お公家さんの所に勤めていた女官上がりの女・・・」(省略)
(5)京での女房(大借金)−「家賃七十目づつ取れる家屋敷を自宅のほかに持つ後家のところへ・・・しかし、大借金が」 (省略)
(6)京での女房(持参金つき)−「古道具屋の娘で、器量も十人並みで、持参金が銀三貫目・・・しかし、月に二・三度錯乱して、丸裸で門口に飛び出る」 (省略)
3.十七年のうちに二十三人の女と再婚したが・・・
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*右が、手紙の終りの文章です。
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・(要約)「京は女のずいぶん多いところですが、いざ縁組となると、思うようなことはございません。十七年のうちに二十三人の女房を持ち替えてみましたが、どの女房も欠点があって実家に帰しました。・・・少しあった金銀も、祝言に使い込み、無一文になってしまい、もはや女房を持つ力もありません。・・・京も田舎も住みづらいことは、少しも変わらず、夫婦は互いに助け合って生活するものだ。・・・はるばる京都に上り、女房を離縁して身代をつぶしてしまいました。」
4.まとめ
・西鶴の創作である書簡体小説は、往復書簡ではなく、一人の人間の赤裸々な懺悔の形で、人の心や世相を描いています。
・本作の全話が本当に西鶴自身の作かという問題、編集者の北条団水の書いた章が混じっているとする説があります。
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*文学・文芸コースの4月の講義(案内)
・日時:4月5日(木)午後1時半〜3時半
・演題:谷崎潤一郎〜『春琴抄』の謎と船場〜
・講師:三島 佑一先生(四天王寺大学名誉教授)
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・日時:4月19日(木)午後1時半〜3時半
・演題:万葉の四季の歌
・講師:神野 富一先生(甲南女子大学教授)
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