日時 14年10月11日(土)2時〜4時25分
場所 千里文化センター(コラボ) 3階第一講座室
演題 「陸のシルクロード 〜貿易と貨幣〜 」
講師 須田 隆さん
オープニングは、メゾソプラノ中住志津恵さん、ピアノ川上時子さんで、グリーク作曲「君を愛す」とドボルザーク作曲「わが母が教えたまいし歌」の演奏で始まりました。よく響く、情感たっぷりの歌声で、一同大いに楽しませていただきました。
講演の全般的な印象
今回はシルクロードがテーマでした。シルクロードはパキスタンも通過していますが、前日パキスタンのマララさんがノーベル平和賞に輝いた、記念すべきタイミングでの開催になりました。普段聞きなれない言葉もありましたが、皆さん熱心に聴講され、新しい発見も沢山あり、非常に興味深い話でした。
講師の須田隆さんは、商社の経理担当の経験をお持ちで、古代から現代にいたる国際間の人々の交流、物の取引、貨幣等に興味を持ち続けられており、関連した知識を豊富に蓄積されておられました。
シルクロードからの連想は、平山郁夫画伯が描かれた悠久の時の流れを感じる、穏やかで、ロマンをかきたてるイメージです。そのことは否定できませんが、今回の講演で、現実のシルクロードは、生活に密着した厳しいものだったと知りました。遠路はるばる色々な危険を避けつつ、難路を移動するという困難はもちろん、交流した人々、交易された品々も数奇な運命を辿ったのだということも、強く印象に残りました。
講演の概要
先ず初めに、シルクロードには天山北路(草原の道)、天山南路(オアシスの道)及び、西域南道(インドへの道)の3ルートがあるとの紹介がありました。
次に、収蔵されている正倉院の御物8点をスライドで示され、シルクロードを身近に感じさせてくれました。
人物の交流を示す最も確実な証拠は、宗教の伝来記録です。仏教、ゾロアスター教、景教、マニ教、イスラム教はこれらシルクロードを通って伝来しました。
隊商は、主にソグド人が担っていました。ソグドの人種は、コーカソイド系で、紅毛、碧眼、深目、高鼻、濃い髭、亜麻色・栗毛色の巻毛という特徴を持っています。日本へは754年に、鑑真和上とともに来日し、その後定住しました。ソグド人は、現在のウズベキスタンを中心とするオアシス国家群に住んでおり、ゾロアスター教徒です。商人、女性の地位が高いなど、他の部族とは異なる文化を持っていたようです。
隊商は、長い隊列を組んで移動しますが、1グループ10人前後の人が、10頭程のラクダを引き、そのような小グループがいくつかまとまって大きな隊列を組み、護衛を付けて移動しました。何千kmの全行程を移動するのは、国家間の使節交換の時で、一般的には駅伝のように、オアシス間を次々とバトンタッチしながら移動してゆきます。土地勘のある自分達の居住地域を移動することで、遭遇しそうな危険が大きく回避できたと思われます。
隊商は出資金を募り、品物を仕入れ、得た利益は帰国後出資者に分配します。ベニスの商人の話を思い出しました。
物の交流は、東から西へは絹織物、茶、陶器、朝鮮人参、生姜など。 西から東へは馬、金銀、香料、宝石類、染料、砂糖などがありました。絹糸や絹織物は、貴重でかつ重要な交易品でした。外交上同盟を組み、その証として朝献に使われるとか、歳幣(毎年決まって、支配国に貢ぐ金品)として用いられていますが、蚕そのものは利権維持のため、交易禁止品にされていました。先王の妃が、中国から嫁ぐ際、髪の毛に隠して蚕を持参したとの伝説もあります。
地域をまたがり流通する貨幣は、当然国際的に価値が認められるものでなければなりません。そのため、金銀宝石類が用いられました。代表的な貨幣として、サーサーン朝ドラクマ銀貨がありました。我々がよく知っている玄奨三蔵は、帰国の際に高昌王から多くの餞別をもらっています。それらの中にこの銀貨もあり、3万枚賜ったという記録が残っています。
交易品を現在の価格に換算するのは難しく、馬の売買では、普通の馬は軽自動車並、名馬と言われる馬は、3百万円〜1千万円の高級車位したと推定されています。
奴隷も売買の対象で、売り主、買主間で交わした契約書がいくつか残っています。
オバチと言う名の女奴隷の価格が、銀貨120枚という記録が、トルファンの古墳から出土しています。どんなに不安な気持ちを抱えて、長旅をしていたのだろうか。
マララさんが見たら、何と言ったでしょう。
最後に、図書館司書の久山さんから、シルクロードと貨幣に関連する図書を紹介して頂きました。
次回コラボ大学校のご案内
日時 11月8日(土)2時〜4時15分
場所 千里文化センター(コラボ) 3階 第一講座室
演題 「アンデスと日本 〜ペルーの日系社会〜 」
講師 岡田 勝美さん
内容 ペルーと日本は古代からの交流があり、また、多くの日本人が移住しており日系社会が形成されています。非常に興味深いお話が伺えると思いますので、奮ってご参加ください。
申込み受付日 10月20日(月)から
申込み先 千里文化センター(コラボ)事務所 06−6831−4133 まで
(文責 濱崎)