11月度 哲学カフェ「根拠なしに大事(例:正月)にしているもの」まとめ

日時・場所 13年11月30日 14:00〜16:00 於 コラボ第一講座室
参加者 13名(男10名 女3名 初参加3名)
進行役 カフェフィロ 高橋 綾さん 
スタッフ 加福、熊谷、濱崎

≪今回の総括及び印象≫

・今回は、その場で参加者からテーマを募り多数決で設定。決戦の挙手を2度繰返した後設定された。他にも興味のあるテーマが出されたが、決戦のもう一方のテーマは「自立とはなにか」であった。最近の世相として、「自立」が困難になりつつあるとの懸念を抱かれているためだろうか。
・人間の行為で、根拠のないものは無いと考えられ、テーマのもつイメージ、理解に個人差があったように思われ、多面的な切り口での議論になった。
・問題を整理する為、個人的な根拠、社会的な根拠など分けて考えるべきであるとか、発言された類似の言葉で、根拠/理由/意味などがあいまいなままでは議論が困難との発言も聞かれた。
・根拠がないと思われる行為も枚挙にいとまがなく、議論が発散しそうになったこともあり、進行役から、正月に絞っての議論にするよう方向付けがなされた。
・対象を絞った後も、正月の意味・意義、良い面、弊害面、あるいは、これが正月だとどの様に子孫に伝えるかを考えると難しい等々の発言あり。全員がそれぞれの体験を持っている普遍的なテーマなので、議論百出した。
・今回のテーマは、正月の発祥を推察した議論となったようだ。事前に設定されていれば、根拠を事前に調べ史実に基づいた議論になったかも知れない。しかし、哲学カフェは、無理に結論を出す場や、史実を調べる場ではないので、自由奔放な発言があり、新参加の人からの発言も活発であった。今回のカフェで特に思わぬ広がりを見たことは、興味深いことであった。
・初参加の女性の感想「こんな場があり、こんな議論ができるとは思わなかった。楽しかった」と。

≪記 録≫
(主な発言を記録、類似発言をまとめたので順不同)

・初参加の方もおられたので、進行役から進め方の紹介があり、テーマの設定からスタート。
・提案者からの補足説明「正月はめでたいことになっているが、根拠があいまい。根拠なくても大事にすることで世の中が廻っている。しかし、なくても良いのではないかとの考えもあり得る」
・何事にも根拠はあるものだ。知っているか、知らないかだけである。地域性もあるし、時代とともに変遷、風化する。
・昔は一年間を無事に生きるのは大変な事だった。無事に新しい年を迎えられるのは、祝う価値がある。
・現在は無事が当たり前になり、意味が薄れてきている。替わってハロウィンや復活祭を祝っている。
・新しい年を迎えると言うのは、神道では根拠のある事だった(に違いない)。
・(正月に)意味があるかどうかは、別問題で社会的に有効かどうかを重視するようになっている。
・根拠のないものでも大事にしているものがある。縁かつぎ、安全祈願のお札、地域の風習・習わし、パワースポット等々。
・根拠など考えず儀礼として疑問なく祝っている。儀礼に意味を持たせて大事にするのはなぜか。
・皆が集まり祝う事に意味がある。大切にしているものは儀礼として残る。
・世の中で大切にすべきものが社会規範となり、それらが個人の規範となる。正月不要という規範ができれば、個人も正月を祝わなくなるだろう。
・根拠の有無等考えなくても、安心を得られるならそれでよいではないか。ライナスの毛布の例もある。
・意味が考えられないこと、意味のないものも一杯ある。個人的に意味を持っていても、社会的に意味の無いものもある。
・個人的な意味は、こじつけも可能である。その人が意味ありと考えていればよいこと。ただし、社会的な意味が求められるのでは。
・周囲の住民は迷惑だが、ゴミ屋敷の住人は捨てない意味を説明。一人だけ正当性を主張しても根拠になりえない。それならゴミ屋敷の人が集まり住めば意味が出てくるのか。
・その人たちがパーティーを組織すれば、主張も認められるし、ゴミ集めの意味が認められてくる。
・複数のパーティーでなく、宗教であっても信者が自分一人でも、内なる心の発露であれば認めるべき。他人に迷惑を掛け、危害を与えるのでなければ。狂信的なもので、自分一人という特殊なものは対象に議論するのは意味がない。
・公共の秩序は必要かも並行して、議論したい。パーティーをつってのイトスピーチや侮蔑的発言を繰り返すのはどうか。表現の自由との関連をどうとらえるか。

○進行役より方向づけあり。「正月はなぜ支持されるのだろうか?」
・正月は、雑事からも解放され休める。昔は農業国で、農閑期の正月はおおっぴらに仕事を休めた。
・結婚式、法事以外で親族が顔を合わせる機会になる。
家長が新年のあいさつをして、権威を示す場。
・反りの合わない人とも和気藹藹になれる。細かいことに不備に拘らず、ゆるし、ゆるされる。
・日本人は、過去の不具合を水に流す習性を持つ。節目を付けて心機一転、仕切り直しができる。
・正月があるから上手く回っている面がある。金が廻る。年賀状などで情報が廻る。
神社は参拝者が増え、お賽銭があり、参拝者はご利益がもらえると考える。

○進行役「逆に正月のマイナス面は?」
・商業ベースに乗せられ金を遣う。物価が上昇する。
・正月を迎える準備が大変。最近は、おせち料理を取寄せ、ホテルで過ごす人、海外旅行者が増えた。
・飲み食いし過ぎと、運動不足で不健康。
・正月をどう子供に伝えるか。これが正月だと言うのは難しい。お年玉やおせち料理だけではない。精神的なものは伝えにくい。
・正月を祝わなくなれば、伝統文化は急速に衰退することを危惧する。
・年中正月ならどうなるのか。時間もあり、本件議論が深まらず。

次回は14年3月29日(土)14時から 事前にテーマを決めて開催の予定。 

 以 上

(131207 濱崎)

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感想です。

テーマの提示の仕方は難しい。

この日のテーマ;
「論拠がないのに大切しているものがあるのは何故か。
 Ex.正月はめでたいということにして祝っている。」

このテーマで論議を始めたところ論拠と理由の違いは何か、正月が目出度いことに論拠はあるなど「論拠」とその有無に関心が集まり、その論議に時間がかかってしまった。

今回は会場でテーマを募集、人気投票で決めた。
実はこのテーマは小生の案、まさか当選するとは思わず、文案を充分練らずに提案したのが失敗だった。

「論拠を問わずに大切しているものがあるが、
そのことによって人は何を得ているのか」

このように「論拠がない」を「論拠を問わな い」にし、「何故か。」ではなく「何を得ているのか」にすればもっと論議できたかも。

通常は事前に論点を予想したうえでテーマを設定しているのだが、高橋綾先生がそこまで真面目にしなくても宜しいとのことであったので、今回はその作業を省略した。やはり事前の論点予想は必要だった。

以上、反省しているところです。

因みに当日候補に上がった他のテーマは以下の通り。(KEYWORDのみ)

自立、PRIDE、潔さ、不愉快、価値観対立、他者の苦しみ、COMPLIANCE、
謝罪、宗教への無自覚、いじめ、IDENTITY、

(加福共之)