(%紫点%) 後期講座(文学・文芸コース)の第3回講義の報告です。
・日時:10月4日(木)午後1時半〜3時半
・場所:すばるホール(3階会議室) (富田林市)
・演題: 『古事記』を彩る女性たち
・講師: 田中 千晶先生(甲南女子大学兼任講師)
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【古事記について】…今年は、“古事記編纂1300年”
・現存する日本最古の歴史書。神代(かみよ)の物語や、国の成り立ちにまつわる出来事を記した書物。
・構成:全3巻…上巻(上つ巻)−太安万侶の序文、神々の時代(神代)。中巻(中つ巻)−神武天皇(初代)から応神天皇(第15代)まで。下巻(下つ巻)−仁徳天皇(第16代)から推古天皇(第33代)まで。[神話・伝説と多数の歌謡とを含みながら、天皇を中心とする日本の統一の由来を物語る。]
・稗田阿礼が天武天皇の勅により語り伝えた帝記および先代の旧辞を、太安万侶が元明天皇の勅により撰録して712年(和銅五)献上。
・特色…①天皇家の書 ②豊かな文学性
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(%エンピツ%) 講義の内容
1.上巻より
○ 「天宇受売命」 (あめのうずめ)
・日本神話で、天照大神(あまてらすおおみかみ)が天の岩戸に隠れた際、その前で踊り、大神を誘い出した女神。
・天の岩戸の物語:天照大神が、天の.岩屋へ籠って、その戸を閉めてしまわれた。大神は太陽の女神である。来る日も来る日も夜ばかりになってしまった。→【天(あめ)の宇受売(うずめ)の命、・・・天の石屋戸にうけ伏せて、踏みとどろこし。神がかりして、胸乳(むなち)を掛き出で、裳緒(もひも)をほとに忍(お)し垂れき。しかして、高天の原動(とよ)みて、八百万(やほよろず)の神共(とも)に咲(わら)ひき。・・・】
(大意)[女神の宇受売命は、天の岩戸の前に桶を伏せて、踏んで大きな音を響かせ、神がかりのように、胸乳をあらわに、裳の紐を陰部(ほと)までおし垂らして乱舞した。((注)陰部をあらわすのは、呪術的な行為)。これをみてたくさんの神はどっと笑ってはやし立てた。]
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2.中巻より
○ 「弟橘比売命」 (おとたちばなひめ)
・倭建命(やまとたける)(景行天皇(第12代)の皇子)の妃。
・皇子のために、弟橘比売命が「一身を犠牲にささげた」物語→【倭建命は、相武(あがむ)の国に到りまししとき、・・・走水(はしりみず)の海を渡りましし時に、その渡の神浪(なみ)を興し、船を廻して、え進み渡りまさざりき。しかして、その后、名は弟橘比売の命の白(まを)したまひく、「あれ御子に易(かは)りて海の中に入らむ」。・・・】
(大意)[・・・相模国、走水の海(浦賀水道)では、海峡の神が荒波を立てて、船を廻したので、進みお渡りなれなかった。そこで、后は、“私が皇子に代わって海中に入りましょう”と海神の怒りをおさえた。…后・弟橘比売命の犠牲の上に、先に進むのである。]
○ 「息長帯日売命」 (おきながたらしひめ)
・神功皇后(仲哀天皇の皇后)
・天皇とともに熊襲征服に向かい、天皇が香椎宮(福岡市)で死去した後、海を渡って新羅を攻略して凱旋し、応神天皇を筑紫で出産、摂政70年にして没。
・海を渡って戦う皇后の物語→ (省略)
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3.下巻より
○ 「石之日売命」 (いはのひめ)
・仁徳天皇の皇后。履中・反正・允恭天皇の母
・嫉妬する皇后の物語(黒日売(くろひめ))→【その大后、石之日売の命、いたく嫉妬(うはなりねたみ)したまひき。かれ、天皇(すめらみこと)の使はせる妾(みめ)は、宮の中をえ臨まず、言立てば、足もあがかに嫉(ねた)みたまひき。・・・天皇、吉備の女、名は黒日売、その容姿端正(かたちうるはし)しと聞こしめして、喚上(めさ)げて使ひたまひき。しかるに、その大后の嫉みたまふを畏みて、本つ国に逃げ下りき。・・・】
(大意)[皇后・石之日売命は、ひどく嫉妬をなさった。それで、天皇がお使いになる侍女たちも宮殿の中を窺い見もできない。ちょとしたことでも、皇后は地だんだ踏んで嫉妬をなさった。・・・吉備の女・黒日売を、美しいとお聞きになって、召し上げてお使いになった。しかし、皇后の嫉妬に恐れて、故郷に帰ってしまった。]
・矢田(やた)の若郎女(わかいらつめ)の物語→「皇后が紀伊国に出かけたとき、天皇は八田若郎女を呼び寄せた。この話を聞いた皇后は・・・。」→(省略)
○ 「赤猪子」 (あかゐこ)
・引田部(ひけたべ)赤猪子。三輪川(初瀬川の下流)のほとりに住んでいた。
・天皇のお召しをひたすら待って、とうとう八十年も歳月がたってしまった物語→(省略)
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*田中千晶先生の講義とともに読む『古事記』は、人間味ある魅力的な物語でした。