テーマ 「パリ近郊の街での日本人の知らないフランスの暮らし・学校生活」
 語り手 垣花(かきのはな) 慧(けい)さん
 日 時 7月19日(火)10〜12時 参加者 全13名
 
 垣花さんは、フランス・パリから東へ40kmのSerris(セリス市)で生まれ、中学2年生のとき、両親と帰国しました。今も時々フランスへ行きますし、豊中国際交流センターでフランス語や英語を生かしたボランティアをしています。そんな垣花さんから、日本人が余り知らないフランスやセリスの話をしてもらいました。沢山写真を準備してくれましたが、日本と違っているところを中心に紹介します。 

 先ずフランスの気候ですが、3月が梅雨、7月は夜10時頃まで明るく、冬には雪が降ります。7月14日の独立記念日は祝日で、パリの凱旋門で軍人のパレードが行われました。爆竹や花火が打ち上げられましたが、花火が打ち上げられることは日本ほど多くありません。
 フランスは多民族国家、多言語の国で、人種を意識することはありません。友人の父は英国、母は米国出身で、内装は米国風、家庭内では米語で話をしているというようなことがごく普通です。間違ったフランス語を使っていると、知らない人にも注意するほど、母国語を大切にする国民です。フランス語以外は聞く機会が少ないのですが、世情不安のためか最近は、公共交通機関などで日・中・韓国語で注意がされるようになりました。

列車・バスは時間通り来ないので、出かけるときは、それを見込んで出発しなければなりません。タクシーの料金もいい加減なところがあります。エッフェル塔近くにある壁には、各国語で「愛している」と書かれています。もちろん日本語でも、「大好き」と書かれています。テロが発生したため、平和を希求する気持ちの高ぶりからなのでしょうか。
色々な民族が暮らしているので、食べ物や習慣などはかなり多様ですし、考え方も自由で合理的です。パリに建設中のホールは、全館完成までにコンサートホールが部分的に完成していれば、全館完成を待たずに演奏会を開くなどが普通に行われます。このような考えから、個人の宗教色を強く出すような身なりも禁止されています。イスラム教の女子大生が、大学側からブルカを着用しないように指導されましたが、これには猛反発があり、今ももめ事になっています。

 面積は日本の1.5倍、人口は半分、国境付近を除いてなだらかな平地なので、広い農地があり、食糧自給率は130%近くもあります。葡萄酒やチーズなどの生産が盛んで、食事が安くできます。オルセー美術館にあるレストランは、ゆったりしたブルボン調の高級レストランですが、そこでのフルコースでも3千円程度しかしません。これに反し、最近人気が出てきた日本人が作る「たこ焼き」が、10個で1,100円もするとのこと。タコが貴重なのと、日本人自身が作っていることが評判を呼んでいるようです。タイ人が経営する日本食の店で、すし屋の看板が出ているのに、おにぎりと焼き飯しかないといった店もあります。

コッペパンのコッペもパンもフランス語で、Coupeは【切る】という意味なのに、日本では切っていなくてもコッペパンと呼んでいるのは変に感じます。
食事は朝・昼・晩ともパンが基本で、それにいろいろ調理、加工した野菜、肉、卵などを食べます。フランス人は甘いもの好きで、ジャム、マドレーヌ、シュークリーム、エクレア、ミルフィーユ、ガトーショコラ・・・・等々甘いものが沢山あります。
ワインは食事に欠かせません。

 セリス市は閑静な住宅街で、住宅の色は、壁は白、屋根はレンガ色にするよう決められています。このことで街に統一感を生み出しています。ディズニーランドが20分のところにあり、多くの市民がそこで働いています。商業施設のショッピングモールもゆったりした2階建てで、全長が1Kmもあります。疲れた子供が乗れるよう、軽便鉄道のような乗り物の施設が備えられていて、ショッピングがゆっくり楽しめます。

 学制は、小学校は1から4年生まで、中学校は1から5年生です。有名大学でも入学は簡単ですが、卒業するのはかなりむつかしいそうです。ほとんどが公立学校ですが、飛び級も落第もあります。高校生になると、同じクラスの生徒でもかなり年齢差があります。小中学校の校舎のデザインは、学校ごとに異なり、学校名も校舎を設計した人が、好き好きに芸術家や女優など有名人の名前をつけることができます。ダビンチ中学とか、サンテグジュベリ中学という校名などもあります。学校には、部活も、PTAも、制服も、もちろん塾などありません。父兄から先生への要望などは特になく、先生の自由な考えで授業が行われます。

垣花さんは、制服がなかったので日本の学生服に憧れ、着てみたいと思っていたようです。
日本の学校で驚いたことがあります。それは生徒数が多いことです。フランスでは、1学年には1クラスだけしかありませんし、1クラスの生徒数は25人程度です。各科目のノートの裏表紙には、生徒ごとの時間割が書かれていて、それを見せて確認を受けなければ教室に入れないようになっています。中等教育の終了を証明する統一国家試験“バカロレア”があり、合格者には大学入試の資格ができます。成績によって行ける大学のグレードが決まっています。 

主な質疑
 Q1:バカンスが長いと聞いていますが、どこへ行きましたか?
 A1:国内ではニース、マルセイユ、国外では英国やイタリアへ行きました。
 Q2:消費税はどれくらいですか?
 A2:一律ではないので正確には答えられません。同じものを買っても店内で食べれば
高く、持ち帰りなら低く設定されています。
 Q3:若者の失業率はどれぐらいですか。
 A3:18歳〜29歳で24%(2016統計)、日本は5〜6%です。
 (筆者注)統計の取り方がちがうので、単純比較は難しい。
 

Q4:日本とフランスの関係はどうでしょうか?
 A4:日仏関係は非常に友好的です。パリで4日間もEXPO JAPANが開かれ、漫画、アニメ、日本の音楽とか日本文化への興味が高く、毎年人気が高まっています。
 日本人は宗教を余り深く考えないように思う。年末に除夜の鐘を聴き仏様を拝み、
キリスト教の祭日のハロウィンも祝うのは理解しづらく感じます。

次回の予告
 日時:9月13日(火)10時〜12時
 場所:コラボ 多目的ホール
 内容: 内モンゴルの生活や文化とモンゴル音楽
 語り手:芦田悦男さん、在日モンゴル人 サイラジフさん
 文責 濱崎定也