哲学カフェ「人間にとって価値とは何か」 まとめ

哲学カフェ・人間にとって価値とはなにか・161029

人間にとって価値とは何か。

−人間は様々な価値観に従って行動しているが、その価値観はどのように生まれ、広まって行くのだろうか、又、その生まれ方、広がり方は時代によってどのように変化するのだろうか、などについて考えたいと思います。—

—主催者は下記のような論点や展開を予想しましたが、実際の哲学カフェではどのような意見がでたでしょうか。予想していた論点の中、話が弾んだものには○を、そうでなかったものには△を付してみました。—

(辞書によると)
どれくらい大切か、またどれくらい役に立つかという程度。またその大切さ。ねうち。

(価値を論ずることの難しさ)
○相対性ー誰にとっての価値かー家族の写真 自分史
○多義性 自由主義 保守主義
△誤解、勘違い お盆・先祖崇拝・儒教 日本仏教 

△価値観生まれ方、広がり方は時代によってどのように変化するのだろうか、
1 神のみが価値を生む 神話、伝統の時代—「再帰性」*が固定化に寄与した。
 *再帰性の説明—虹は何色か。
 7色であると教えられ7色であると見るから7色に見えるのだ−再帰性
 物理的には無限のGRADATION
2 人間も価値を生み出した。(人間復興)
啓蒙主義の時代、理性・科学・進歩の時代 
 例・経済は無限に成長し誰もが豊かになるという大きな物語
−再帰性が固定化に寄与した。
3 現代 大きな物語の終焉 
4 停滞の時代は新しい価値を産む時代ではないか。
①採集、狩猟時代 約5万年前の停滞期
 葬制、呪術、洞穴芸術が生まれた。 
②農業の時代 紀元前5世紀ごろの停滞期
 仏教、儒教、老荘思想、ギリシャ哲学、ユダヤ教が生まれた。
③現代の停滞期?は何を生むか。
・有限性の認識—地球は案外狭かった。
・あらゆる生物との共生—衆生済度

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◆価値とは何か?
・価値とは判断基準ではないでしょうか。
よい、わるいというモノサシに近いものでしょうか。
判断基準としての価値とは価値観に近いものだと思います。
・価値がある、ない、といういい方もします。
価値あるものとは人間に必要なもの(健康、お金、生活に必要なもの)でしょう。
価値あるものとはお金で買えるものでしょう。
価値あるものには流行り廃りがあるように変化すると思います。
・「その場の価値」と言うものもあると思います。
・価値を知っていると言ういい方もします(思い込みかもしれませんが)。

◆誰にとっての価値か?
・個人にとっての価値と言うのは、個人差があって話し合う価値がないように思います。人類や国家にとっての価値が大事でしょう。
・相対的な価値と言うものはあまりにたくさん出て来そうで話しにくいとは思いますが、そうかと言って国家にとっての価値を話そうとしても取りつく島がないので身近なことを考えていったら共通している価値、という事が話せるのではないでしょうか。
・国民栄誉賞を伊調薫さんが貰ったが、このような賞というものは共通の価値があるという事ではないでしょうか。
・それらの賞は選考委員の価値観が現れているだけで、共通という事ではないように思います。
・ノーベル賞などは専門性の高い分野なので選考委員の判断をもって多くの人の代表的な意見としていると考えても差し支えないように思います。

◆なぜ価値が生まれる?
・一つの何かに価値を置くことの意味は何でしょうか
・人間には命にも限りがあるし能力にも限りがあります。その中ではいつも選択を迫られて優劣を付けながら判断しています。このことが価値というものが生まれる原因のように思います。
・人間にだけできることは創造する事でしょう。工夫し芸術を生み「大きな物語」を生むことで何かを創造しそれが、価値あることとなっているように思います。
・人間が作ったものでもすぐにはよさそうでも長い時間たってみないとほんまにええもんかどうかはわからないと思います。長い時間で判断されると思います。
・知らず知らずのうちに、意識しないで価値を見出していることは多いと思います。
価値を知っているという事は、教養や理解があるという事だと思います。

◆人の価値
・一人ひとりが価値を決めるのでしょうか。
・物やサービスを買う場合、お金を払えば買えるように価値あるものには対価が必要で、それは誰かに認めてもらうと言う承認要求に関係しているのではないでしょうか。
・人に対する価値と物に対する価値は違うのだろうか。人に対する価値には「生きていることだけで価値がある」と思います。
・人の価値を図ることもあると思います。評価などは良く行われていますがこれも価値を図っていると思います。
・生きていることそのものと言うより、人の性格、人間性に価値があると思います。
・生きていることに価値がある、と言うのならば「人」だけではなく動物にも植物にも価値があるという事だと思います。
・生きていることには価値があると思いますが、それは存在することの最低限の価値であってそれにプラスαの価値があるように思います。
・個性は価値でしょうか。
・認められるものと認められない個性があると思います。
・個性は価値ではないでしょう。個性の中の役立つことがあったらそれが価値を持っていると思います。

◆無理をして価値を作る
・パタゴニアの原生林を走りぬく競争と言うのがあるそうですが、そこで優勝すると言う価値は、人間にとっての最低限の必要と言うものを越えた価値があると思います。
・新しいものや考え方が次々出てきて、それが価値を持ってくるのが現代社会だと思いますが、無理やり価値を作っているように思います。
・価値や価値観にはメディアの影響が大変大きいと思います。
・争いごとは人間の歴史でずっとついて回っていますが、第二次世界大戦の経験を踏まえると「争いのない公平な社会」と言うものが最も価値があると思います。
・「価値」を考えられる社会が価値があると思います。

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今回も定員いっぱいの参加者にお集まりいただきました。哲学カフェ初参加の方が6名ほどいらっしゃり千里コラボらしい哲学カフェとなったと思いました。なかなか難しいテーマでしだが、初参加の方を含め皆さんの活発なご発言が途切れることなく、幅広いご意見が出されました。
現に存在するものに価値を見出そうとする考えや役に立つモノやコトに価値を認めるという考え、人間というあり方に価値を見出そうとする考えなどが出される中で、認めるという行為がいずれにもかかわっていることが薄っすらと浮かんできます。
何に価値を見出すか、その人のモノサシ、価値観が形成されるのに大きく影響するのが経験であることも浮かびで出できました。価値観が共有されるためには経験を伝えることが必要なのでしょうか。価値観を伝えることの難しさや複雑さに思いを至らせることが出来ました。

以上

(赤井・加福)