木陰に入ると、さわやかな空気を感じますが、日中はまだまだ暑さが残っています。
9月24日開催の多文化カフェは、フランス リール出身の留学生マリンさんからの話でした。参加者は16名。

【リール市概要】 ベルギー国境に近いフランス最北部フランドル地方の中核都市。人口は20万人、フランドル地方は約200万人。土地は沼地で、河川が多く、パリからベルギー、ドイツまで繋がっていて、物流は主に船便を利用。気候は夏でも20℃位。寒冷地なので、主な農産品はジャガイモ、砂糖大根、ホップなど。当然ビール醸造も盛んである。意外なのは、事故や事件の元凶になるとの理由で、ワインなどのアルコール飲料の宣伝が禁止されていること。ケーキ類の甘味には砂糖大根が使用される。一方酪農が盛んで、乳製品特にチーズは質・量ともに豊富である。チーズには塩味の強いもの、香辛料の強いものがあり、溶かして食べるものもある。

【リールの歴史】 紀元6世紀頃の話に始まる。フランドル地方に住んでいた貴族がイギリスへ行こうとしていた。そこに北の巨人が現れ、罠に掛けて貴族を殺してしまった。妻は逃げ延びることができ、子どもを産んだ。子どもは復讐を誓い、成人して巨人に決闘を申し込み、勝つことができた。その後、リール全体を治めた。中世には、フランドルの王侯が、スペイン、英国、フランスの王侯と戦って敗れ、投獄された。夫亡き後、その妻であるジャンヌ・デ・フランドルはフランドル地方の統治を任された。

彼女は、病院を設立するなど善政を敷き、街を発展させた功労が今も讃えられている。その後、近現代になっても、世界大戦でドイツ領になったり、ベルギー領になるなど、不安定な歴史がある。
そのような歴史があって、言語もフランス語とベルギー語が混ざった言語が使われている。19世紀には産業革命が興り、織物業、鉱工業を中心に繁栄したが、時代の変化とともに次第に衰退。フランス新幹線TGV開通後、企業が徐々に進出し始め、現在は半導体や太陽電池等の生産に転換されている。しかし、世界規模でみると小さいため、各種イベントなどを開催して、地域活性化の努力を続けている。ライブやフリーマーケット、世界のまつりを開催し、それぞれ200〜300万人の観衆を集めている。世界のまつりでは大阪からの出展もあった。伝統的な祭りでは、11月にサンタクロースに似た、サンニコラスのまつりが行われ、子どもたちは通りに出て、お菓子やパンをもらう。

【代表的な施設】 争いが繰り返されたため要塞が多い。ルイ14世が建設した外形が星形の要塞は、攻防の両面に優れ、後年函館五稜郭のモデルにもなった。周囲は広く、市民の憩いの場、動物園、学校の運動場として自由に利用されているが、建物内部は軍の施設になっていて立入り禁止である。
ジャンヌ・デ・フランドルが設立した病院は、現在は民族博物館となっている。

【主な質疑と回答】
 ・マリンさんの経歴は? リールで高校を卒業後、パリの工学系の難関校グランド エコー(日本にない学校制度)で修士修了。現在は、阪大の博士課程で有機半導 体を研究中。
 ・なぜ日本か? 欧米にはない異文化を知りたかった。先輩も阪大に留学。
 ・日本に来て困ったことは? 買い物。はじめは文字が読めず、レタスしか買えなか った。大根は何か分からなかった。
 ・将来は? 博士課程終了後、1年程度日本の企業に勤め、それから考えたい。
 ・日本の印象は? 日本は面白い国。フランドル地方はゲルマン系とラテン系が
 混じっていて、大阪に似ているので、自分にとっては親しみやすい。
 東京は走っている感じで、かなり違印象が異なる。
 ・日本で行った処は? 両親は5月に来日し、京都、奈良へも行ったが、父は建築 設計者で、日本の現代建築に大いに関心を持たれた。近々再来日予定。
 マリンさんは広島・安芸の宮島に興味を持った。等

 次回は、11月5日 10時〜12時 日本人と結婚したエクアドル女性からの 
 話です。 (文責 濱崎)
 以 上