12月コラボ大学校「面打ちが語る能面の世界」

12月12日(土) コラボ大学校を開催しました。
テーマ:面打ちが語る能面の世界
語り手:鳥畑英之さん

鳥畑さんは会社勤めのかたわら趣味として25年以上能面制作を続け、勤務先の倒産をきっかけに能面師として独立。豊中市南部で教室を開き能面制作指導にあたる一方、豊中不動尊で毎年行われる能面コンクール「島熊山能面祭」や、能面をつけて能舞台を歩くなど能楽に親しめる講座「お能ってな〜に?」の開催を通して能楽の普及に努められています。2015年11月18日関西テレビ『よーいドン!』となりの人間国宝さんのコーナーへ出演、能面についてユーモアたっぷりに語られました。

川上時子さんの『シューベルト作曲 ソナタ作品120 第三楽章』ピアノ演奏後、講演が始まりました。講演前半は能面の種類と能楽の歴史についてのお話。能面の種類は約250種、「男面」「女面」「尉面」(尉とはお爺さんの意)「鬼神面」「霊面」の5つに大別されます。
能面と聞くと無表情というイメージがありますが、鳥畑さんによると表情の無い面や、反対に表情の豊かすぎる面は能楽師にとって演じにくいとのこと。能面は左右非対称に作られていることで、能楽師が演ずる際、面の角度や手の添え方により様々な感情表現を生み出す。とくに「目」を彫る際はコンマ単位での彫刻刀の入れ方が重要と語ります。
五穀豊穣等を願う神事であった能楽は14世紀半ば、観阿弥・世阿弥親子により舞台芸術へと高められ、能楽師は歴代の権力者のお抱えとなり、能は武家の教養として発展します。
鳥畑さんは次のように表現しました。
「能はミュージカル、能の教養は社長同士の接待ゴルフ、観阿弥親子はプロデューサー」

会場内では鳥畑さんが制作した能面23点を展示、コラボ大学校開始前や休憩時間を利用して参加者の皆さんにご覧いただきました。普段は目にすることのない能面を前に写真を撮ったり、鳥畑さんへ質問したりと、参加者の関心の高さがうかがえました。

後半は粗彫り実演。角をあらかじめ除いたヒノキ材に型紙を当て鉛筆で印を付け、高位置から低位置へ一気にノミを入れていき、大まかな形状に削ります。リズミカルな手の動きに、スタッフも思わず見入ってしまいました。鳥畑さんは粗彫りを約30分で行うそうですが、初心者は1週間程度かかることが多いようです。
今回の実演では行いませんでしたが、仕上げの彫りは彫刻刀で丁寧に表情を作っていきます。その後裏面の彫りを行います。裏面の形状は能楽師が顔にあてがった時、違和感がなく、謡(うた)をうたいやすく、また夏等汗をかいたとき汗が表面に流れ出ないよう工夫されているそうです。

600年以上続く「能」の伝統を能楽師とともに守り伝える能面師・鳥畑さんの今回のお話は、テレビ出演時と変わらない熱心な語りで、能楽を更に多くの人たちに見ていただきたいとの思いが伝わる講演となりました。

質疑応答
Q 能面を付けたとき、どのようにして見る?
A 目で正面を見て、鼻の穴から足元を見る。目を閉じて演じる能楽師もいらっしゃる。

趣味で能面を制作している方は全国に2000〜3000人といわれますが、独学で能面作りを学びたい向きに、千里図書館司書の浅尾さんより能面の制作方法を解説した図書等の紹介がありました。

【次回のコラボ大学校】
日時 2016年1月9日(土)14時〜16時15分
会場 3階 第一講座室
テーマ 「身近な野鳥たちに癒され」
語り手 小川浩一さん

この一年のご愛顧に感謝を申し上げます。
2016年もコラボ大学校をよろしくお願い申し上げます。
(ツツミ)