第34回 千里コラボ大学校を3月9日(土)に開催致しました。

講演は「歌の力・声力 —歌うことを通じて、声を再構築、
そして身も心も健康に—」と題して、角地正範さんにお話
して頂きました。

・恒例の音楽演奏は、川上時子さんに角地正範さんの
歌曲の伴奏をお願いしたことにより、見送りました。

・講演は映画「慕情」のテーマ曲で始まりました。テノー
ルの歌声が心地よく会場一杯に拡がりました。角地さん
は豊中第14中学校を卒業と豊中との関わりを、現在は
短大で教鞭を執っていることを話され、関西でクラシック
を学ぶことの苦労もご披露頂きました

・小さな筋肉である声帯が擦れ合う振動によって声が
出ること、人間の声帯は言語用でなく音色用であること
から講演は始まりました。500万年程前の猿人は二足
歩行が出来るようになり、両手の使用で口は物をくわえ
る機能から解放された。人類の得たコミュニケーションの
手段である「言葉」は、他の動物と異なる点である。

ネアンデルタール人は言葉と歌を両方使っていたが、
現代人は言葉を話すことが主流になり、歌うことが特別
なこととなった。併せて大きな声を出すことが憚られる
時代背景もある等、声の歴史についても話されました。
歌声には話す時とは違った情感や懐かしさを感じるもの
であること、人間の発声器官の発達は、歌うことがスタ
ートであり、話すことは歌を文節化することにより発生し
たものであるとも話されました。

・犬・猫・烏の鳴き声や濁音を巧みに操り、その鍛えた
声帯と音を響かせる見事に表現力で会場は大いに盛り
上がりました。

・声を出さずに携帯によるコミュニケーション、通信機器
の発達による放送設備の普及、日本語の本来の音声を
生かす、母音と子音の使い方等にも触れて頂きました。
小学生の五十音の読み方を聞いていると、日本人は声
を潰すことを好む民族か、と疑いたくなるとのお話もあり
ました。城主が100人程の家臣を城内に集めて押し殺し
たように話す日本語、晴れ渡ったコロシアムで大勢の
人々に大声で訴えるローマ人、日本人とイタリア人の話
し方の違いを見事に言い当てていると、納得しました。

・「ん」は咽喉を締め付けてうならせる音声、「N」は鼻腔
を使った響きある音声、のお話もありました。最少の言
葉を小声で話す現代の人々、歌の力を借りて声の力を
取り戻す。いい歌・いい声は人を元気にする、と強調
されました。

・声帯や発声の方法のイメージを、器具を使って解り易く
説明して頂たり、童謡「赤とんぼ」の歌詞に、発声の際の
イメージを表現する工夫を施すなど、私達の理解が困難な
イメージの世界をより分かり易く説明して頂きました。
時々の笑いを誘う講演内容は、豊かで楽しいものであり、
このような先生に指導を受ける学生の幸せ振りを感じなが
ら聞き入っていました。

・講演中に「初恋」「O sole mio」をご披露頂き、最後は
全員で「千の風になって」を歌って講演は終了しました。

・受講者76人、うちアンケート記述者49人、多数の「感動
した、面白かった」の声を頂きました。机も無い状態で心
を籠めて書いて頂いたアンケートは、今回の講演の成果
を物語るものでした。ご多用の中諸準備の上で、ご講演
頂いた角地正範さん、ありがとうございました。

・講演会の締め括りは、千里図書館司書の浅尾知弘さん
より、関連図書の説明を頂きました。抒情歌・声帯・日本
語など多くの図書をご準備頂き、時間の制約のある中で
ご案内頂きました。有難うございました。

 (原田)