2,3日真冬並みの冷え込みの後、3月中旬とは思えないポカポカ陽気となり、町を歩く人も、コートを着た人やコートなしの人など様々でした。
多目的ホールにて、3月度多文化カフェを開催しました。
日 時:3月17日(火)10:00〜12:00
話 題:イエメン共和国の風物・文化・生活の紹介
語り手:大阪大学博士課程(口腔外科研究中)の留学生 ハニさん

 イエメン共和国と聞いて、すぐに分かる人は少ないのではないでしょうか。在留邦人もわずか24人(14年11月現在)で、在日者は27人です。ハニさんは、どの都市に何人いるか全員知っています。また、日本にはイエメン料理のレストランが一軒もありません。イエメンに関しては知らないこと、めずらしいことばかりですが、残念ながらほんの一部しか紹介できません。ハニさんのフルネームは、ハニ(名) ムハンマド アブドッラー ガールフ マリー ムフシヌ アブドルカーデル アフムド アルシャリーフ(姓)です。姓と名以外は、父方の先祖代々の名前です。ハニさんは10人兄弟ですが、3人の兄弟は出産時に亡くなっています。他の家庭でも、医院が遠く家での出産を余儀なくされるので、出産時の死亡率が高いようです。子供が多く、平均寿命も短いので、65歳以上の人は2.6%しかいません。

イエメンは、アラビア半島の西南端に位置し、首都はサヌアです。北緯15度で、マニラ市と同緯度です。面積は日本の約1.5倍、人口は2,441万人(13年)です。平均気温は21℃と意外に低く、夏と冬の2シーズンです。夏季は何月から何月までかと聞いても、ハニさんは太陰暦のためか、答えられませんでした。雨が少なく川が無いので、谷にダムを造り水を貯めて利用します。国の東側は、紅海に面し山岳地帯が連なります。最高峰は富士山とほぼ同じで3760mあります。コーヒーで有名なモカは町の名前で、山岳地域の紅海南端の海峡付近にあります。サウジアラビアと接している北部の地域は砂漠、南側はアデン湾に面し、植生が豊かです。

 歴史は非常に古く、現在イスラム教国になっている北アフリカ、中東、中近東の国々の民族の源流は、イエメンです。考古学的には、ヨーロッパ人も、アジア人も何百万年も前に、紅海を渡ってきたアフリカ人が、ここイエメンから枝分かれしたと考えられています。エジプト王朝以前からの文明があり、古い建物には絵文字も残されています。日本語の書体は、漢字、仮名など6書体ですが、アラビア語のカリグラフィは60通り以上の書体があります。ハニさんもいくつかの書体で書くことができます。右の写真は彼の名前をカリグラフィで書いたものです。日本人がよく知っているシバの女王の神殿と考えられる遺跡も、発掘調査中で、未だ実在したという証拠は見つかっていないようです。(写真参照)

イエメンは、紀元前10世紀以降、古代インド、地中海及び東アフリカの貿易中継地として繁栄しました。現代になり、英国支配や、社会主義国などを経て、1990年に南北イエメン統合により、現在のイエメン共和国が誕生しました。
 
 家屋は、山岳地帯では断崖絶壁に建てられていて、山から切り出した石造りです。下の写真で断崖に点々と映っているのが家です。低地では、日干し煉瓦を積み重ねて建てられています。山岳地帯の農地は、ロックガーデンのように険しい傾斜の段々畑で、標高3000mにまで達しています。主食の小麦、ジャガイモやコーヒーなどが栽培されています。低地の夏は、緑で覆われ果物も豊富で、牧畜も行われています。農産物は非常に安く、Kg単位で買い、マンゴーは20Kgで300円程度、トマトは10Kgで30円程度です。逆に、お米は余り食べないので、5Kg単位だそうです。スーパーでは生鮮食料品は売られていなくて、買えるのは主に冷凍食品です。牛肉は肉屋さんで、吊り下げられた1頭分の肉から、この部分を何Kgと指定して50Kg単位で買います。食料は、国内で自給自足できています。因みにモカコーヒーは国内では飲まれず、もっぱら輸出に振り向けられています。ハニさんの家族は大家族なので、食べる量も多く、妹たちは一日中炊事をしなければならないようです。

秘境で有名なソコトラ島は、世界自然遺産であり、NASAが指定した世界の10カ所の秘境の一つでもあります。非常に珍しい動植物が生息していて、インド洋のガラパゴスと言われます。切ると赤い樹液を出すドラゴンの木、幹が巨大で水が蓄えられた徳利形の木や、乳香を生じる木などめずらしい植物と、それらに生息する鳥類、昆虫、クモ類が多くいます。魚も豊富で近海に730種類もいます。乳香は、日本ではなじみがありませんが、イエメンではお父さんが帰宅した際とか、お客さんを招き入れる際に、振りかけるなど、日常的に使われています。蛇足ですが、川西市の植物問屋「花宇」の5代目西畠清順さんは、このソコトラ島まで行き、断崖の先に生えるめずらしい木を採りに行ったことが、新聞で紹介されていました。下の写真は赤い樹液を出しているドラゴンの木です。

 歴史のある、自然も食糧も豊かな国ですが、政治は不安定で政府と反政府勢力との紛争が続いています。このため経済破綻しているのは非常に残念に思います。

主な質疑
Q:石油資源はありますか
A:石油も天然ガスもあります。石油は日本に輸出しています。

Q:古い高層の家が多くありますが、エレベーターはありますか。
A:エレベーターはありません。同じ建物の中で、人が住むフロアーと羊等家畜を飼うフロアーがあります。犬は外の犬小屋で飼います。
Q:学校制度はどうなっていますか。
A:6・3・3制です。一人の先生が100人〜120人の生徒を教えます。小学校では、朝6時半から12時半までと、午後1時から7時までの教室と2部制です。
Q:七五三など子供の成長を祝う行事はありますか。
A:子供が多いからか、そのような行事はありません。

 次回の多文化カフェ
日 時:5月12日(火)10:00〜12:00
語り手:イタリヤ人の高校留学生です。

(文責 濱崎定也)